国文学の時空
久松潜一と日本文化論

[著者]安田敏朗

歴史・風土・国文学────
日本文化・日本文学は、どのような時空のなかで整序されてきたのか。「まこと」「もののあわれ」「わび」といった今日でも日本文化論のキーワードとされる概念は、その時空にいかように配置されていったのか。「今に徹する」ものとして時代と調和的に構築された「国文学」が、敗戦をのりこえようとした回路を、一国文学者の議論を中心に検証する。

定価=本体 2,600円+税
2002年4月20日/四六判並製/324頁/ISBN978-4-88303-094-1

[目次]

序章  本書のねらい

第一章 国文学はいかように敗戦をのりこえようとしたのか
1 のりこえ方
2 具体相としての久松潜一
  1 国民精神文化研究所
  2 日本諸学振興委員会
  3 「今に徹する」ことと、時局のあいだ
  4 日本文化論の構造

第二章 戦中期の言説
1 「今に徹する」国文学
2 「国学」の一貫性―日本文芸学論争と「日本学」の構造
  1 日本文芸学論争と久松潜一
  2 「国学」としての「日本諸学」
  3 「国学」化する久松潜一
3 「普遍性」の問題
  1 日本文学の「普遍性」―『万葉集』をめぐって
    1 万葉精神と日本精神―特殊から時間軸の「普遍性」へ
    2 空間軸の「普遍性」―万葉精神=日本精神の「世界性」「優秀性」
    3 ヨーロッパ留学と「世界性」の問題
    4 「東亜」での「普遍性」―「東亜文化」「東亜文学」の可能性
  2 「普遍性」と「国語」論
  3 敗戦と「普遍性」―「まこと」を軸にして

第三章 時間的整序―日本文学史・日本文学評論史・日本精神
1 「あたらしい国文学」の誕生―芳賀矢一・立花銑三郎『国文学読本』の周囲
2 統一体としての日本文学―『国文学読本』から『日本文学概説』へ
3 統一される「精神」―「国文学を流れる三の精神」(一九二六年)をめぐって
4 「日本文学評論史」の構造
5 日本精神の構成―「まこと」の規範化
  1 「まこと」の道徳性
  2 日本精神
  3 一九三二年という画期@―『古事記』論と「敬神・忠君・愛国」と「まこと」
  4 一九三二年という画期A―『万葉集』論と「敬神・忠君・愛国」と「まこと」
  5 文部省教化プロジェクトへの参与
  6 「心と詞」の調和をめぐって

第四章 空間的整序―風土と「国民性」
1『風土』との出会い
2「歴史・風土・文学」(一九三七年四月)―風土と文学
3「日本の風土と文学」(一九三七年八月)―風土の時間的整序
4「文学地理学の構想」(一九四四年三月)―時間軸の空間軸への投射
5 同時期の文学風土論―雑誌特集にみる
  1 「海洋文学」―『国文学 解釈と鑑賞』(一九四一年六月)
  2 「日本文学と風土」―『国文学 解釈と鑑賞』(一九四〇年一〇月)

第五章 文学と国民性―時間的・空間的整序をへた議論のなかで
1 『国体の本義』
2 『我が風土・国民性と文学』の構成
  1 「序説」に関して
  2 「一、我が風土と文学」に関して
    1 「イ、日本文学の風土的区画」
    2 「ロ、季節感と日本文学」
  3 「二、我が国民性と文学」に関して
    1 「イ、日本文学の国民的性格」
    2 「ロ、「まこと」と明浄直」
    3 「ハ、国民性の美的特質」
    4 「二、敬神の精神」
    5 「ホ、忠君愛国」
    6 「ヘ、家の尊重」
    7 「ト、没我帰一と包容同化」
3 「国民性」を論じること
  1 芳賀矢一『国民性十論』との関連から
  2 『国文学通論』(一九四四年)へ

第六章 継承関係―ふたたび、「のりこえ方」をめぐって
1 分割継承―『我が風土・国民性と文学』の場合
  1 前半部「我が風土と文学」について―『日本文学 風土と構成』ほかへ
  2 後半部「我が国民性と文学」について―『新訂 国文学通論』へ
2 削除・書きかえ・かわらぬもの―『改訂 日本文学の思潮』ほかへ・および「文化の庇護者としての天皇」論
3 風土論の継承をめぐって

終章  日本文化論の語り方


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