日本語学は科学か
佐久間鼎とその時代

[著者]安田敏朗

「伝統的な国語学」から、「科学的な国語学」=「日本語学」へ?!
日本語学は、どのような経緯で、または理論で、あるいはどのような時代背景のもとで、分析すべき「日本語」を獲得していったのか。国語学、日本語学にとって、科学性とはいかなる意味を持っていたのか。

定価=本体 2,900円+税
2004年9月15日/四六判並製/348頁/ISBN4-88303-149-8

 


イメージを拡大

[目次]

序章 日本語学の流行のなかで  9
 1 問題の前提  9
 2 日本語学の「土台」  13
 3 本書の構成  21

1章「日本帝国大学言語学」の射程――上田万年から金田一京助へ  25
 1 アイヌ語学の浮上  28
     1 比較言語学の政治性  28
     2 比較言語学の科学性  32
     3 比較言語学への懐疑─歴史言語学への傾斜  35
     4 科学としてのアイヌ語学  38
 2 「日本帝国大学言語学」の展開――語族から類型へ  42
     1 明治末年の金田一京助─―『新言語学』翻訳まで  42
     2 言語類型博物館としての帝国日本―─『新言語学』「自序」と拓殖博覧会  45
 3 歴史言語学の限界と記述言語学、そして佐久間鼎  54

2章 一九三〇年代言語研究の展開――『国語科学講座』をめぐって  59
 1 国語学への疑義――学の内的状況の変化  59
 2 国語の論理から日本語の論理へ――学の外的状況の変化  62
 3 『国語科学講座』の構成  66
 4 流行としての科学  73
     1 「国語科学」ということば――大衆性・郷土性・『教育・国語教育』  73
     2 唯物論という科学  80
 5 『国語科学講座』にみるあらたな潮流  81
     1 異分野の研究者の参入――その特徴と限界  81
     2 言語地理学と国語方言学  86
     3 言語社会学  92
     4 音声学  105
     5 国語学から日本語学へ  112

3章 佐久間鼎の一九一〇年代─―アクセント研究と現代音声日本語の「発見」  115
 1 アクセント研究と「科学的国語学」  115
 2 「国語統一」と方言─―科学の対象として選別される標準語  120
 3 アクセント統一と話者の心理  129
 4 口語の位置  135
 5 脱階級としての口語  139

4章 佐久間鼎の一九三〇年代 (1)─―ゲシュタルトとしての口語  145
 1 「体制的全体」としての言語研究─―記述言語学をこえて  145
 2 「発話の現前」─―事理相即の言語学へ  151
 3 「現代日本語」と「語法の科学」  154
 4 「現代日本語」と「東京語」、そしてゲシュタルトの限界  159

5章 佐久間鼎の一九三〇年代 (2)─―健康化する日本語  165
 1 総動員体制と健康  165
 2 現代音声日本語と健康――体制的全体の愛護と口語・生活語  167
 3 「健康な日本語」から排除されるもの  177
     1 敬語  180
     2 方言――「東京語=標準語」の理論  182
     3 手話  197
 4 かなづかいと翻訳文体  202

6章 佐久間鼎の一九四〇年代前半─―日本語学の完成  209
 1 実践としての音声学  209
 2 集大成としての『日本語の特質』─―無根拠な文化論批判・『国語文化講座』・国語学とのすみわけ  214
 3 日本語の優生学・「大東亜共通語としての日本語」  223
 4 現代音声日本語と古代  230
 5 国語学からの反応  238

7章 現代音声日本語とメディア─―ラジオと教科書  247
 1 ラジオと現代音声日本語  247
 2 国民科国語と現代音声日本語  255

8章 佐久間鼎の敗戦後  269
 1 「国語表記のローマ字化─O式ラテン字の提唱」  270
 2 「日本語の本領とその改善の方途」  273
 3 二論文のゆくえ─―『日本語のかなめ』  278

終章 科学・学問、そして「学問」  281


HOME