ペーテル・パウル・ルーベンス
絵画と政治の間で

[著者]中村俊春

戦争の時代を生きた画家が みずからの絵画で叶えようとしたこと────
大工房を構えた宮廷画家であり、外交の場でも活躍したルーベンスは、破格の栄達を極めた17世紀絵画の巨匠である。一方、その世俗的成功は、彼を精神性を欠く通俗的画家と見なす要因にもなった。だが彼は本当に芸術の深みに到達しえなかったのか? その真の姿に画業と政治活動両面から迫る。

定価=本体 4,500円+税
2006年8月25日/A5判上製/452頁+カラー口絵4頁/ISBN978-4-88303-179-5


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[目次]

序   7

第1章 マドリードの《三王礼拝》――描き加えられた自画像  17

1 マドリードにおける自作品との再会と描き直し  18
2 変更点の確認  27
3 宗教的象徴の強化  41
4 「諸国の間」のための作品からスペイン国王の作品へ  50
5 描き加えられたルーベンスの自画像  65
6 一六二八年のマドリード訪問以前のルーベンスの外交活動  76
7 外交の手段としての絵画の制作  88
8 一六〇三年のスペイン行と《レルマ公爵騎馬肖像画》  104
9 マドリードにおける《フェリペ四世騎馬肖像画》の制作  118
10 ルーベンスのイメージ  128

第2章 ルーベンスとティツィアーノ――模倣から競作へ  147

1 画家の修業過程における模写と模倣  148
2 一六二八年から二九年のマドリード滞在中のティツィアーノ作品の模写  158
3 《アダムとエヴァ》  171
4 ルーベンスによる《ヴィーナスへの奉献》と《アンドロス島の人々》の制作経緯  195
5 《ヴィーナスへの奉献》  206
6 《アンドロス島の人々》  221
7 《ヴィーナスの祝祭》  243
8 ティツィアーノ作品との競作における男女の愛、および過ちに対する寛容  267

第3章 「マルスとヴィーナス」の説話・寓意とルーベンス ―《戦争の惨禍》をめぐって  281

1 問題の所在  282
2 説話テキストとそのイメージ化の方法  290
3 説話テキストから著しく逸脱した絵画表現の読解  297
4 説話テキストからの逸脱と画家の自由創作  305
5 寓意とその意味の伝達  315
6 ルーベンスの「マルスとヴィーナス」  328
7 晩年の政治活動と諦念  348

あとがき  361

註   1
参考文献一覧  55
人名索引  75
ルーベンス作品の索引  81


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