[著者]大原始子
多民族の統合と経済発展を実現した都市国家シンガポールは、国民のだれも母語としない「英語」を「国家語」としている。その言語政策と人々の生活の関係をフィールドワークし、シンガポール社会の現実を描きだす言語社会学的レポート。
定価=本体 2,300円+税 2002年2月15日/四六判並製/200頁/ISBN978-4-88303-088-0
[目次]
序章 シンガポールと言語研究 1章 言語的、文化的多様性 1 移民の国シンガポール――民勢的事実より 2 民族、文化に関する研究における二つの論点 3 言語的多様性――シンガポールにおける言語と方言 4 公用語と国語の成立過程 5 シンガポールにおける「ナショナル・ランゲージ」の二つの意味と社会的動態 2章 民族に対する社会操作とは――国家形成にむけて 1 “スピークマンダリン(Speak Mandarin)”キャンペーン 2 マスメディア 3 経済政策 4 住宅政策 3章 教育制度にみる言語政策の変遷――その政治的意図と結果 1 イギリス統治時代の教育――西欧指向と本土指向の二分化 2 二言語教育時代 3 能力別言語教育制度――社会問題→教育制度改革 4 教育制度における動態 5 能力別言語制度の問題点 6 シンガポールにおける英語の役割 4章 中華系社会とマレー系社会――移住形態と文化経済的差異 1 中華系社会 2 マレー系社会 5章 シンガポールをフィールドワークして――シンガポリアンからの反応 1 フィールドワークの目的 2 データ収集法――言語態度を利用して 3 調査対象 4 社会的変項(Social Variable) 5 調査表の構成 6章 言語政策のもたらしたもの――言語価値の変化 1 ‘best variety’の社会的機能 2 教育言語の威信(プレステージ)に関わる問題 3 言語維持と言語取り替え 4 「話すこと」、「話しかけられること」と使用言語 5 職業と英語変種との相関関係 7章 言語政策に対する不安と宗教の関係 8章 新しいエスニシティの形成と英語のダイグロシア化 1 英語のダイグロシア化――言語の社会的機能割り当て 2 シンガポール英語の文末小詞とは 3 言語政策によるエスニシティの育成 9章 まとめにかえて――言語教育政策、社会階層、民族