ことばとアイデンティティ
ことばの選択と使用を通して見る現代人の自分探し

[編著者]小野原信善大原始子

多文化・多言語社会において、人々はどのようにして、「ことば」を選択し、使用しているのか。それは、人々にとってなにを意味するのか。フィリピン、インド、シンガポール、アメリカ、ニュージーランド、日本を例に、「ことば」の選択による、さまざまなアイデンティティ表出のあり様から、現代人の「自分探し」を読み解く。

定価=本体 2,300円+税
2004年12月15日/四六判並製/208頁/ISBN978-4-88303-145-0


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[目次]

はじめに 小野原信善  3

1章 アイデンティティ試論――フィリピンの言語意識調査から 15
小野原信善

0.はじめに 15
1.被験者・研究目的・研究方法 16
 1.1.被験者 16
 1.2.研究目的 17
 1.3.研究方法 17
2.アイデンティティの捉え方 18
 2.1.アイデンティティの中心概念 18
3.言語アイデンティティ 25
 3.1.言語のアイデンティティ機能 25
 3.2.フィリピンの言語使用に見る階層性と言語アイデンティティ 27
4.アンケート調査結果と分析 30
 4.1.仮説設定 30
 4.2.結果と分析 31
5.まとめ 48
注 49
参考文献 50

2章 フィリピン多言語社会での言語とアイデンティティ――セブアノ多言語話者の事例から 53
小張順弘

0.はじめに 53
1.民族とは 55
 1.1.民族意識の形成 その難しさ 55
 1.2.「われら」と「かれら」の意識変遷 56
2.セブアノ多言語話者の事例から 59
 2.1.ビサヤ人とは 60
 2.2.セブアノ人とは 61
 2.3.もう一つの「われら」と「かれら」 63
 2.4.セブアノ多言語話者の言語使用 64
 3.言語問題の裏にあるイデオロギーの対立 66
4.おわりに 69
注 70

3章 インド人とはだれなのか?――言語とアイデンティティ 77
鈴木義里

0.はじめに 77
1.重層的なアイデンティティ 78
 1.1.地域アイデンティティ 78
 1.2.宗教アイデンティティ 81
 1.3.国民というアイデンティティ 82
 1.4.言語アイデンティティ 85
2.言語とアイデンティティ 87
 2.1.インドの言語状況 87
 2.2.収斂と排除 90
 2.3.母語への執着/母語への訣別 91
3.インド人の明日―在日インド人の姿から 93
注 95

4章 アイデンティティの多層性と言語の選択・切り替え――「集団」、「個」としてのシンガポール人 99
大原始子

1.多言語・多民族社会におけるアイデンティティ 99
2.言語の象徴的機能・実用的機能とアイデンティティ―国語、公用語、 国家(共通)語 100
3.シンガポール英語が持つアイデンティティの象徴的機能 102
 3.1.シンガポール英語の構造 102
 3.2.標準シンガポール英語と口語シンガポール英語の使い分け 103
4.「コード・スイッチング」の類型化とアイデンティティの表出 111
 4.1.類型〔1〕:多言語社会における基礎的ストラテジーとアイデンティティ 113
 4.2.類型〔2〕:ポライトネス・ストラテジーとアイデンティティ 115
 4.3.類型〔3〕:多言語社会におけるメタプラグマティック・ストラテジーとアイデンティティ 119
5.まとめ―アイデンティティの多層性という仮説 122
注 123
参考文献 125
参考資料 126

5章 北アメリカ北西海岸先住民にみる――言語とアイデンティティ 127
渡辺己

0.はじめに 127
1.言語の抹殺とアイデンティティ 129
2.世代間の文化の継承と言語 131
3.名前とアイデンティティ 135
4.北アメリカにおける言語の抹殺と民族同化政策 137
5.消滅の危機に瀕する言語 141
6.言語復興とアイデンティティ 143
7.おわりに 145
注 147

6章 ニュージーランドにおけることばとアイデンティティ――言語の選択と使用を通してみる現代人の帰属意識 151
P. Batten(小野原信善 監訳)

0.はじめに 151
1.接触の歴史 152
2.国民名称 153
 2.1.NZ人、Kiwis 153
 2.2.Pakehaパラダイム 154
 2.3.“マオリ”とtangata whenua:土地の人 156
3.言語 157
 3.1.NZ英語の中のマオリ語 157
 3.2.Kia Ora事件 159
 3.3.マオリ語と文化の再活性化 159
4.言葉とアイデンティティ 162
 4.1.NZで現在見られるマオリの語彙:言語とアイデンティティ(自己同一性)への影響 162
5.NZメディアで使われているマオリ語の語彙 163
6.語彙分類毎の特徴 167
7.具体例 167
8.メディアのマオリ語発音矯正の動き 168
9.国宝としてのマオリ語および地名の変化 170
10.コメント 171
参考文献 174

7章 在住フィリピン人女性の新しい言語アイデンティティ 177
河原俊昭

0.はじめに 177
1.金沢在住のフィリピン人の言語 178
 1.1.一般的な概要 178
 1.2.国際結婚した夫婦間の言語 180
 1.3.子供の言語アイデンティティの発達 181
 1.4.二つの言語文化の持ち主となるためには 183
 1.5.フィリピン人のコミュニティと母語保持 184
2.在住のフィリピン人たちが用いる言語 186
 2.1.言語の持つ階層性 186
 2.2.日本語 187
 2.3.日本語の書き言葉の問題 187
 2.4.英語力に対するプライド 188
 2.5.タガログ語と地方語 189
3.在住フィリピン人の流動性 190
 3.1.流動的な社会と静止的な社会 190
 3.2.フィリピン人女性の流動性 191
4.実用機能と自己確認機能 193
 4.1.二つの機能 193
 4.2.フィリピン人の自己確認 194
 4.3.在住のフィリピン人のイメージ 195
5.アイデンティティの分裂 196
 5.1.根無し草としてのアイデンティティ 196
 5.2.新しいアイデンティティの誕生の可能性 197
 5.3.分裂したアイデンティティと多元的なアイデンティティ 198
6. まとめ 199
注 200
参考文献 200

あとがき 201 大原始子
執筆者一覧 204


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