ネオ・リベラリズムの時代の多文化主義
オーストラリアン・マルチカルチュラリズムの変容

[著者]塩原良和

対抗原理としての 多文化主義〈再構築〉に向けて────
ネオ・リベラリズムという時代の流れのなかで、多文化主義という理念をいかに〈再構築〉するのか。反-本質主義的多文化主義は、なぜ、エスニック・マイノリティのエンパワーメントを阻害する「意図せざる帰結」をもたらしたのか。70年代以降、白豪主義からマルチカルチュラリズムに政策転換してきた オーストラリアを事例に明らかにする。

定価=本体 2,800円+税
2005年11月15日/四六判上製/286頁/ ISBN978-4-88303-172-6


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[目次]
  
序章 ネオ・リベラリズムと多文化主義――問題設定と方法 9
     1 はじめに 9
     2 オーストラリアのネオ・リベラリズム 10
     3 オーストラリアン・マルチカルチュラリズムの変質 14
     4 多文化主義の「個人化」と「ナショナリズム化」 18
     5 反‐本質主義の「意図せざる帰結」 22
     6 オーストラリア多文化主義の先行研究 32
     7 分析視角と方法 36

  第1章 「エスニック・グループ」の構築と変容―― 一九七〇・八〇年代の公定多文化主義言説 41
      1 序 41
     2 「問題を抱えた人々」としての非英語系移民 44
     3 解決策としての「エスニック・グループ」 47
     4 「エスニック」と「ナショナル」の二項対立51
     5 「国民の分裂」を招くものとしての多文化主義と「制限/寛容」の論理 53
     6 「すべてのオーストラリア人のための多文化主義」 58
     7 多文化主義の「経済的メリット」 64
     8 「エスニック」の隠蔽 72
     9 結語 77

  第2章 多文化主義研究における反‐本質主義――オーストラリアにおける展開 81
     1 序 81
     2 コーポレイト・コスモポリタニズム 84
     3 批判的多文化主義 88
     4 ネオリベラル多文化主義 93
     5 結語 100

  第3章 「包摂」的多文化主義の形成―― 一九九〇年代における公定多文化主義言説 105
     1 序 105
     2 一九九〇年代オーストラリアにおける多文化主義をめぐる社会的文脈 108
     3 「コミュニティ関係」から「リビング・イン・ハーモニー」へ 112
     4 NMACの再編 123
     5 「生産的多様性」 128
     6 「オーストラリアン・マルチカルチュラリズム」と「包摂」 136
     7 エスニシティを脱構築するマルチカルチュラリストたち 139
     8 結語――それは「成功」だったのか? 145

  第4章 「包摂」と多文化主義への反動――ジョン・ハワードとネオ・リベラリストのポリティクス 147
     1 「包摂」の祭典 148
     2 多文化的リアリティ 153
     3 ハワード政権の二面性 162
  第5章 反‐本質主義的多文化主義の政治的帰結――「縮図」としての「EAC改名論争」  171
     1 序――「包摂」とその意図せざる帰結 171
     2 NSW州における多文化主義政策とEAC 173
     3 「EAC改名論争」の経緯175
     4 「コミュニティ」派の主張――「逆ポリティカル・コレクトネス」 178
     5 「マルチカルチュラル」派の主張――移民向け福祉サービスの強調 181
     6 法案修正をめぐる攻防――ネオリベラル多文化主義と「ハンソン主義」の共謀 185
     7 多文化主義と社会福祉の切り離しと反‐本質主義の論理 189
     8 コーポレイト・コスモポリタニズムの自己矛盾 196
     9 批判的多文化主義の死角 199
     10 結語 203

  終章 「対抗原理」としての多文化主義にむけて 205
     1 ネオ・リベラリズムの「補完原理」としての多文化主義 205
     2 試論――ネオ・リベラリズムへの「対抗原理」としての多文化主義 212

     註 235
     あとがき 250
     資料・参考文献 V
     索引 I


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