日本における天竺認識の歴史的考察

[著者]石ア貴比古

日本列島において、人々は二つの隣国を鏡にして、国の自画像を描いてきた。直接交渉を持った巨大な中国と、彼方に夢想した仏教の聖地・天竺である。日本・中国・天竺からなる三国世界観は、江戸時代に新しい世界認識・五大州へとその座を譲った。そして現在、仏教の聖地はインドという名で呼ばれている。
果たして天竺はインドになったのか、あるいは―?

[書評・紹介]
「Real Sound」(2021.06.06 12:00)、著者インタビュー

定価=本体 5,200円+税
2021年2月28日/A5判上製/408頁/ISBN978-4-88303-525-0


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[目次]

序 章 天竺はインドの旧称か? 1

第 1 章 先行研究 ―― 天竺と三国世界観 11
   第 1 節 日印関係史における先行研究 13
      第 1 項 戦前〜一九六〇年代  13
      第 2 項 一九七〇年代  19
      第 3 項 一九八〇年代  21
      第 4 項 一九九〇年代以降  25
   第 2 節 日本の対外関係史における先行研究 31
      第 1 項 一九八〇年代以前  31
      第 2 項 一九八〇年代以降  34
      第 3 節 その他の先行研究 41
   小括  48
   註  51

第 2 章 天竺認識の歴史 55
   第 1 節 天竺という語について 57
      第 1 項 インドを意味した三八種の名称  57
      第 2 項 A群:身毒、申毒、新頭、辛頭、身竺、新陶、信度、信図、信地  59
      第 3 項 C群:天督、天竺、天毒、天篤  73
   第 2 節 天竺認識の歴史的変遷1――仏教公伝と菩提僊那(六世紀〜八世紀) 81
      第 1 項 仏教公伝  81
      第 2 項 菩提僊那  85
      第 3 項 崑崙人  91
   第 3 節 天竺認識の歴史的変遷2――平安仏教と説話集(九世紀〜一二世紀) 93
      第 1 項 最澄と空海  93
      第 2 項 高丘親王  95
      第 3 項 円仁、成尋、覚憲  98
      第 4 項 説話集  100
   第 4 節 天竺認識の歴史的変遷 3 ――鎌倉仏教(一三世紀〜一五世紀) 104
      第 1 項 明恵上人  104
      第 2 項 『三国仏法伝通縁起』  107
      第 3 項 『神皇正統記』  108
   小括  110
   註  113

第 3 章 イエズス会士と天竺人 123
   第 1 節 イエズス会士と天竺人     127
      第 1 項 ザビエルの来日  127
      第 2 項 鉄砲と南蛮人  128
      第 3 項 仏教の一派としてのキリスト教  131
   第 2 節 来日宣教師の仏教認識と天竺     137
      第 1 項 ヨーロッパ世界におけるインドについて  137
      第 2 項 イエズス会士の仏教情報  140
      第 3 項 天竺とインドの乖離  146
   小括  154
   註  158

第 4 章 世界図に見る天竺認識 ―― 一六世紀末〜一八世紀初頭の日本を中心として 163
   第 1 節 地図に見る三国世界観 166
   第 2 節 天竺が存在しない世界図――オルテリウス『世界の舞台』 169
   第 3 節 天竺とインドが無関係な世界図――南蛮世界図屏風「山本氏図」 172
      第 1 項 天竺/てんぢく?  174
      第 2 項 いんぢあ、へんから  177
   第 4 節 天竺とインドの結合――マテオ・リッチ『坤輿万国全図』 179
      第 1 項 天竺/てんじく?  181
      第 2 項 いんぢあ/應帝亜/ India 、印度厮當/ Indostan 185
   第 5 節 日本初の刊行世界地図と天竺の「復活」――『万国総図』と『万国総界図』 189
   小括  196
   註  199

第 5 章 知識人の天竺認識 ―― 西川如見、寺島良安の事例から 203
   第 1 節 西川如見と『増補華夷通商考』 206
      第 1 項 『増補華夷通商考』の構成  207
      第 2 項 『増補華夷通商考』における天竺  211
      第 3 項 南天竺  216
      (1)  サントメ  216
      (2)  モウル  218
      (3)  シャム  223
      (4)  インデヤ  226
   第 2 節 寺島良安と『和漢三才図会』 230
      第 1 項 『三才図会』と『和漢三才図会』の構成  230
      第 2 項 『三才図会』と『和漢三才図会』における天竺  233
      (1)  地図と地誌  233
      (2)  三十三祖  240
      第 3 項 『三才図会』と『和漢三才図会』における天竺の「人物」  241
      (1)  『三才』と全く同じ記述のもの  245
      (2)  『三才』を引用しつつ追加記述がなされたもの  246
      (3)  『三才』には存在せず『和漢』で新たに登場したもの  251
   小括  255
   註  259

第 6 章 民衆の天竺認識 ―― 天竺徳兵衛と『五天竺』を中心に 265
   第 1 節 『天竺徳兵衛』における天竺 267
      第 1 項 実在の天竺徳兵衛と『天竺物語』  268
      第 2 項 物語化する徳兵衛  273
      (1)  歌舞伎『天竺徳兵衛聞書往来』  274
      (2)  浄瑠璃『天竺徳兵衛郷鏡』  278
      (3)  歌舞伎『天竺徳兵衛韓噺』  281
   第 2 節 『五天竺』における天竺 286
      第 1 項 『五天竺』の概要  286
      第 2 項 『五天竺』における天竺  287
   第 3 節 「大象図」における天竺 294
      第 1 項 享保一三年のゾウと『象のみつぎ』  296
      第 2 項 文化一〇年のゾウと「浅間神社所蔵大象図」  298
      第 3 項 文久三年の象と『中天竺馬爾加国出生新渡舶来大象之図』  299
   小括  300
   註  305

第 7 章 宗教者の天竺認識 ―― 平田篤胤『印度蔵志』を例に 309
   第 1 節 『印度蔵志』の先行研究 312
   第 2 節 『印度蔵志』の書誌と構成 317
   第 3 節 国学者・平田篤胤における『印度蔵志』の位置 323
   第 4 節 『印度蔵志』における天竺認識の特色 327
      第 1 項 天竺と印度、インデア  327
      第 2 項 五印度とムガル帝国  331
      第 3 項 朝夷厚生と仏教批判  334
      第 4 項 インドの「古伝」と神道  338
   小括  343
   註  347

終 章 天竺の意義と終焉 353
   註  373

史料・文献一覧  374
初出一覧  389
あとがき  391


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