書物の図像学
炎上する図書館、亀裂のはしる書き物机、空っぽのインク壺

[著者]原克 

ベンヤミンの「一方通行路」を通って、書かれたものの図像を収集する旅に出かけよう。行く先はカフカである。

定価=本体 2,718円+税
1993年6月25日/
四六判並製/284頁/ISBN978-4-88303-015-6

 

[目次]
序文 9

第1部 炎上する図書館、あるいはふたりの凡庸な筆耕生――知の図像としての書物と図書館のイメージの変遷 15
 第1章 古文書が発掘され、印刷に回されることからすべてが始まる……エーコ 16
 第2章 書物の書物が聖俗革命に巻き込まれるの段……クルツィウス、ダンテ 20
 第3章 宇宙は膨大な書庫になり、読者の巡歴が企画される……百科全書派 33
 第4章 「整理のゆきとどいた完ぺきな図書館」……ノヴァーリス 40
 第5章 旅先で正体不明の本を見つけた時のためのマニュアルあります……ラッハマン 44
 第6章 ふたりの凡庸な筆耕生のアナーキズムが、図書館を揺るがす……フローベール 60
 第7章 悪夢の焚書、凶器の文献学者か正気のダダイストか……カネッティ 67
 第8章 ゆがむ図書館、あるいは盗まれる蔵書……ボルヘス、アルノ・シュミット 84

第2部 習字教本と処刑装置――近代的著者像の政治解剖学 101
 第1章 適切な光線、それは左側からくる光線がもっともよい……『小学生むけ発生学的筆記法詳述』 102
 第2章 大きな袖口、あるいはペンをもつ手……ホフマン 112
 第3章 とりとめのない思い、あるいは下手くそな字……『カロ風幻想作品集』 119
 第4章 判読できない判決文、あるいはあらかじめ下された死刑判決……カフカ 124 

第3部 書き物机と判決文、あるいは蹉跌する文具たち――『審判』に見る、近代的著者の空間にはしる亀裂 137
 第1章 侵犯される書き物机、揺れる近代的著者像の中心的トポス……ゲーテ『ドイツ避難民閑談集』 138
 第2章 とまってしまう鉛筆、あるいは侵犯される執務室……カフカ 147
 第3章 からっぽのインク壺……ニーチェ『オイフォリオン断片』 159
 第4章 メディアの筆写生たち、あるいはとつぜん鳴る電話……オットー・ブルクハーゲン『実践ハンドブック』 174 

第4部 権力装置としての室内装飾――『変身』に見る、権力闘争と文字の体系 201
 第1章 室内装飾、あるいは閉じ込めの空間……カフカ 204
 第2章 見えない窓、あるいはあらかじめうばわれた視線 209
 第3章 鳴らない目覚時計 215
 第4章 家具、あるいは倒錯した身振り 217
 第5章 花模様の壁紙 226
 第6章 居間、あるいは明かりのついたテーブル 228
 第7章 薄く開けた扉、あるいはキメ細かい世話 241
 第8章 消える扉、あるいは完成する監視体制 247
 第9章 欠勤届、あるいはファイルされる記憶 251
 第10章 郊外への散歩、あるいは外部のシミュレーション……ベンヤミン 261

結びにかえて 266
あとがき 269
注 I
参考文献抄 VI
図版典拠 X


HOME