国文学の誕生

[著者]藤井貞和

変移する近代日本の<知>と<学>のモラルを問う。『思想』に発表された連作「国文学の誕生」、「国文学の思想」「国語学史的成立」を柱としてまとめられた、研究者・詩人として、いま語るべき言葉をきざみつける、最新の批評・評論集。

定価=本体 2,500円+税
2000年5月24日/四六判並製/268頁/ISBN978-4-88303-066-8

 

[目次]

1章 国文学の誕生 7
 はじめに 7
 1 一国民一国家の幻想 9
 2 国学と国文学、国語学 15
 3 日本主義と国文学 19
 4 『古事記』の“成長”
 5 「帝記」は資料にあらず 26
 6 万葉の表記と『古事記』
 7 口承文学と少数者の文学

2章 国文学の思想 41
 はじめに 41
 1 稲の起源の場所 44
 2 『日本書紀』『古事記』稲の起源 47
 3 大嘗祭 ・鎮魂祭の折口 50
 4 「大嘗祭の本義」臨界点 52
 5 天石屋戸条/「天孫降臨」神話と鎮魂祭
 6 新嘗祭祀の主神と客神 60
 7 まれびと神の誕生 63
 8 廻立殿の幻想と折口 66
 9 天子非即神論への転向 70
 終わりに 74

3章 国語学史的成立 79
 はじめに 79
 1 『国語学史』の音義学説 81
 2 帰納的方法について 84
 3 主体的表現(=辞)への注目 88
 4 話者の言葉ということ 92
 5 言語過程説はどこからくるか 96
 6 言語過程説“批判”について 101
 7 言表 107
 8 零記号と語りの人称 112

4章 言語学と文学研究 119
 1 限定的なものの非限定的表現 119
 2 文学/言語の連続 124
 3 文学言語連続、つづき 129
 4 日本語文の分析 133 

5章 “恋歌”源氏 141

6章 西郷信綱論 147
 1 一「国語学者」 147
 2 「佐藤春夫論」 150
 3 文学の遠景化 154
 4 「決定的悲惨」を見る 157

7章 物語に語り手がいなければならない理由 159
 1 物語論の“学”の限界 159
 2 語り手がいなければならない理由は 165
 3 表現者の根拠──《詩》の語り 170

8章 口承文学と文学史 181
 1 『東吉野の民話』の文体 181
 2 伝承内容の真偽についての保留 185
 3 口承文学と書き言葉 191
 4 歴史的と詩的と──《真実》をめぐって 195
 5 伝承の言語的な根拠──古典から見た 199

9章 王権論の集団責任と個人の責任 203
 1 王の国の体験 203
 2 古代的な村落共同体 206
 3 琉球王権論考 209
 4 古代文学研究者とタブー 212
 5 《外来王》の人類学者は語る 216
 6 われらおもろを学ぶ縁起 221

10章 教科書、戦争、表現 225
 1 問題の在りか、定義 225
 2 いじめ、そして銃(よさらば) 229
 3 『平家物語』、叙事詩という教材 234
 4 サブカルチュアと《反戦》 240
 5 《民族》はこえられるか、詩の敗北か 243

あとがき 249
初出一覧 255
人名・書名・事項索引


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