西洋美術研究 |
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2003年5月25日発行 2003年5月/A4判変型並製/228頁/ISBN978-4-88303-117-7 |
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三浦篤 美術史とパレルゴン
三浦篤/聞き手 森元庸介/トランスクリプション・翻訳 ジャン=クロード・レベンシュテインに聞く 〈pp.8-21〉
メイヤー・シャピロ 絵のなかの文字:視覚言語の記号学
〈pp. 22-47〉 著者は、中世の写本挿絵を中心に、ゴヤ、マネ、ピカソなどの近現代の作品へも考察を拡張しつつ、絵画作品の中に記入された文字という主題に関し、主に次のような点について概観する。1.画中や作品外部の観者の視点の相違による文字の画中への統合様態の多様性。2.空間の表象と文字の画中への統合様態との関連性。3.発話や発話行為の記号としての文字や巻物の表現。 遠山公一 台座考 台座には、彫像を高く掲げる物理的機能と、彫刻を記念碑や芸術作品として制度化する象徴的機能がある。近代は主に象徴的機能の脱神話化を行ない、台座を無用として放逐した。古代に遡る台座の長い歴史から、ここでは彫刻が建築から独立する過程で台座が復活するルネサンスを検証する。特に15世紀における柱上彫刻、16世紀における巨像のための比較的低い台座の採用について見ることにより、彫刻と台座の関係を論じる。 ルイ・マラン 表象の枠組みと枠のいくつかの形象〈pp.
64-90〉 表象の時代、17世紀フランスでは、表象には、不在の何かの代わりに現存する何かを呈示する透明な次元に加え、自己を反射し、二重化して呈示する不透明な次元が含まれていることが意識されていた。マランは表象を枠づけ支えている地、面、枠に注目し、表象のひとつの範例である地図等に織り込まれた再帰的な次元、もうひとつの範例である肖像をはじめ、さまざまな絵画的な表象における再帰的な次元、メタ絵画の探求を見出していく。 島本浣 絵画におけるタイトル誕生とカタログ、そして画集
〈pp. 81-100〉 タイトルを、単なる主題説明ではなく作品に刻まれた固有の名前と考えれば、絵のタイトルは、その用語の採用とともに、19世紀以降に誕生したものである。この誕生には、作品記述における主題説明文の形式と、その文が置かれる記述上の場所の展開が必要であった。18世紀から19世紀中葉までのサロン展リヴレと美術館カタログ、そして画集におけるエクリチュールの形式に焦点をあて、タイトル誕生の前史を考察する。 三浦篤 絵画の脱構築 〈pp.
101-125〉 1863年の「落選者のサロン」に出品されたマネの《草上の昼食》は、当時批判や困惑を引き起こした問題作であった。この作品の歴史的な意義を正確に把握するためには「パレルゴン」の概念が有効性を持つ。付随的な形態の引用とモンタージュ、過剰な細部と物語性の凍結、絵画ジャンルや形式への参照など、マネは伝統的なタブローの条件や枠組みを問い直し、メタ・イメージとしての《草上の昼食》において絵画の脱構築を行ったのである。 天野知香 マチスと「絵画」の他者 〈pp. 126-149〉 マチスの絵画には、既存の美術史における造形上の特質を指し示す言葉では語りえないさまざまなデバイスが認められる。描く者/描かれる者の身体と深く絡ませながらこうしたデバイスのいくつかの例を具体的に検討することで、西欧の「美術史」の伝統の中で制度化された「作品」や「画家」のあり方に裂け目をもたらし、美術史の言葉や枠組み自体を揺るがす批判的なフレーミングを可能とするパレルゴンとしてその特質を考える。
森雅彦 署名論に関するノート 〈pp.150-160〉
パレルゴンに関する言説
小池寿子 Daniel Arasse, Le Detail: Pour
une Histoire rapprochee de la Peinture (pp.
166-171)
Jean-Claude Lebensztejn, Annexes
- de l'oeuvre d'art (pp.
172-176) 栗田秀法 Henry Keazor, Poussins Parerga:
森元庸介 Georges Didi-Huberman, Devant
le temps: Histoire de l'art et anachronisme des images (pp.
183-189) 宮下誠 Victor I. Stoichita, A Short History
of the Shadow (pp. 190-198)
木俣元一、栗田秀法、三浦篤編 〈pp. 199-209〉
尾関幸 「諸芸術の競合:デューラーからドーミエの彫刻と絵画」展 田中正之 「シュルレアリスム革命」展 |