作品とコンテクスト
ブリューゲル《イカロス墜落の風景》
人文主義的ペシミズムの絵解き

[著者]ベアット・ヴィース
[訳者]神原正明

見なさい。
鉄の時代が戻ってくる。
ペルディクスのようにずる賢く、
キリスト教的宇宙の悲しい没落を
冷然と眺めることだ。

オウィディウス『変身物語』第8書「イカロス墜落」。ブリューゲルは、この自明の物語を原典批判的に切り詰め、古い手本にしがみつく不正確な見方のしきたりを覆す人文主義の要求を実現した。時代は、宗教戦争、カトリック国スペインによるネーデルラント支配……愚かな流血で彩られた己の時代に「鉄の時代」の再来を認めた画家は、人文主義者の悲哀をこめて暗号化せざるをえなかった描写に、いかなる予言を込めたのか。

定価=本体 2,200円+税
2007年3月25日四六判並製/132頁+カラー折込図版/ISBN978-4-88303-194-8


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[目次]
第1章 はじめに─受容史を追って 6
第2章 図像学的概観 12
第3章 世界の喪失か? 広大な宇宙での性急な意味の探求 17
第4章 風景の歴史についての小さな回り道 23
第5章 神話の地図 34
第6章 コピー作者にとっての落とし穴 44
第7章 原典に戻る! 人文主義の逐語的解釈 47
第8章 画面左端の短剣 52
第9章 世界劇場 64
第10章 スキュラとカリュプディスの間―─宗教改革における人文主義者の立場 71
第11章 「自己それ自体へ(自省録)」 90

訳者解説 99
図版出典リスト 127

(表題作品のカラー折込図版を巻末に収録)


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