多言語主義再考

多言語状況の比較研究

[編者]砂野幸稔

「多言語主義(multilingualism)」は、本当に普遍的な価値たり得るのか。現代世界において「言語」はどのような問題の場としてあらわれているのか、世界各地域の多言語状況から問いかえす。「言語問題」とは、「言語」の問題ではなく、「人間」の問題なのである。

定価=本体 8,500円+税
2012年3月25日A5判並製/756頁/ISBN978-4-88303- 310-2


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[目次]

     序論 多言語主義再考/砂野幸稔 011
           1 「多言語主義(multilingualism)」という価値 011
           2 「人間」「国民」「国語」 020
           3 多言語主義を再考するために 028
           4 本書の構成 030
           注 041

第1部 理念と現実の狭間で―ヨーロッパの経験と「多言語主義」を再考する 049
   第1部 @ ヨーロッパの多言語状況管理の歴史と〈少数言語〉の現実
      第1章 すべての言語は平等である。しかしある言語は、ほかの言語よりさらに平等である
      ―ヨーロッパの「多言語状況/多言語主義(Multilingualism)」と少数言語/佐野 直子 050
           はじめに―フランス的多言語観? 050
           1 ヨーロッパの「エコ言語革命」とヨーロッパ近代の「多言語主義」 053
           2 「第三次エコ言語革命」へ?―「少数言語」の誕生 062
           3 第三次エコ言語革命における「多言語状況」の進展とヨーロッパの「多言語主義」政策 068
           おわりに 074/注 076
     第2章 少数言語として切り取られることは言語多様性保全につながるか
     ―ヨーロッパ最周縁を起点として/寺尾 智史 084
           1 イベリア半島の弱小少数言語の位相―ピレネーを越えれば…… 084
           2 ミランダ語を成立させる眼―「むくつけき田舎なまり」から「ポルトガル唯一の少数言語」へ 088
           3 アラゴン語を葬る眼―「王家の言語」から〈僻地の俚言〉へ 098
           4 まとめにかえて 110
           参考文献 114
           注 115
  第1部 A ヨーロッパ外の多言語状況とヨーロッパ型多言語主義
      第3章 ヨーロッパ発「多言語主義」とアフリカの多言語状況/米田 信子 118
           1 はじめに 118
           2 アフリカの言語政策に見るヨーロッパの影響 119
           3 アフリカにおける母語教育 121
           4 アフリカにおける「多言語主義」の現実 127
           5 ヨーロッパ的視点とのギャップ 132
           6 おわりに 137
           参考文献 139
           注 139
     第4章 パラグアイ―言語政策の移植は可能か/塚原 信行 142
           はじめに 142
           1 カタルーニャ自治州における言語政策の概略 145
           2 パラグアイの言語状況―現在 147
           3 パラグアイの言語状況―歴史 149
           4 ストロエスネル時代から現在まで 152
           5 言語法案作成の経緯 154
           6 言語法における権利と義務 157
           7 移植されたものはなにか? 159
           おわりに 161
           注 162
  第1部 B 少数言語復興運動の経験から
      第5章 少数言語運動とは何か―個人的体験から/原聖 167
           はじめに 167
           1 一九八〇年代、地域的少数言語復興の開始 168
           2 一九九〇年代、多言語主義と言語権 169
           3 二〇〇〇年代、文化的多様性と文化資源 170
           4 うちなあぐちとアイヌ語の復興 172
           5 二〇〇八年の経験 175
           6 研究戦略 182
           注 188

第2部 社会主義国の「多言語主義」の経験を振り返る 193
  第2部 @ 旧ソ連の経験と現在
      第6章 ソ連の言語政策―その歩みと特徴/渋谷 謙次郎 194
           1 はじめに 194
           2 若干の諸概念をめぐって 195
           3 ウクライナ化の紆余曲折 197
           4 民族的領土体を持たない少数者 200
           5 中央集権化と言語政策 201
           6 二言語主義 203
           7 国勢調査と母語 206
           8 ペレストロイカと言語法 210
           9 まとめにかえて 210
           注 212
     第7章 ロシア・ブリヤーチアに於ける多言語状況の諸相
     ―ブリヤート標準文章語をめぐる言語政策とその変容/渡邊 日日 215
           1 ロシアの多言語状況の概略史 216
           2 ブリヤート共和国に於ける言語政策の変容とその背景 220
           3 終わりに 235/注 237
  第2部 A 中国―多言語主義の理念の変容と言語支配
      第8章 朝鮮族の二言語使用と中国の多民族政策―中国の萎縮する多言語状況/李守 243
           はじめに 243
           1 朝鮮人の移住と中国の民族政策 246
           2 朝鮮語の構築、言語条例の制定まで 250
           3 中国の双語教育(二言語教育) 255
           むすびに 260
           注 262
     第9章 新疆におけるオイラド・モンゴル人の文字改革問題
     ―オイラドの「モンゴル族」化と文字、書きことばの喪失/フフバートル 266
           はじめに 266
           1 オイラドと新疆のモンゴル人及びその「モンゴル族」化 269
           2 新疆におけるホドム文字の全面的導入とトド文字教育の停止 275
           3 文字改革の成果と問題をめぐる両論の主張 284
           4 難航する文字改革推進についての複雑な思い
             ―新疆ウイグル自治区民族語文文字工作委員会バルジャーへのインタビュー 291
           おわりに 298
           参考文献 303
           注 304

第3部 アジアの多民族・多言語国家の経験 309
  第3部 @ インド亜大陸の多文字・多言語状況
      第10章 インド近現代における文字論争―多言語・多文字・限定識字社会の歴史経験/藤井 毅 310
           0 はじめに―問題の設定 310
           1 一九世紀前半における言語と文字 315
           2 一九世紀後半の言語・文字論争 330
           3 二〇世紀前半の文字問題―文字圏構想の可能性 335
           4 独立運動における言語と文字 345
           5 二〇世紀のローマ字論―進歩性と科学性の象徴 351
           6 政府と言語運動団体による文字改良と統一文字創出の試み 356
           まとめにかえて―二一世紀における文字問題 362/文献目録 365/注 371
     第11章 ネパール領ビャンスのランを巡る言語状況の変遷と文字使用の諸相/名和 克郎 379
           1 はじめに 379
           2 「伝統的」多言語使用 380
           3 国境と書記言語(1)―二〇世紀中葉まで 383
           4 国境と書記言語(2)―二〇世紀後半以降 385
           5 文字使用 388
           6 ラン語を書く 393
           7 おわりに 399
           引用文献 402
           注 403
  第3部 A インドネシアにおけるインドネシア語普及と多言語状況
      第12章 インドネシアにおける多言語状況と「言語政策」/森山 幹弘 407
           はじめに 407
           1 インドネシアにおける多言語状況と言語政策の変遷 411
           2 地方分権化と多言語状況の問題点 415
           3 多言語政策の新たな展開と問題―憲法改正と成立しなかった言語法 420
           おわりに 424/注 426
     第13章 バリ語の政策の変遷と今後の可能性/原 真由子 430
           1 はじめに 430
           2 バリ語の伝統的文字文化 432
           3 オランダ植民地時代のバリ語の政策 436
           4 独立後のバリ語政策 438
           5 バリ語の出版物とマスメディア 454
           6 おわりに 458
           注 459
     第14章 インドネシアにおける少数民族語地域の言語使用と実態―北スラウェシ州の例/内海 敦子 465
           1 概要 465
           2 北スラウェシ州の少数民族言語 468
           3 北スラウェシ州における少数民族の人々の言語使用と言語意識 474
           4 ポスト・スハルト時代における民族語復興―北スラウェシ州の場合 485
           5 民族語の消滅がもたらす社会の変化 490
           6 まとめ 492/注 493
  第3部 B 特異な都市国家シンガポール
      第15章 都市国家シンガポール―英語支配の中の多言語主義/大原 始子 497
           1 はじめに 497
           2 シンガポールの多言語状況―構成民族と諸言語 499
           3 言語政策と言語計画 505
           4 英語支配のもとで 514
           5 まとめにかえて 521
           参考資料 524
           注 524

第4部 アフリカのオーラルな多言語空間と文字 529
  第4部 @ オーラルな多言語空間で起こっていること
     第16章 二〇一〇年憲法施行後のケニア都市部の多言語状況/品川 大輔 530
           はじめに 530
           1 ケニアの言語状況の概略 531
           2 言語政策の変遷と新憲法 536
           3 教育現場における言語状況 541
           4 都市的公共圏とKCS 546
           5 ケニア・スワヒリ語の展望 554
           注 556
     第17章 標準語を持たないリンガ・フランカ―ガーナ、アカン語/古閑 恭子 64
           1 はじめに 564
           2 多言語国家ガーナ 565
           3 エリートのシンボルとしての英語 570
           4 アカン語と他部族語およびアカン語諸方言間の関係 573
           5 おわりに―アカン語の未来 588
           参照文献 590
           注 590
     第18章 多言語使用による一言語状態
      ―ウガンダ、ホイマ市における社会言語学的アンケート調査から/梶 茂樹 595
           1 始めに 595
           2 ホイマ市、そしてウガンダ全体の言語状況 596
           3 質問票 599
           4 調査分析―個人例 603
           5 調査結果のまとめ 608
           6 考察 626
           7 終わりに 630
           文献 631
           注 632
  第4部 A 文字化/書記化とは何か
      第19章 ウォライタ語の文字化/書記化をめぐる諸問題/若狭 基道 634
           0 エチオピアおよびウォライタの概要 634
           1 一度目の失敗―ウォガゴダ語事件 636
           2 二度目の失敗―二一世紀のウォライタ語識字運動 642
           3 ウォライタ語文字化/書記化の可能性 650
           4 結び 656
           注 658

第5部 日本における多言語主義/多言語状況を考える 663
      第20章 多言語状況はいかにとらえられてきたか―近代日本の言語政策史の視点から/安田 敏朗 664
           1 はじめに―多言語状況と言語政策 664
           2 多言語状況の平面的把握―「図書館」「博物館」としての多言語状況 667
           3 多言語状況の層的把握―「二語併用」としての多言語状況 673
           4 まとめにかえて―「多文化共生」と日本語 682/注 683
     第21章 「言語権」からみた日本の言語問題/木村 護郎クリストフ 687
           1 日本の言語問題への視点としての言語権 687
           2 日本における言語権の受容 689
           3 日本における言語権論の特徴 696
           4 日本の言語問題 703/注 706
     第22章 日本の多言語状況に関するいくつかの研究課題/山下 仁 710
           はじめに 710
           1 単一言語主義の問題 713
           2 多言語主義の問題 719
           3 日本の多言語状況に関するいくつかの研究課題 727
           4 まとめ 739
           注 741

     あとがき/砂野幸稔 745
     執筆者紹介 750


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