C. D.フリードリヒ
《画家のアトリエからの眺め》―― 視覚と思考の近代

[著者]仲間裕子

彼のまなざしを透過し、緻密に構成された「風景」は近代の世界像となる────
ドイツ・ロマン主義を代表する画家、C.D.フリードリヒ(1774-1840)。 彼の特異な風景画は、これまで神秘性、宗教性、内面性という言葉で理解されてきた。だがそこには20世紀美術を先取りする視覚体験の実験、そして危機の時代におけるアンガージュマンが内在していた――。
ボイス、リヒター、バゼリッツ、キーファーら、現代ドイツの芸術家にとって、 いまなお重要なインスピレーションの源泉であり続けている フリードリヒの風景画の生成と受容を論じる。

定価=本体 3,200円+税
2007年3月28日/A5判上製/298頁/ISBN978-4-88303-188-7


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[目次]

序章 9

第一部 「独自」のロマン主義 

第一章 《画家のアトリエからの眺め》 17
  1 画家のアトリエ 21
  2 「右窓」と「左窓」からの風景 26
  3 演出された牧歌的雰囲気 34
  4 フラグメントの機能 39
  5 「窓」の物語の生成と「四季の循環」 47
  6 視覚性と作品 64

第二章 フリードリヒの「抽象」 69
  1 視覚と構成の風景画 76
  2 《大狩猟場》 88

第三章 リューゲン島の風景 自然、主体をめぐる言説 99
  1 《リューゲン島の白亜岩》 107
  2 リューゲン島と崇高 111
  3 《海辺の修道士》、作品と批評 116

第四章 北方の風景 トポグラフィーとアイデンティティ 125
  1 《氷海》と《ヴァッツマン山》 127
  2 フリードリヒの政治性≠ニその受容 143

第五章 観照の美学から新しい美学へ 151
  1 透かし絵 151
  2 画家の制作風景 162

第二部 再発見と受容

第六章 「ドイツ一〇〇年展」   フリードリヒの再発見≠ニナショナル・ギャラリー(ベルリン) 167
  1 ナショナリズムの表象装置としてのナショナル・ギャラリー 169
  2 ナショナル・ギャラリーの「儀式」的演出 171
  3 フーゴー・フォン・チューディの改革 175
  4 「ドイツの一〇〇年展」 179
  5 「一〇〇年展」におけるフリードリヒの再発見 186
  6 「一〇〇年展」以降のフリードリヒ受容の転換 193

第七章 メランコリーとロマン的イロニー   フリードリヒから今日のドイツ美術へ 195
  1 ドイツ美術におけるメランコリーのアクテュアリティ 197
  2 フリードリヒのメランコリー 201
  3 連邦議会議事堂の《フリードリヒのメランコリー》 207
  4 アンゼルム・キーファーの歴史的回顧 211
  5 ゲルハルト・リヒターの倒壊的≠ネ美的ロマン主義 219

あとがき 227
註 231

図版リスト XV
年表 XIII
主要参考文献 VI
人名索引 I


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