東アジア現代史のなかの韓国華僑
冷戦体制と「祖国」意識

[著者]王恩美

韓国華僑はいかにして中華民国を「祖国」として統合されたのか。そして、中華民国の台湾化が進むなかで「祖国」意識を崩壊させていったのかを、朝鮮南北分断・中国分裂という戦後東アジアの冷戦構造とその崩壊、韓国・中華民国関係史と華僑政策の変遷史のなかであきらかにする。

定価=本体 6,300円+税
2008年5月25日/A5判上製/600頁/ISBN978-4-88303-203-7

 


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[目次]

序章
   1 研究目的 20
   2 韓国華僑研究史 23
      (1)台湾における韓国華僑研究 24
      (2)韓国における韓国華僑研究 26
      (3)中国における韓国華僑研究 30
      (4)日本における韓国華僑研究 31
   3 本書の構成と資料の運用・紹介 35
   4 用語説明 38

第1章 一九四五年以前における華僑社会
 第1節 朝鮮半島への移住(一八八二年〜一八九四年) 44

   1 清の支援と華僑社会の形成 44
   2 商業ネットワークと商業の担い手 47
      (1)東アジア貿易ネットワークと華僑貿易商人 47
      (2)朝鮮内陸販売ネットワークと行商 52
   3 多様な華僑の出身地 54
 第2節 単身出稼ぎ型の華僑社会(一八九五年〜一九一〇年代) 56
   1 商業ネットワークの変化 56
      (1) 貿易ネットワークの変化 57
      (2)「内陸販売ネットワーク」の変化 62
   2 職業の多様化と小商人の登場 63
   3 出身地の単一化 65
   4 単身出稼ぎ型社会 66
 第3節 定住型の華僑社会へ(一九二〇年代〜一九四五年) 67
   1 小商人中心の華僑社会の安定化 67
   2 女性人口の増加と定住化 72
   3 華僑商業の衰退 74
   4 人口の流出・再流入と労働者の急増 78
 第4節 一九四五年以前における華僑社会の特徴と「中国人」意識 82
   1 「中国人」意識の形成 83
      (1)移民の合法化と「海外公民」 83
      (2)朝鮮在駐の本国政府機関との関係 85
      (3)中華商会と華僑社会のネットワーク 91
      (4)華僑教育と中国文化の維持 93
      (5)高い流動性と中国文化の吸収 96
      (6)山東省という統一された故郷 97
   2 「中国人」意識の明確化――華僑に対する否定的イメージと排華事件 98
      (1)華僑に対する敵対意識の形成 98
      (2)排華事件 102

第2章 東アジアの冷戦体制の形成と国家の分裂
 第1節 朝鮮半島の分断 107
   1 朝鮮半島を巡る国際情勢と朝鮮半島の分断 107
   2 米軍政庁と韓国華僑との政治的関係 110
      (1)華僑に対するアメリカの基本方針 111
      (2)朝鮮南部における中国人の引き揚げ 112
      (3)中国人の保護 114
   3 米軍政庁と韓国華僑との経済的関係 117
      (1)米軍政庁と対中貿易 117
      (2)華僑経済の繁栄期 120
  第2節 中華民国政府による統合と韓国華僑の合流 125
   1 国民大会と韓国華僑 126
      (1)国民大会開催までの過程とその歴史的意義 126
      (2)韓国華僑の国民大会への参加 129
   2 韓国華僑からの報告 130
      (1)周慎九の陳情書 131
      (2)王興西の意見書 132
   3 自治区組織の形成 137
   4 中華民国政府中心の華僑社会へ 140
  第3節 朝鮮戦争と韓国華僑 142
   1 中国の分裂と朝鮮戦争 142
   2 戦時期における中華民国大使館の動き 144
   3 戦時期における韓国華僑社会 146
      (1)共産主義組織の形成と共産主義容疑による逮捕 147
      (2)北朝鮮における反共組織と北朝鮮華僑の韓国への移住 152
      (3)釜山への避難 154
   4 韓国華僑の参戦 159
      (1)朝鮮戦争における中華民国の派兵構想の挫折 159
      (2)心理戦への参戦 160
      (3)戦闘部隊としての参戦 162
      (4)情報部隊としての参戦 164
   5 朝鮮戦争の影響 167
      (1)韓国華僑の反共の立場の確立 167
      (2)中華民国政府との関係の強化と華僑組織の一元化 169
 第4節 東アジアにおける冷戦体制と韓国華僑の「祖国」意識 171
   1 中国・朝鮮半島の分裂体制の固定化と反共体制の確立 171
   2 国民意識の自覚と「祖国」意識 173

第3章 韓国の制度的差別と韓国華僑
  第1節 排他的制度のはじまり 177
    1 韓国政府樹立以前における華僑と韓国人との関係 177
      (1)政治的関係 178
      (2)経済的関係 180
   2 「国籍法」による国民からの排除 182
      (1)「血統」による国民範囲の確定 182
      (2)帰化者への制限と帰化の条件 189
   3 「外国人の入国出国と登録に関する法律」による外国人への管理と監視 194
      (1)入国外国人に対する管理と監視 195
      (2)居住外国人に対する管理と監視 199
   4 経済的規制と華僑の経済的勢力の衰退 205
      (1)警戒から規制へ 206
      (2)輸出入政策と為替政策 207
      (3)関税政策 210
  第2節 強まる法的規制と排除 213
   1 外国人土地法 214
   2 チャイナタウンの消滅 220
      (1)一九六〇年代のチャイナタウン 220
      (2)チャイナタウンの消滅過程 221
   3 出入国管理法 225
   4 国民認定の装置――住民登録法 231
 第3節 華僑の生きる道 234
   1 華僑貿易の没落 235
   2 飲食業の険しい道 240
   3 職業制限 245
  第4節 韓国人と華僑の境界線及び韓国華僑の「祖国」意識 247
   1 韓国人と華僑の境界線 247
   2 国民意識の明確化と「祖国」意識 249

第4章 中華民国と韓国華僑の相互関係
 第1節 中華民国政府の対韓国華僑政策 252
   1 中華民国政府の華僑政策 253
   2 中華民国駐韓大使館の対韓国華僑政策 257
   3 華僑団体に対する管理 258
      (1)華僑協会 259
      (2)「中華飲食業協会」と指導の一元化 268
      (3)「漢城公産処理委員会」とその他の団体 270
   4 華僑学校に対する管理 271
      (1)自治区(華僑協会)と華僑学校の普及 271
      (2)華僑学校に対する管理 274
   5 中国国民党駐韓直属支部 275
      (1)「中国国民党駐韓直属支部」の設置 276
      (2)「中国国民党駐韓直属支部」の役割 277
  第2節 韓国華僑社会における中華民国の必要性 278
   1 中華民国政府の保護と支援の必要性 279
      (1)韓国華僑の権益の保護 279
      (2)華僑学校に対する支援 283
   2 調停者と管理者の必要性 288
      (1)「韓国華僑協会総会」と「中華飲食業協会」の紛争 288
      (2)教師の生徒殴打・公金横領事件と「漢城華僑中学」の改革問題 290
   3 中華民国の必要性とピラミッド構造 291
  第3節 中華民国の政治動員と韓国華僑の積極的な呼応 292
   1 中華民国への求心力と華僑社会の愛国活動 293
      (1)「韓国華僑青年反共救国総会」の愛国活動 293
      (2)帰国観光 296
   2 華僑社会における愛国募金運動の展開 301
   3 中華民国政府と韓国華僑社会の協力関係 304
  第4節 中華民国の国民意識の強化と「祖国」意識 306
   1 韓国華僑社会の中心地――中華民国 306
   2 中華民国の国民意識の強化 310

第5章  韓国・中華民国の反共共同体と韓国華僑
  第1節 韓国における反共体制と反共生活 315
    1 反共イデオロギーの形成過程 315
      (1)朝鮮戦争以前 315
      (2)朝鮮戦争以後 316
      (3)朴正煕政権以降 318
   2 韓国華僑にとって反共国家の韓国で生きること 321
      (1)「在韓華僑孫承億の強制退去命令取消の請求訴訟事件」 321
      (2)生活場面における反共イデオロギー 324
   3 中華人民共和国勢力の封鎖 326
  第2節 中華民国の反共体制と反共イデオロギーの内面化 337
   1 中華民国における反共体制――韓国との比較の視点から 327
   2 華僑学校における反共教育 332
      (1)反共教育の目標 332
      (2)反共教育の内容 334
   3 華僑新聞における反共イデオロギー宣伝 341
      (1)二項対立の対比と真実性の強調 342
      (2)韓国華僑社会を対象にした反共イデオロギー宣伝 346
   4 韓国より早い華僑社会の反共イデオロギーの日常化 348
  第3節 韓国・中華民国の反共外交と韓国華僑 350
   1 韓国と中華民国の反共外交 351
      (1)反共外交のはじまり―― 一九五〇年代 351
      (2)反共外交の頂点―― 一九六〇年代 358
      (3)反共外交の衰退―― 一九七〇年代 362
      (4)名目だけの反共外交―― 一九八〇年代 367
   2 反共共同体の強調と韓国華僑の反共活動 372
      (1)両国の政府関係者による反共共同体の強調 372
      (2)韓国華僑の反共活動 376
   3 韓国人との反共共同体の形成と経済的犠牲 385
  第4節 「反共価値観」と「祖国」意識 386
   1 反共意識の確立から「反共価値観」への発展 387
   2 韓国華僑の反共の信念と「祖国」意識 389

第6章  韓国華僑の抱く「祖国」と「祖国」意識の崩壊
  第1節 韓国華僑の抱く「祖国」としての中華民国のイメージ 395
   1 教科書における中華民国のイメージ 395
      (1)一つの中国――台湾大陸一体論 396
      (2)指導者・国民党・国家の三位一体 398
   2 華僑新聞における中華民国のイメージ 400
   3 中華民国の国家イメージと韓国華僑 403
  第2節 「祖国」に対する強い「愛国」感情 405
   1 蒋介石の死去時の「忠誠心」の表出 405
   2 アメリカとの国交断絶時の「愛国心」の表出 409
   3 韓国との国交断絶時の「愛国心」の表出 413
  第3節 韓国華僑の支持基盤 417
   1 一九七〇年代以前の支持基盤 418
      (1)中国全土を想定した国家体制 418
      (2)華僑の国内政治参加への保障 420
   2 一九七〇年代における中華民国の変化と韓国華僑の支持基盤 421
      (1)中華民国の台湾化のスタート 421
      (2)中華民国の民主化 423
      (3)一九七〇年代における韓国華僑の中華民国の支持基盤 426
   3 一九九二年韓国との国交断絶の際の韓国華僑の支持基盤 431
      (1)韓国華僑社会内部の冷戦体制の現存 431
      (2)改善されてない韓国の差別構造 433
      (3)中国全土を想定した国家体制の現存 433
  第4節 韓国華僑の「祖国」意識の崩壊 434
   1 「祖国」意識崩壊の契機―― 二〇〇〇年台湾総統選挙 434
   2 「祖国」意識崩壊の背景―― 一九九〇年代以降の中華民国の台湾化 438
      (1)台湾のみを想定した国家体制への移行完了 439
      (2)華僑参政権の縮小と僑務の台湾化 440
   3 見捨てられない李登輝に対する希望―― 一九九六年以降の韓国華僑の支持基盤 443

終章 結論
   1 段階的に強化され、形成された「祖国」意識 448
   2 中華民国を「祖国」として選択せざるをえない構造 449
   3 「幻想」と「現実」の「祖国」の二重構造 450

附章 二〇〇〇年以後の韓国華僑社会の変化
 
第1節 韓国社会の差別構造の改善と残された課題 455
   1 国籍法の改善 455
   2 外国人土地法の改善 458
   3 永住権と地方参政権の導入 459
   4 残されている差別構造 462
  第2節 中華人民共和国派の誕生と中華民国の求心力の急速な低下 465
   1 「漢城中国僑民協会」の誕生 465
   2 「漢城華僑協会」と反共系列の団体の変化 467
 第3節 韓国華僑のアイデンティティの変化 469
   1 「中華民国人」から「中国人」へ――中・高年世代のアイデンティティの変化 470
   2 韓国・台湾・中国を彷徨うアイデンティティ――若い世代の韓国華僑 474

     あとがき 479
     註 026
     付録 羅亜通氏へのアンケート調査 020
     参考文献 008
     事項索引 003
     人名索引 001


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