アイデンティティの危機
アルザスの運命

[著者]ウージェーヌ・フィリップス
[訳者]宇京ョ三

宿命に対峙するアルザス――

1世紀足らずの間に5度も国籍を変更させられた独仏国境の地アルザス。
本書は、数奇な宿命に対峙したアルザスにおける戦後の苦難の道をたどり、その言語・文化的独自性を守るべく展開された闘いの歴史、および民族と国家、地域言語をめぐる問題の深層を描き出している。

[書評]
読売新聞書評(2007年10月7日)/評者:櫻井孝頴(第一生命相談役)

本体3500円+税
2007年8月20日/四六判上製/344頁/ISBN978-4-88303-205-1


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[目次]

[日本語版によせて――現代のアルザスのことば] 011
  アルザス方言〔アルザス・ドイツ語〕とフランス語 011 
  フランス語――ドイツ語の二言語教育 012 
  「アルザスの」文化 013

序論問題の核心
  疑念…… 017 
  自己崩壊することなく、同化する…… 019 
  厄介な問題 021
  原註 024

T アルザスのアイデンティティ
  三つの基本的与件 027 
  地理的アイデンティティ 028 
  枠組み 029 
  接点的位置 032 
  歴史的アイデンティティ 032 
  束の間の政治的実体 033 
  歴史的独自性 035 
  フランス世界への統合 037 
  争奪の地 038 
  言語的アイデンティティ 040 
  二つの言語、三つの構成要素 041 
  フランス語 042 
  支配者の言語 043 
  優先言語 045 
  標準ドイツ語 047 
  「ドイツ語」か「標準ドイツ語」か? 048 
  アルザスにおける標準ドイツ語――なぜ、そしていつから? 051 
  「アルザス」方言 055 
  二つの方言 056 
  ことばの混線 061 
  民族主義者の夢想 065 
  誤った単純化 067 
  「アルザス風」の推論 069 
  心理的閉鎖 070 

[言語的次元の真実] 074 
  生きた標準ドイツ語なくして、生きた方言なし 074 
  ある必然――方言の自律性 076 
  アルザス的状況の特殊性 078 
  支配言語の圧力 079

[文化的次元の真実] 082 
  方言なくしてアルザス文化なし 083 
  本質としての文化 083 
  民衆文化 085 
  民衆の創造 086
  アルザス的次元 088

[方言] 090
  アルザスのアイデンティティの基盤 090 
  魂を失うこと…… 093
     アルザス方言詩「きみと同じ人間だ」 099
     原註 100

U 風化
  併合の脅威 111 
  崩壊 115 
  アルザス人のディアスポラ 117 
  公然たる併合 119 
  ナチ党の支配 120 
  強制編入 122 
  帰結 124 
  罪悪感 126 
  失望 130 
  永遠の恐怖 133 
  罪の記憶 135 
  否認 137 
  政治的自主独立主義は不要 139 
  自治主義者の対独協力 139 
  地方主義政治の終焉 143 
  言語的自主独立主義は無用 146

[標準ドイツ語――その追放] 147
  新聞 147 
  学校 151 
  宗教的共同体 154 
  宗教教育におけるフランス語 153 
  二言語使用…… 158 
  守るべき人権 160 
  衰退 161 
  方言―不満 163 
  方言は併合の原因か? 165 
  ことばは戦争の原因か? 168 
  権力欲であり、ことばにあらず 169 
  同化か追放か…… 171 
  方言は「フランスの統一」にとって脅威か? 173 
  方言は分離主義の要因か? 176 
  分離主義的メンタリティは作られたもの…… 177 
  人種主義は同化政策の所産 178 
  故国喪失感 180 
  根なし草にすることとは過去の断絶なり 181 
  根を失った者は人の根も失わせる 182 
  根なし草の者はいないのか? 184 
  疎外 186 
  欲求不満 190
     アルザス方言詩「娘よ、おどれ、おどれ」 194
     原註 195

V 目覚め
  新たな自覚 207 
  脱植民地化のプロセス 209 
  少数者の目覚め 212 
  ヨーロッパで 214 
  古くからの問題 216 
  フランスで 218 
  アルザスで―コンプレックスからの解放 223 
  人心の回復 228 
  大衆の意識化 234 
  ラジオとテレビ 237 
  劇場と寄席 240 
  アルザスの目覚め 242 
  政治論争 243 
  伝統的立場の再確認 244 
  政治路線の修正 248 
  新たな方向 251 
  組合の活動 256 
  自治主義の蘇生 257 
  「アルザスの発議権」 260 
  社会=文化的異議 261 
  庶民のための文化 264 
  闘争言語 266 
  民衆演劇 268 
  失われし時は取り戻せるか? 271 
  大学 272 
  宗教的共同体 273 
  政治当局 278 
  学校 281
     アルザス方言詩「黒い羊」 287
     原註 288 

結論 汝自身になれ!
  ……であるべく願うこと 301
  「アルザス病」 304

原註 309
訳者解説 311
参考文献 i


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