植民地のなかの「国語学」
時枝誠記と京城帝国大学をめぐって

[著者]安田敏朗

国語学者・時枝誠記にとって植民地朝鮮とはいかなる場であったのか。その言語理論「言語過程説」から、どのような「国語政策」が導き出されたのか。「国」の名を冠した学問体系に絡め取られていった一国語学者の時代像を描く。

定価=本体 2,500円+税
1998年8月25日/四六判並製/275頁/ISBN978-4-88303-040-8

 



[目次]

序章 「一国国語学」の閉鎖性 7
 第1節 一九四六年「学会総懺悔」 8
 第2節 「一国国語学」について 19 

第1章 東京帝国大学国語研究室と京城帝国大学 27 
 第1節 時枝誠記略歴 28
 第2節 東京帝国大学国語研究室 33
 第3節 京城帝国大学 40
 第4節 京城帝国大学法文学部国語国文学専攻 46

第2章 時枝の言語観と言語政策への関心 53 

第3章 「皇国臣民の誓詞」をめぐって 61
 第1節 「皇国臣民の誓詞」と京城帝国大学 62
 第2節 時枝誠記の反応 73
 第3節 「皇国臣民の誓詞」の衝撃 86 

第4章 時枝誠記の言語政策関与の論理 89 
 第1節 「国語」の定義をめぐって――言語における「価値意識」の抽出 90
 第2節 「価値意識」と言語政策―― 「国語学と国語教育」[一九四〇年] 94

第5章 朝鮮総督府の国語普及政策と時枝の国語普及方針 103 
 第1節 「皇国臣民化」期の朝鮮総督府言語政策概況 105
 第2節 時枝誠記「朝鮮に於ける国語政策及び国語教育の将来」[一九四二年]をめぐって 114
 第3節 時枝誠記「朝鮮に於ける国語――実践及び研究の諸相――」[一九四三年]をめぐって 130
 第4節 朝鮮総督府学務局について 5節:総督府学務局官僚への影響――森田悟郎を中心に 146 
 第6節 小括 159

第6章 時枝誠記以外の「国語一元化」論 167 
 第1節 「国語一元化」の要請――二言語併用の異常視 168 
 第2節 「朝鮮語方言化論」 183

第7章 京城帝国大学在職の言語・文学系統研究者の異言語意識 197 
 第1節 高木市之助 199
 第2節 小林英夫 207

終章 敗戦後との関わり――「一国国語学」をこえて 217

あとがき 234
新装版再版にあたってのあとがき 238
参考文献一覧 240


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