詩画制作論の系譜

[著者]伊達立晶

古代ギリシア以来、文学・芸術運動を牽引してきた作品制作論。その歴史的展開をたどることは、思考の枠組みを規定しかつ変容させる言語と人間との関わりを問いなおす契機となる。

定価=本体 7,400円+税
2019年2月25日/A5判上製/618頁/ISBN978-4-88303-475-8


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[目次]

第一部 プラトンの模倣論からコウルリッジの創造的イマジネーションまで  15

   序章  16

   第一章 プラトンの模倣論の背景 ―文字文化との対決  18
      序  18
      第一節 『ファイドロス』の中心問題  22
      第二節 書きもの批判  30
      第三節 ソクラテス・プラトンの立場  37
      第四節 文字文化批判と模倣論  40
      第五節 ソクラテスとプラトン、それぞれの立場  45
        a 対話と対話篇  45/ b 物語(ミュートス)  47/ c イデア論  48/ d 空間モデルの心  51
      結び  53

   第二章 キケロによる模倣論の変容  56
      序  56
      第一節 問題の所在  57
      第二節 『弁論家』へと至る理想の弁論家像  61
      第三節 キケロにおける species 64
      第四節 『弁論家』(9-10)とベッローリのイデア論  73
      結び  86

   第三章 ドライデンの発想論  90
      序  90
      第一節 「絵画と詩との比較」の概要  98
      第二節 古典弁論術の詩画論への適用とその改変  102
      第三節 「発想」と天分、詩的霊感  106
      第四節 『アエネイス』献呈の辞における発想論  114
      結び  121

   第四章 創造的イマジネーション概念の成立におけるシェイクスピア『夏の夜の夢』の役割  126
      序  126
      第一節 問題の所在  128
      第二節 シェイクスピアの時代までの「ファンタジー」、「イマジネーション」概念史  135
      第三節 シェイクスピア自身による「イマジネーション」、「ファンシー」、「ファンタジー」概念  144
      第四節 誤解の由来、およびその副産物  152
      結び  163

   第五章 コウルリッジのイマジネーション論  166
      序  166
      第一節 コウルリッジのイマジネーション論解釈  168
        a イマジネーションとファンシーとの区別、および創造性の問題  168/ b ファンシー  172/
        c 第二のイマジネーション  174/ d 第一のイマジネーション  177
      第二節 コウルリッジにおける推論の方法論とイマジネーション論  182
        a 「法則」と「理論」  182/ b 理性の二重性  185/
        c 「方法の原理」における理性論とイマジネーション論との類比  188/
        d イマジネーション論の成立と『失楽園』  190
      結び  195

  終章  196

第二部 ポーの詩論とその背景  199

   序章  200

   第一章 「構成の哲学」とその瞞着  202
      序  202
      第一節 「構成の哲学」の個々の論点とその思想的背景  204
        a プロット論  204/ b 効果ないし印象の統一  205/ c 作品の長さ  209/
        d 唯美主義  210/ e 美とメランコリー  212/ f リフレイン  213/
        g 恋人の死を悼む男という主題  217/ h 後ろからの制作  218/ i 舞台設定  219/
        j 意味の底流  221
      第二節 「構成の哲学」における瞞着―イマジネーション論の隠蔽  222
      結び  227

   第二章 詩的イマジネーション論の形成過程  228
      序  228
      第一節 「ドレイク・ハレック評」  229
      第二節 『アルシフロン』評  234
      第三節 「ロングフェローのバラッド」  239
      第四節 ウィリス評  247
      第五節 例外的な「イマジネーション」概念の用法  250
      結び  256

   第三章 イマジネーション論の思想的背景  258
      序  258
      第一節 「アルンハイムの地所」における造園論  259
      第二節 「メスメリズムの啓示」とイマジネーション論  262
      第三節 「メスメリズムの啓示」の思想的背景  268
        a デカルト、モア、グランヴィル  268/ b エピクロス、シラノ  272/ c メスメリズム  277
      第四節 個物の融解と言葉  278
      結び  284

   第四章 イマジネーション論と推論の方法論  286
      序  286
      第一節 「モルグ街の殺人」における命題群の解析  289
      第二節 モルグ街の殺人事件と分析力  292
      第三節 演繹、帰納、イマジネーションに基づく推論  298
        a 演繹、帰納における発見性の欠落  300/ b 演繹、帰納における真実性の欠落  301/
        c 新奇な仮説を形成する蓋然的推論の意義  304/ d アブダクション  306
      第四節 コウルリッジのイマジネーション論との比較  310
      結び  315

   終章  318

第三部 ポーの詩論のフランス絵画論への転換とフランス芸術の変容  321

   序章  322

   第一章 ボードレールの美術批評におけるポーの影響  324
      序  324
      第一節 一八五〇年代までのフランス芸術の状況  325
      第二節 美の変容  336
        a 異様さの称揚  336/ b 抽象美への接近  341/ c 「超自然主義」  346
      第三節 唯美主義  352
      第四節 イマジナシオン論  354
      第五節 ポーとの思想的相違  360
      結び  365

   第二章 ボードレールによるヴァーグナー受容とその思想的背景  366
      序  366
      第一節 ヴァーグナーの芸術論―「未来音楽」を中心に  367
      第二節 ボードレールとヴァーグナーとの思想的接触(一)  375
      第三節 ボードレールとヴァーグナーとの思想的接触(二)  385
      結び  392

   第三章 マラルメと「構成の哲学」 ―印象主義を越えて  396
      序  396
      第一節  「構成の哲学」の影響と「印象主義」の成立  397
      第二節 虚無と美  412
      第三節 象徴主義への道  421
      第四節 ポーとの思想的相違  424
      結び  427

   第四章 偶像化されたボードレールとシュルレアリスムへの展開  430
      序  430
      第一節 印象主義擁護論  431
      第二節 ジャポニスム  436
      第三節 象徴主義とランボー  440
      第四節 シュルレアリスム  447
      結び  454

   終章  456

第四部 一九世紀後半の詩画制作論の変容に関する原理的考察  459

   序章  460

   第一章 推論形式と詩画制作運動  464
      序  464
      第一節 合理論と経験論とが芸術運動に与えた影響  465
      第二節 第三の推論形式と芸術  478
      結び  481

   第二章 ポーの思想と大乗仏教  484
      序  484
      第一節 諸事物の実在性  487
      第二節 人間の心の二重性  491
      第三節 言葉の限界と意義  494
      第四節 仮構的世界  497
      第五節 個人性  500
      結び  504

   第三章 大乗仏教と中世の和歌 ?西洋近代詩論との類比  506
      序  506
      第一節 時代背景  507
      第二節 天台三諦説と和歌 ?慈円と藤原俊成  511
      第三節 歌詠みと歌作り  519
      第四節 真言密教と和歌 ?西行  525
      第五節 定家の和歌  532
      結び  536

   第四章 西洋近代文化の変容と現代  538
      序  538
      第一節 ジャポニスム再考  540
      第二節 言語学的問題  548
      第三節 心理学的問題  556
        a 神的性質の希薄化  557/ b 制作における無意識や狂気  559/ c 作品の享受者への影響  563
      第四節 制作者の消失  568
      結び  580

   終章  584

   結語  587

      あとがき  594
      文献表  1
      人名索引  18


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