[目次]
はじめに 9
第1部 コルシカにおける民族意識の形成
第1章 「コルシカ方言」、「コルシカ語」の形成と知識人の関係について
19
はじめに 19
1 コルシカ語とは 20
2 一九世紀前半まで――存在しなかった「コルシカ方言」 24
フランス併合までのコルシカにおける言語的状況 24
フランス併合後の方言撲滅政策とコルシカ 25
コルシカにおける知識人の「イタリア語」の防衛 26
イタリア・イッレデンティスモの萌芽とコルシカ 27
3 一九世紀末から二〇世紀前半――「コルシカ方言」の形成と知識人の対立 30
「コルシカ方言」をめぐる諸活動のはじまり 30
コルシカ主義とシルネア主義の対立と書記法の違い 32
4 戦後コルシカの言語運動――対立の克服と「地域語」の認定の要求 34
「方言」から「地域語」へ 34
フランスの地方分権化政策に伴う「コルシカ語」の成立 37
「コルシカ語」はどのように形成されたか 39
第2章 現代フランスの地域主義―― 一九六〇年代コルシカを中心に 41
はじめに 41
1 フランスの社会学者による地域主義の分析 43
トゥレーヌによるラングドックの地域主義研究 43
ケレとデュロンによるブルターニュの地域主義研究 47
2 「植民化なき植民地」から「代替としての植民地」へ
――コルシカの外生的社会変動と危機意識の芽生え 49
近代におけるコルシカの周縁化の状況――「植民化なき植民地」 49
一九六〇年代の外生的社会変動と危機意識の芽生え――「代替としての植民地」 51
3 コルシカの地域主義の展開と運動の「地域化」 52
六〇年代前半の諸運動 52
コルシカにおける「地域化」の試みとその結末 56
4 「地域」の意識化をめざす運動としての地域主義 59
第3章 コルシカにおける共和主義の受容と拒絶――近代からコルシカ民族主義と政治階層「クラン」による支配
63
1 クライエンテリズムとしてのクラン 63
「クラン」の象徴的互酬関係 65
「クラン」とフランス共和国 66
2 コルシカ民族主義 69
象徴的な地中海島嶼地域の民族主義 69
民族主義の複合性――地域主義、自治主義、分離主義の交錯 70
共和主義の拒絶としてのコルシカ民族主義 74
3 クランと民族主義 77
アレリア事件と自治主義運動のゆきづまり 78
第4章 「コルシカ人」とメディア 83
1 メディアについて――フランスにおけるその歴史的含意 84
メディアと「象徴的権力」 85
2 ロマン主義以前のコルシカとそのイメージ 86
コルシカの伝統的文化社会 86
フランス併合期から復古王政期まで 88
3 ロマン主義文学とコルシカ 89
メリメとコルシカ――『マテオ・ファルコーネ』を事例として 89
デュマとコルシカ――『モンテ・クリスト伯』を事例として 90
4 二〇世紀のコルシカとジャーナリズム 93
戦後のコルシカの現状について――地域主義・自治主義・分離主義 95
フランス対コルシカの図式を作り出すフランスのメディア 96
第2部 単一性と多元性のはざまで――欧州統合時代のフランス共和国とコルシカ
第5章 ミッテラン地方分権政策とコルシカ
――コルシカ州議会の設置(一九八二年)と一九八〇年代におけるコルシカ社会の変動
105
1 ミッテラン社会党政権の地方分権改革 105
「県知事」職とその後見権の廃止 105
州の新設 106
2 コルシカ州および議会の特殊性 108
3 民族主義とクランの対応 110
議会参加を巡る自治主義と分離主義の対立 110
議会内における勢力分布――民族主義とクランとの関係 111
4 機能不全に陥った州議会とコルシカ社会の混乱 114
フランス政府と分離主義勢力との対決 114/コルシカ議会および州の機能不全 115
5 八〇年代のコルシカ語学校教育 116
6 文化・創作・芸術活動――「ポリフォニー」について 118
音楽調査と伝統音楽 119
伝統音楽の再生――「ポリフォニー」の誕生 120
第6章 一九九〇年代のコルシカ
――「コルシカ人民」をめぐる共和主義論争と大幅な制度改革、コルシカ民族主義運動の瓦解
123
1 否定された「コルシカ人民」と承認された特別地位 124
フランスの「平等」、「不可分性」に反する「コルシカ人民」概念 124
行政的地位の改革――コルシカ独自の地方公共団体 126
2 コルシカ領域共同体に加えられた権限 128
3 コルシカ議会の改革――審議権と執行権の分離 130
コルシカ地域議会 130
執行評議会 132
コルシカ地域議会と執行評議会との関係 133
4 九〇年代の民族主義の分裂と内部抗争 134
5 コルシカの政治社会と暴力 138
第7章 現代フランスにおける言語問題――地域語とフランス共和国 143
はじめに 143
1 「地域語」および欧州地域少数言語憲章について 144
「地域語」概念の形成とディクソンヌ法 144
地域語の現状と効用 146/欧州地域少数言語憲章とは何か 148
2 マーストリヒト条約締結以降のフランス共和国とフランス語・地域語の関係 151
憲法改正(一九九二年)からトゥーボン法の制定(一九九四年)まで
――フランス語・フランス文化の防衛論 152
「地域主義」の再燃とフランス政府の対応――ジュッペ政権期(一九九五〜九七年)を中心に 154
3 ジョスパン社会党政権下の地域語政策 157
地域語に前向きなジョスパン首相とペリー地域語調査団の結成 157
ポワニャン報告書の作成 158
4 欧州地域少数言語憲章の署名と憲法院の違憲判決 160
シラク大統領の翻意――主権主義派の台頭とフランス政界の激動 161
憲法院判決に見られる共同体原理の否定――フランス型統合理念の性質 164
変容を迫られる「共和制モデル」 165
第8章 九〇年代後半のコルシカ語の復権と「併用公用語」論――併用公用語と多言語主義、共和主義との関係
169
1 リセ・コレージュにおけるコルシカ語教育の現状 170
週三時間の「コルシカ語・コルシカ文化」科目の拡充 170
二言語学級の開始 171
「コルシカ文化」科目について 173
「地中海学科」の開設 174
2 小学校および幼稚園教育――「二言語学級」と「滞在センター」の開設 175
3 フランス語とコルシカ語の「併用公用語」論とその背景 178
併用公用語とは何か 180
併用公用語論と学校教育――二言語の同時間制 181
「併用公用語」論におけるメディア 183
その他の領域 186
4 併用公用語と多言語主義との差異 187
5 併用公用語とフランス共和主義 190
第9章 コルシカ制度改革と共和主義論争 195
はじめに――研究の動向と問題の所在 195
1 フランス共和主義と「共和制モデル」 197
2 コルシカ改革の背景――コルシカにおける民族主義・共和主義の変容と、コルシカ知事がからむ事件 199
コルシカにおける民族主義と共和主義の弱体化と社会混乱 199
二人のコルシカ知事が絡む事件とその波紋 201
フランス人の「コルシカ嫌い」の構造 201
3 島内の新たな対立――自治主義か共和主義か 204
4 自治主義に近い政府案 207
コルシカ語の義務教育について 208
コルシカ議会への立法権付与 209
5 コルシカ制度改革をめぐる共和主義論争 210
共和主義対共同体主義という図式 210
中道改革派(リベロ)勢力と共和主義勢力との対立――フランスの多元化か単一性の堅持か 212
立法権付与をめぐる諸勢力の見解 215
きわめて限定的なコルシカの立法権 216
第10章 統合ヨーロッパとフランス共和国、コルシカ 221
1 コルシカ改革法に対する憲法院判決 222
部分的立法措置は「違憲」、行政命令権は「合憲」 222
コルシカ語の小学校・幼稚園での正課教育は合憲 223
コルシカ領域共同体の特別権限、特別地位、フランス本土との待遇の違いも合憲 223
2 ヨーロッパ統合と、国民国家――地域間関係の変容 224
国民国家を飛び越えたEU――地域間関係の構築 225
越境的地域間交流や共同体・連合組織の形成 226
地域の自治権拡大、国民国家の分権化・連邦化 226
3 ヨーロッパと国民国家に対する島嶼地域の「自治」 230
4 コルシカとEU 233
「フリーゾーン(非課税地帯)」設置に対するEUの懸念 234
「島嶼の特殊性」か「一人当たり産業総粗生産額」か 235
5 IMEDOC(西地中海島嶼地域パートナーシップ)の形成 236
6 憲法院判決とコルシカの「国家離れ」 238
あとがき 241
初出一覧
コルシカ年表
注釈 |