バイリンガルな日本語文学
多言語多文化のあいだ

[編著者]郭南燕

日本語を異化し多様化し活性化し、往還する文学!
多言語・多文化の混交がいまや世界文学の主流となり、日本にあっては、外国人作家によって日本語で創作された作品が注目を集め高評を得ている。かれらはなぜ日本語で書き、何を表現し、どのような反応と影響をもたらしたのか。被植民者の作家の日本語創作は、どのような政治性・文学性をもちうるのか。日本語文学の現在と可能性を問う 。

定価=本体 4,000円+税
2013年6月20日A5判並製/448頁/ISBN978-4-88303-340-9


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[目次]

序章 バイリンガルな文学とは?/郭南燕 011

第1部 外国人の日本語文学
   非母語という疑似餌には何が掛かるか/稲賀繁美 022
     1 言語とはいかなる所有物か? 022
     2 言葉の放牧あるいは風に乗る生命 026
     3 日本語の敷居が高い、とはどういうことか? 028
     4 詩人にとっての非母語という罠 031
     5 「まれびと」としての語り部 034 
     6 言葉の釣糸と母語の岸辺 036
     7 同化と異化のはざま 039
     8 日本語の「国際化」 040
     9 放生会にむけて―おわりにかえて 042

   日本語の異化と多様化―リービ英雄のケース・スタディ/牧野成一 047
     はじめに 047
     1 作業仮説 049
     2 本研究の対象にしたリービ英雄の小説 053
     3 リービ英雄の文体と日本語の多様化の可能性 055
     まとめ 068

   リービ英雄の文学―間言語的空間の可能性/クリーマン・ユエン・フェイ(阮斐娜) 074
     1 越境する作家、錯乱する(disoriented)言語:ノーベル文学賞 074
     2 世界文学の可能性としての日本(語)文学 078
     3 極私的な体験から地政学のメタファまで 081
     4 結論:「非母語文学」から「世界文学」、そして「ワールド・フィクション」へ 089

   楊逸の文学におけるハイブリッド性/谷口幸代 094
     はじめに 094
     1 否定と歓迎―相反する楊逸文学の評価 095
     2 『ワンちゃん』の日本語 096
     3 『時が滲む朝』に吹く風 099
     4 『金魚生活』―金魚鉢からの風景 102
     5 『すき・やき』―恋のコミュニケーション 105
     6 楊逸文学のこれから―『牽手〜手をつなぐ』をめぐって 107

   田原の詩の日本語/谷口幸代 116
     はじめに 116
     1 田原の言語意識と創作意識 118
     2 梅雨の詩人として―中国語の雨と日本語の雨 123
     3 田原のひらがな詩―まとめに代えて 129

   アーサー・ビナードの創作―日本語の表現を拓く/郭南燕 135
     はじめに 135
     1 ビナードへの評価 136
     2 言語観 137
     3 独特な表現 140
     4 駄洒落の力 143
     結び 145

   「留学生文学賞」の設立と発展―日本語文学の意味を考える/栖原暁 149
     はじめに 149
     1 在日留学生の概況 150
     2 檸檬屋での出会い 153
     3 留学生文学賞の創設 154
     4 受賞者の活躍 157
     5 留学生の急増と減少の狭間で 158
     6 「留学生文学賞」の意味 160

第2部 作家たちの発言
  良い詩は時空間を超える 田原 164
  流れるように、自由に書く シリン・ネザマフィ 175
  限られた語彙を大切に ボヤンヒシグ 181
  日本語で現代を表現する リービ英雄 187
  言葉を植え替える アーサー・ビナード 196
  日本語圏の「新しい」台湾人として書く 温又柔 212

第三部 植民地遺産から生まれた日本語文学
   在日朝鮮人作家の日本語文学/竹内栄美子 226
     はじめに 226
     1 在日朝鮮人文学の前史と成立 228
     2 日本語文学という概念 231
     3 ジェンダーの観点から 236
     おわりに 241

   台湾作家呉坤煌の日本語文学―日本語創作の国際的ストラテジー/柳書琴 246
     1 植民地台湾の言語状況 246
     2 呉坤煌と一九三〇年代初期の東京在住の台湾人の民族運動 248
     3 左翼文化の回廊―「上海?東京」亡命者たちの芸術戦線 252
     4 呉の詩歌創作と演劇活動 256
     5 呉の少数派言説 261
     結論 270

   戦後の創作活動から見る、台湾人作家にとっての「日本語」文学―邱永漢、黄霊芝を例として/垂水千恵 275
     はじめに 275
     1 戦後台湾からの亡命日本語作家邱永漢 277
     2 戦後台湾に遺された日本語作家黄霊芝 281
     まとめ―日本語文学が提起するもの 285

   支配の言葉・融和の言葉―日本語文学という概念をめぐって/中川成美 292
     はじめに 292
     1 台湾映画にみる多言語とその力関係 294
     2 目取真俊とリービ英雄の文学にある言語の葛藤 301
     3 「日本語文学」を語るということ 308

第四部 母語と非母語を超える
     コラム 「非母語で書く」ことについて/鈴木貞美 312

   「非母語」の日本語で書いた日本人作家/太田雄三 314
     1 非母語で書くことの必然性 314
     2 母語とは何か 317
     3 明治初期のエリート教育と「母語」 321 
     結び 325

      コラム 非母語文学の分析をめぐる諸問題―言語学のまなざしから/牧野成一 332

  野口米次郎の〈自己翻訳〉/堀まどか 336
     はじめに 336
     1 〈自己翻訳〉 337
     2 英詩の創作と、文化翻訳の志 338
     3 〈自己翻訳〉の実例 340
     4 〈祖国〉への距離と、〈翻訳〉との距離 343
     5  野口米次郎のバイリンガリズム 348
     おわり 351

   リーガル・エイリアン―日本語作家の市民権をめぐって/織世万里江 355
     はじめに 355
     1 呼称:日本語作家? 越境作家? 357
     2 母語話者と熟練話者 362
     3 日本語で書くこと 365
     4 タスク特有の言語、言語特有のタスク 371
     5 媒体言語と想定読者層 373
     結び 376

   水村美苗の「比較」―『日本語が亡びるとき』のレトリック/橋本智弘 380
     はじめに 380
     1 英語の本質化 381
     2 「非対称性」と「比較」 386
     3 「非母語文学」の可能性 389

     コラム 沖縄系ブラジル二世作家、山里アウグストの「空想解脱小説」/細川周平 394

  スウェーデン語で書くギリシャ人T・カリファテイデス/トゥンマン武井典子 400
     はじめに 400
     1 移民文学 401
     2 移民体験とスウェーデン語 402
     3 カリファテイデスのテーマ 404
     4 スウェーデン文壇での位置 410
     結論 413

      コラム 日本語で書くということ―関西人の立場から/井上章一 417

  日本語文学のバイリンガル性/郭南燕 421
     1 近年の日本語文学の作家 421
     2 日本語の相対化 424
     3 文化比較の視点 426
     4 共有される日本文化 431
     結び 432

     編者あとがき 437
     執筆者略歴  443


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