西洋音楽思想の近代
西洋近代音楽思想の研究

[著者]三浦信一郎

芸術音楽史のドキュメントとしての西洋音楽思想。20世紀の芸術音楽およびそれを準備した18・19世紀の芸術音楽の動向を、いわゆる近代の「モダニズム」の意識のもとに展開した現象と見なし、この現象を改めて「芸術音楽における近代」として音楽思想史的に問い直す。

定価=本体 4,200円+税
2005年5月31日/A5判上製/370頁/ ISBN978-4-88303-162-7


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[目次]
  
まえがき 011
  序 情緒―描出から感情―表現へ 019
     はじめに 019
     1 「情緒―描出」から「感情―表現」への転換 022
     2 「表現の原理」=「疾風怒濤」期の音楽 024
     3 近代芸術音楽への転換期 025
     おわりに 028

第1部 近代芸術音楽思想の展開 031
   第1章 音楽における自然 032
     はじめに 032
     1 芸術的形成の理想としての自然 033
     2 人間精神の所産としての音楽 037
     3 人間の自然な音の感受性 039
     4 「音楽における自然」への転換期以前 044
     5 情緒―描出から感情―表現へ 049
     6 「音楽における自然」の発見=「疾風怒濤」期の音楽 051
     7 近代芸術音楽の黄金時代へ 057
     おわりに 模索すべき(?)「音楽における自然」 058
  第2章 ドイツ観念論と音楽 066
     はじめに 066
     1 芸術音楽の黄金時代――ウィーン古典派 067
     2 器楽の形而上学的世界――ドイツ・ロマン主義の音楽思想 070
     3 ドイツ観念論の音楽哲学 073
     おわりに 古典主義的音楽哲学の完成――近代芸術音楽の哲学的定式化 088
  第3章 シェリングの音楽哲学 093
     はじめに 093
     1 同一哲学としての『芸術哲学』における芸術の規定 096
     2 同一哲学の体系に基づくポテンツ化理論による全芸術世界 099
     3 音楽の構成―リズム、リズムのモード化、メロディ、ハーモニー 104
     4 音楽の対照的な位置づけ 109
     おわりに 112
  第4章 ヘーゲルの音楽哲学とベートーヴェン 116
     はじめに 116
     1 「ロッシーニ陶酔」とヘーゲルの音楽趣味 117
     2 器楽の時代到来とロマン主義者の器楽崇拝 120
     3 ヘーゲルの器楽理論とその問題点 124
     4 ヘーゲルの同時代音楽批判とベートーヴェン 128
     5 暗黙のベートーヴェン批判? 130
     6 雄弁なる沈黙 134

第2部 近代芸術音楽展開の思想 139
  第1章 絶対音楽の美学 140
     はじめに 140
     1 一つの統一体としての古典派とロマン派の音楽――器楽の時代 142
     2 絶対音楽という概念――その出自と展開 144
     3 絶対音楽のルーツとしての交響曲の理論――「器楽の形而上学」 148
     4 器楽の内在的論理による世界――ベートーヴェンの第五交響曲 154
     5 音楽的ドラマの世界としての絶対音楽 158
     おわりに 162
  第2章 ドラマ的交響曲像への転換 168
     はじめに 168
     1 モデルとしてのショーペンハウアーの芸術哲学 171
     2 ショーペンハウアーからの影響と自己流解釈 173
     3 ショーペンハウアーの器楽対象の音楽論とそれへの矛盾 179
     4 ドラマの概念の問題 182
     おわりに ドラマ的交響曲像への転換 186
  第3章 標題音楽について 190
     1 新しい標題音楽としての交響詩 190
     2 ワーグナーの論文「F. リストの交響詩について」――ドラマ的音楽論 194
     3 絶対音楽と標題音楽の問題 201
     4 ワーグナーのショーペンハウアー受容 204
     おわりに 混迷の中の標題音楽論 207
   第4章 ベートーヴェン神話の形成と支配 212
     はじめに 212
     1 悲劇的な英雄音楽家の理想像の形成 213
     2 ベートーヴェンの音楽の美学的意義づけ 219
     3 ベートーヴェン神話の完成 226
     4 ドイツ・ロマン主義の求めた「新しい神話」のアナロゴンとしての 「ベートーヴェン神話」 233
     おわりに 「ベートーヴェン神話」の喪失――現代芸術音楽の迷走 236

第3部 近代音楽学の成立 241
  第1章 近代音楽学の成立をめぐるドイツ音楽思想の展開 242
     はじめに 242
     1 近代音楽学の本格的な成立 244
     2 ドイツの諸大学における音楽関係の講義の変遷 247
     3 十九世紀のドイツにおける音楽思想の展開 253
     4 実証主義の音楽理論 260
     5 二十世紀への道 265
     おわりに 267
  第2章 アードラーの「音楽学」の体系法について 271
     1 近代音楽学の成立 271
     2 音楽学の体系化構想 275
     3 音楽学の体系の有する諸問題 280
     おわりに 283
  第3章 音楽学と芸術学 286
     1 自立の主張――芸術学と音楽学の成立 286
     2 芸術学 対 音楽学――体系的理論的側面から 292
     3 芸術学 対 音楽学――歴史的研究の側面から 299
     おわりに 305

第4部 音楽における近代と現代 309
  第1章 二十世紀モダニズムの音楽論 310
     1 モダニズムの「新音楽」探求の時代 310
     2 ブゾーニのモダニズムの「新音楽」論 313
     おわりに 二十世紀モダニズムの音楽意識のドキュメント 318
  第2章 モダニズムの中のアンチ・モダニズム 320
     1 「実用音楽」=厄介な概念 320
     2 「新音楽」への危機感 321
     3 「実用音楽」=アマチュア・共同体の音楽 323
     4 一九二〇年代以降の音楽の動向 326
     おわりに モダニズムの中のアンチ・モダニズム 328
  第3章 音楽における近代と現代 330
     1 現代の音楽事情 330
     2 伝統の変革(I)――現代音楽の出発点〈第一次前衛〉 334
     3 伝統の変革(II)――現代音楽の出発点〈第二次前衛〉 342
     4 現代音楽〔近代音楽〕の系譜 349
     5 音楽における近代と現代 360

  あとがき 366
  初出一覧 369


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