ネパール、ビャンスおよび周辺地域における儀礼と社会範疇に関する民族誌的研究
もう一つの〈近代〉の布置

[著者]名和克郎

チベット国境付近にあるビャンス地方、そこでは、どんな言語が話され、どんな生活が営まれているのか。もちろん日本で唯一のビャンジー語話者である著者が、民族学的方法論を批判的に検証しつつ、いま、民族誌を編むことを自らに問いかけながら描き出した、人々の生活と、その指し示すもの。

[受賞]
第30回(2004年)「澁澤賞」(公益信託澁澤民族学振興基金・主催)

定価=本体 6,000円+税
2002年2月25日/A5判上製/504頁/ISBN9784-88303-092-7



第1部 序

 1. 序論 
     1.1 民族誌/1.2 近代/1.3 言葉と行為
 2. 民族範疇 
     2.1 「民族名」/2.2 「名乗り」の変容/2.3 結論
 3. 生業と言語についてのノート 
     3.1 生業/3.2 言語

第2部 社会範疇
 4. 社会範疇 
     4.1 地域/4.2 村/4.3 クラン/4.4 家族/4.5 結論
 5. 起源伝承
     5.1 Rangの起源伝承/5.2 ネパール民族誌学における伝承研究/
     5.3 口頭伝承を語る場/5.4 起源伝承の多層性/5.5 結論
 6. 個人名と親族呼称についてのノート 
     6.1 個人名/6.2 親族呼称

第3部 「伝統」と儀礼
 7. 「伝統」概念 
     7.1 thumcharu──Byansにおける「伝統」概念/7.2 「伝統の創造」と「文化の客体化」/
     7.3 thumcharuの内実──一連の儀礼/7.4 thumcharuと「伝統」の間
 8. 儀礼 
     8.1 儀礼研究の諸問題/8.2. 儀礼の過程/8.3 儀礼の所作とその「意味」/
     8.4 儀礼に用いられる主要な物品および供物/8.5 Byansの神々/
     8.6 宗教的帰属の根拠としての儀礼及び神々/8.7 結論
 9. 儀礼の目的及び「シャーマン」についてのノート 
     9.1 儀礼の目的/9.2 lama/9.3 考察

第4部 儀礼の変化
 10. 婚姻儀礼 
     10.1 婚姻儀礼の体系的語り、および対応する行為/10.2 体系的語りから欠落するもの/
     10.3 結論および補遺
 11. 葬送儀礼 
     11.1 新たな葬送儀礼──sarat/11.2 「伝統的」葬送儀礼──gwon/11.3 葬送儀礼変更の企図と結果/
     11.4 今日のgwon──葬送儀礼のもう一つの変容/11.5 結論
 12. 歴史、国境、教育についてのノート 
     12.1 Byansおよび周辺地域の歴史/12.2 国境/12.3 学校教育

第5部 儀礼と社会範疇の現状
 13. 儀礼の創造 
     13.1 Shivjiの社の落成式/13.2 儀礼の創造──その諸側面/13.3 結論
 14. 儀礼と境界、及び越境 
     14.1 儀礼と境界/14.2 Rangになる過程
 15. 結論

付録
 付録1 本書のもとになったネパールでの調査について
 付録2 Byansi語の表記について
 付録3 Rangを自称する人々の人口の概算
 付録4 人類学的営為に関する中川敏の再規定について
 付録5 baira(即興歌)の歌い方
 付録6 婚姻儀礼の式次第についてのインタヴューの例
 付録7 ChhangruのByans Rishiの祭
 付録8 Chhangruの学校のSarasvati Puja


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