リアリティと他者性の人類学
現代フィリピン地方都市における呪術のフィールドから

[著者]東賢太朗

呪術のリアリティの境界は、どこにあるのか。「そんなはずはない、だがしかし……」というつぶやき。そこには呪術をめぐる「実感の共同性」が立ち現れる。合理/非合理、内在/超越という二重のアポリアを超え出る、呪術への実体論的アプローチによって、呪術と近代、〈我々〉と〈彼ら〉をめぐる、あらたな可能性をさぐる。

[書評]
『文化人類学』2013, 77-3、評者:石井美保氏
『年報人類学研究』第3号、2013年、南山大学人類学研究所、評者:杉井信氏→書評を読む
『東南アジア―歴史と文化』42、2013年5月、東南アジア学会、評者:関恒樹氏→書評を読む
『宗教研究』377、2013年9月、日本宗教学会、評者:岩谷彩子氏

[紹介]
《中日新聞》「ひと・仕事」、2011年9月20日、記者:谷村卓哉氏→記事を読む

定価=本体 5,000円+税
2011年6月30日/A5判上製/376頁/ISBN978-4-88303-281-5


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[目次]

写真 011

はじめに 呪術をめぐる3つのエピソード 044
   エピソード1 「クレアのメイド事件」 044
   エピソード2 「Nestor調査の失敗」 050
   エピソード3 「私へのサント・ニーニョの啓示」 054

第1章 理論的問題?呪術のリアリティと他者性 062
   1-1. 呪術へのアプローチ 062
      1-1-1. 呪術と合理性 063
      1-1-2. 信仰と実践 064
      1-1-3. 呪術の実体論 066
   1-2. リアリティ 069
   1-3. 他者性 071
   1-4. フィリピン低地キリスト教社会論 075
   1-5. 本書の構成と概要 078

第2章 フィールドとフィールドワーク 082
   2-1. フィールド 082
   2-2. フィールドワーク 086

第3章 アスワンを探して 090
   3-1. 発端と経緯 090
   3-2. アスワンの民族誌以前 092
      3-2-1. 歴史資料の中のアスワン 092
      3-2-2. アスワンに関する先行研究 093
      3-2-3. 脱文脈化とカトリックによるまなざし 100
   3-3. 〈一般論〉と〈経験談〉 102
      3-3-1. アスワンとRamosによる研究 102
      3-3-2. アスワンの語りにみられる〈一般論〉と〈経験談〉 104
      3-3-3. 〈一般論〉から〈経験談〉へ 111

第4章 近代メディアにおけるアスワン 115
   4-1. アスワンはいない? 115
   4-2. メディアによるアスワン表象 118
   4-3. 近代的な妖術への恐怖感 126

第5章 マリア?L?村アスワン民族誌 @ 128
   5-1. アスワンの微視的記述 128
   5-2. 生活の中の妖術 129
   5-3. L?村のアスワン、マリア 130
      5-3-1. マリアがアスワンだと噂されるようになったわけ 130
      5-3-2. アスワンとしての生活@――エビ・カニ獲り 134
      5-3-3. アスワンとしての生活A――エビ・カニ売り 137
   5-4. アスワンとしての生活 141

第6章 ハンス?L?村アスワン民族誌 A 145
   6-1. 妖術「の中で」 145
   6-2. ハンス老人が「アスワンである」ということ 148
      6-2-1. ハンス老人との出会い 148
      6-2-2. ハンス老人がアスワンだという噂 149
      6-2-3. ハンス老人の置かれた状況 152
      6-2-4. ハンス老人への排除 155
   6-3. ハンス老人をとりまく人々 156
      6-3-1. ハンス老人をとりまく人々 158
      6-3-2. ハンス老人の包摂 163
   6-4. 排除と包摂の多元的現実 166

第7章 マジョリティとしての一般カトリック信徒 170
   7-1. ロハスのカトリック教会の組織 170
   7-2. 信徒の活動 171
      7-2-1. 教会礼拝 171
      7-2-2. 人生儀礼 174
      7-2-3. 年中行事 180
   7-3. 一般信徒の名目的信仰実践、または生活宗教について 188

第8章 非カトリック信徒によるカトリック批判 194
   8-1. ロハスにおける非カトリック信徒の状況 194
   8-2. 非カトリック諸派によるカトリック批判 196
   8-3. 改宗について 204
   8-4. モルモン・ミッショナリー 208
   8-5. 非カトリックによる外部者としての批判的反省 219

第9章 カリスマ刷新運動による反省的な信仰実践 222
   9-1. カリスマ刷新運動とは 222
   9-2. 宗教組織としてのDivine Mercy 222
   9-3. Divine Mercy 225
      9-3-1. 歴史 225
      9-3-2. 組織 228
      9-3-3. 活動 229
   9-4. カトリック内部からの反省的信仰実践 237

第10章 教義と敬虔?Divine Mercyの「正統性」と「異端性」 243
   10-1. Divine Mercyの正統性 243
      10-1-1. ヒーラーによる癒し 243
      10-1-2. Divine Mercyと呪医 244
   10-2. Divine Mercyの異端性 249
      10-2-1. 憑依による啓示 249
      10-2-2. 祈りの変更 253
   10-3 教義と敬虔 255

第11章 メディコとは? 262
   11-1. フィリピン低地社会における呪医 262
   11-2. ロハスのメディコ 264
   11-3. 生業としてのメディコ 275
   11-4. ロハスのメディコ数の歴史的変遷 280

第12章 メディコの諸活動 284
   12-1. 病治し 284
   12-2. 供物儀礼 301
   12-3. 占い 310
   12-4. 呪い 312

第13章 「異端」か「偽医者」か? メディコの社会的状況 315
   13-1. 「異端」か「偽医者」か 315
      13-1-1. 「異端」としてのメディコ 315
      13-1-2. 「偽医者」としてのメディコ 317
   13-2. メディコの親密性 320
      13-2-1. メディコの「敬虔」さ 320
      13-2-2. 近代医療への「正統性」 323
      13-2-3. 親密なメディコ 325

第14章 意味・解釈・過剰?ロハスの病者による横断実践 328
   14-1. 3つの医療資源 328
      14-1-1. 近代医療 328
      14-1-2. Divine Mercyの「癒し」 330
      14-1-3. メディコの病治し 332
   14-2. 3医療資源間の葛藤 333
   14-3. 病者の横断と無限の解釈 336
   14-4. 病の意味の過剰 343

第15章 総括と考察?呪術のアイロニー 348
   15-1. 総括 348
   15-2. 考察 351

おわりに 361
文献 367


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