岡熊臣 転換期を生きた郷村知識人
一幕末国学者の兵制論と「淫祀」観

[著者]張憲生

幕末津和野の山村小社の家に生まれ、国学を学び、晩年には津和野藩藩学・養老館の国学教師として登庸された岡熊臣の思想形成のプロセスとその言説を、彼の生きた激動の時代背景から読み解いた斬新で緻密な論攷。周縁に生きたがゆえに、郷村の社会的現実に根ざした思想を展開した彼の姿を詳細に描き出すことで、転換期「国学」の多様なあり方が浮き彫りにされる。

定価=本体 4,800円+税
2002年6月27日/A5判上製/344頁/ISBN978-4-88303-097-2



[目次]
  序論 9
    1 問題意識と課題 9
    2 先行研究について 12
    3 問題点の整理 18
    4 本書の構成と研究の特色 20

序章 生い立ちと思想形成 23
 第1節 家と生い立ち 25
    1 岡家の歴史 25
    2 「家格」と主体意識の形成 26
  第2節 精神的巡礼としての旅 29
    1  江戸遊学と国学への転回 30
    2 「焚詩」の象徴的な意味 36
    3 青年から中年にかけての旅 41
    4 平田門への入門事件 50
  第3節 学問と教養の基礎 55
    1 岡家の蔵書目録 55
    2 引用書目録 59
  第4節 生涯の時期区分 64
    むすび 65

第1章 『兵制新書』の研究(一) 成立背景と作品構造を中心に 67
 第1節 成立背景と著述動機 「ツ録」との関連について 70
    1 兵学思想受容の方法 70
    2 「家格」の復旧を求めて 74
  第2節 『兵制新書』の構造 「幽」・「顕」、「正」・「奇」について  77
    1 「幽」と「顕」 79
    2 「正」と「奇」 81
    むすび 88

第2章 『兵制新書』の研究(二) 政治思想を中心に 89
 第1節 現状認識と郷村改革 「神随なる大道」と現実の乖離 92
    1 同時代状況の認識 92
    2 庄屋制度の改革 96
    3 郷村行政の改革 102
 第2節 「教化」論 倫理秩序の再建 106
    1 「忠」・「孝」 106
    2 「教化」 110
    3 「君上たる人」の心得 116
    4 「修身」・「斉家」 120
    5 「幽府の刑罰」 123
  第3節 「制度」論 「封建」と「郡県」 126
    1 キー・ワードとしての「封建」 126
    2 「意見十二箇条」の再解釈 128
    3 「国郡境界」論 136
    むすび 143

第3章 『兵制新書』の研究(三) 兵制論を中心に 147
 第1節 戚継光の兵学とその影響 近世東アジアにおける「戚法」 149
    1 「戚法」の誕生 149
    2 「壬辰丁酉倭乱」における「戚法」 151
    3 「戚法」と『ツ録』 152
  第2節 古代兵制と中国兵学との間 明代兵書受容の態度 155
    1 古代兵制の特徴 155
    2 中国兵学の受容におけるジレンマ 159
    3 「古今戦法」の変化 163
  第3節 新しい兵制の構想 「戚法」から脱身分制志向へ 168
    1 操練の法 168
    2 武器の選用 172
    3 選兵と身分制 176
    むすび 180

第4章 岡熊臣の「淫祀」観 「淫祀」論批判を中心に 185
 第1節 問題の所在 「淫祀」批判の新しい読み方を目指して 189
    1 「淫祀解除」とは何か 189
    2 「淫祀」論批判はいかに読むべきか 191
  第2節 「淫祀」への態度  岡熊臣と岩政信比古(1) 194
    1 山県太華の「淫祀考」をめぐって 194
    2 近藤芳樹の「淫祀論」をめぐって 198
    3 岩政信比古の態度 207
  第3節  吉田神道との関係 下級神職をめぐる社会関係 213
    1 吉田家の神職支配 214
    2 岡熊臣の吉田神道観 219
  第4節 下級神職への態度 岡熊臣と岩政信比古(2) 225
    1 岡熊臣の場合 225
    2 岩政信比古の場合 226
    むすび 231

第5章 「廃学」と晩年の公的活動 津和野藩学への参画を中心に 235
 第1節 「廃学」をめぐって 「物学びする」者の情念 236
    1 後期国学の政治志向 236
    2 「廃学」の意味 238
    3 「廃学」の背景 244
  第2節 藩学への参画 その背景と活動の内容 246
    1 養老館の教学改革 246
    2 養老館での教学活動 248
    3 終末 252
    むすび 254

終章 255
    1 結論 256
    2 今後の課題 264

注釈 267
あとがき 289
付録 291
岡熊臣年譜 292
著作活動年表 310
『兵制新書』目次対照表 313
参考文献 334
索引 343


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