[目次]
序章 バイリンガルな文学とは?/郭南燕 011
第1部 外国人の日本語文学
非母語という疑似餌には何が掛かるか/稲賀繁美 022
1 言語とはいかなる所有物か? 022
2 言葉の放牧あるいは風に乗る生命 026
3 日本語の敷居が高い、とはどういうことか? 028
4 詩人にとっての非母語という罠 031
5 「まれびと」としての語り部 034
6 言葉の釣糸と母語の岸辺 036
7 同化と異化のはざま 039
8 日本語の「国際化」 040
9 放生会にむけて―おわりにかえて 042
日本語の異化と多様化―リービ英雄のケース・スタディ/牧野成一 047
はじめに 047
1 作業仮説 049
2 本研究の対象にしたリービ英雄の小説 053
3 リービ英雄の文体と日本語の多様化の可能性 055
まとめ 068
リービ英雄の文学―間言語的空間の可能性/クリーマン・ユエン・フェイ(阮斐娜) 074
1 越境する作家、錯乱する(disoriented)言語:ノーベル文学賞 074
2 世界文学の可能性としての日本(語)文学 078
3 極私的な体験から地政学のメタファまで 081
4 結論:「非母語文学」から「世界文学」、そして「ワールド・フィクション」へ 089
楊逸の文学におけるハイブリッド性/谷口幸代 094
はじめに 094
1 否定と歓迎―相反する楊逸文学の評価 095
2 『ワンちゃん』の日本語 096
3 『時が滲む朝』に吹く風 099
4 『金魚生活』―金魚鉢からの風景 102
5 『すき・やき』―恋のコミュニケーション 105
6 楊逸文学のこれから―『牽手〜手をつなぐ』をめぐって 107
田原の詩の日本語/谷口幸代 116
はじめに 116
1 田原の言語意識と創作意識 118
2 梅雨の詩人として―中国語の雨と日本語の雨 123
3 田原のひらがな詩―まとめに代えて 129
アーサー・ビナードの創作―日本語の表現を拓く/郭南燕 135
はじめに 135
1 ビナードへの評価 136
2 言語観 137
3 独特な表現 140
4 駄洒落の力 143
結び 145
「留学生文学賞」の設立と発展―日本語文学の意味を考える/栖原暁 149
はじめに 149
1 在日留学生の概況 150
2 檸檬屋での出会い 153
3 留学生文学賞の創設 154
4 受賞者の活躍 157
5 留学生の急増と減少の狭間で 158
6 「留学生文学賞」の意味 160
第2部 作家たちの発言
良い詩は時空間を超える 田原 164
流れるように、自由に書く シリン・ネザマフィ 175
限られた語彙を大切に ボヤンヒシグ 181
日本語で現代を表現する リービ英雄 187
言葉を植え替える アーサー・ビナード 196
日本語圏の「新しい」台湾人として書く 温又柔 212
第三部 植民地遺産から生まれた日本語文学
在日朝鮮人作家の日本語文学/竹内栄美子 226
はじめに 226
1 在日朝鮮人文学の前史と成立 228
2 日本語文学という概念 231
3 ジェンダーの観点から 236
おわりに 241
台湾作家呉坤煌の日本語文学―日本語創作の国際的ストラテジー/柳書琴 246
1 植民地台湾の言語状況 246
2 呉坤煌と一九三〇年代初期の東京在住の台湾人の民族運動 248
3 左翼文化の回廊―「上海?東京」亡命者たちの芸術戦線 252
4 呉の詩歌創作と演劇活動 256
5 呉の少数派言説 261
結論 270
戦後の創作活動から見る、台湾人作家にとっての「日本語」文学―邱永漢、黄霊芝を例として/垂水千恵 275
はじめに 275
1 戦後台湾からの亡命日本語作家邱永漢 277
2 戦後台湾に遺された日本語作家黄霊芝 281
まとめ―日本語文学が提起するもの 285
支配の言葉・融和の言葉―日本語文学という概念をめぐって/中川成美 292
はじめに 292
1 台湾映画にみる多言語とその力関係 294
2 目取真俊とリービ英雄の文学にある言語の葛藤 301
3 「日本語文学」を語るということ 308 第四部 母語と非母語を超える
コラム 「非母語で書く」ことについて/鈴木貞美 312
「非母語」の日本語で書いた日本人作家/太田雄三 314
1 非母語で書くことの必然性 314
2 母語とは何か 317
3 明治初期のエリート教育と「母語」 321
結び 325
コラム 非母語文学の分析をめぐる諸問題―言語学のまなざしから/牧野成一 332
野口米次郎の〈自己翻訳〉/堀まどか 336
はじめに 336
1 〈自己翻訳〉 337
2 英詩の創作と、文化翻訳の志 338
3 〈自己翻訳〉の実例 340
4 〈祖国〉への距離と、〈翻訳〉との距離 343
5 野口米次郎のバイリンガリズム 348
おわり 351
リーガル・エイリアン―日本語作家の市民権をめぐって/織世万里江 355
はじめに 355
1 呼称:日本語作家? 越境作家? 357
2 母語話者と熟練話者 362
3 日本語で書くこと 365
4 タスク特有の言語、言語特有のタスク 371
5 媒体言語と想定読者層 373
結び 376
水村美苗の「比較」―『日本語が亡びるとき』のレトリック/橋本智弘 380
はじめに 380
1 英語の本質化 381
2 「非対称性」と「比較」 386
3 「非母語文学」の可能性 389
コラム 沖縄系ブラジル二世作家、山里アウグストの「空想解脱小説」/細川周平 394
スウェーデン語で書くギリシャ人T・カリファテイデス/トゥンマン武井典子 400
はじめに 400
1 移民文学 401
2 移民体験とスウェーデン語 402
3 カリファテイデスのテーマ 404
4 スウェーデン文壇での位置 410
結論 413
コラム 日本語で書くということ―関西人の立場から/井上章一 417
日本語文学のバイリンガル性/郭南燕 421
1 近年の日本語文学の作家 421
2 日本語の相対化 424
3 文化比較の視点 426
4 共有される日本文化 431
結び 432
編者あとがき 437
執筆者略歴 443 |