ヴァラッロのサクロ・モンテ
北イタリアの巡礼地の生成と変貌

[著者]大野陽子

「これなるはヴァラッレの山の上の信仰の神秘である」────
北イタリア・ヴァラッロのサクロ・モンテは、15世紀にエルサレム巡礼の代替となるカトリックの「新しい聖地」として造営が開始された。山上に建設された45ほどの礼拝堂には等身大像と壁画によりキリストの受難の場面が再現され、巡礼は黙想しながらそれらを辿る。しかし、エルサレムの再現を目指した当初の計画は、16世紀、宗教改革に対抗するべく「予型論」をもとにした新たなプログラムが導入され、変革が図られていく。
1980年のユネスコ世界遺産登録後も、いまだ日本では知られていない特異な聖地サクロ・モンテの歴史とその変容を初めて詳述する。

定価=本体 7,000円+税
2008年2月29日/A5判上製/606頁+カラー口絵24頁/ISBN978-4-88303-222-8
 


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[目次]
 
はじめに 9

第1章 ヴァラッロのサクロ・モンテの現状と先行研究 15
 第1節 巡礼地の現状と造営略史 15
 第2節 先行研究史 24
 第3節 対抗宗教改革と予型論図像 28

第2章 サクロ・モンテの生成 37
 第1節 サクロ・モンテの創建 37
 第2節 フランシスコ会による初期構想 45
     1 聖地の再現 45
     2 「天上のエルサレム」への道 58
     3 「偉大なる山の劇場」 67

第3章 サクロ・モンテの変貌 87
 第1節 教会財産管理委員会によるサクロ・モンテ再編 87
     1 建築家ガレアッツォ・アレッシによる『信仰の神秘の書』 88
     2 建築家マルティーノ・バッシによるアレッシ案の修正 104
 第2節 ノヴァーラ司祭によるサクロ・モンテ再整備構想 114
     1 ノヴァーラ司教カルロ・バスカペーの関与 114
     2 礼拝堂造営に関する指示 116
     3 バスカペーの指示書にみる山頂部の礼拝堂配置案の変遷 122
     4 山上の理想都市 130

第3章 対抗宗教改革期における北イタリアのサクロ・モンテ 139
 第1節 一六世紀後半におけるヴァラッロのサクロ・モンテの再興 139
     1 カトリック改革 139
     2 対抗宗教改革期の芸術観 144
     3 カルロ・ボッロメーオのサクロ・モンテ巡礼 148
 第2節 対抗宗教改革期のサクロ・モンテ 159
     1 新しいサクロ・モンテの開設 159
          オルタのサクロ・モンテ―アッシジの聖フランチェスコの生涯 160
          クレアのサクロ・モンテ―聖母の生涯 162
          マッセラーノのサクロ・モンテ―聖フランチェスコと聖母マリア 165
          ヴァレーゼのサクロ・モンテ―ロザリオの玄義 165
          アローナのサクロ・モンテ―聖カルロ・ボッロメーオの生涯 167
     2 対抗宗教改革のとりで 170
 第3節 内部装飾の構成の複雑化 173
     1 新しいサクロ・モンテの礼拝堂における内部場面 173
          オルタのサクロ・モンテ 174
          クレアのサクロ・モンテ 184
          ヴァレーゼのサクロ・モンテ 188
   2 ヴァラッロのサクロ・モンテにおける予型論図像 198

第5章 ノヴァーラ司教カルロ・バスカペーによる再整備構想 215
 第1節 トレント公会議の綱領の適用 215
 第2節 巡礼地の再興 230
 第3節 イメージの受容 234
     1 障壁の設置 234
     2 聖なるものと俗なるものの分離 245
     3 聖なるイメージとの距離 249

第6章 第三六礼拝堂〈カルヴァリオへの道〉―予型論図像と「キリストのまねび」の可視化 255
 第1節 礼拝堂の概要 255
 第2節 〈カルヴァリオへの道〉礼拝堂の実現過程 263
     1 「十字架を担うキリスト」の場面の山頂部への移転 263
     2 礼拝堂の竣工 269
     3 場面構成に関する指示 273
     4 フレスコ画に関する指示 280
     5 画家の交替とフレスコ画の場面構成 283
 第3節 銘文と額絵 291
     1 銘文における十字架と受難の暗示 291
     2 額絵 301
 第4節「キリストのまねび」の可視化 309
     1 「十字架を担うキリスト」の図像伝統におけるキレネのシモン像 309
     2 像と絵画の一体化と巡礼の視線の動き 315

第7章 第二七礼拝堂〈ピラトの審問所〉におけるタンツィオ・ダ・ヴァラッロの貢献 321
 第1節 タンツィオ・ダ・ヴァラッロ―略歴と先行研究での位置づけ 321
 第2節 〈ピラトの審問所〉礼拝堂造営の経緯 326
     1 造営前史 ― 旧「ピラトの官邸」 326
     2 山頂部の「ピラトの官邸」の実現 330
 第3節 「卓越したマエストロ」 333
 第4節 内部場面の構成 343
     1 内部場面の現状と制作における課題 343
     2 タペストリーと天使 355

第8章 第三四礼拝堂〈手を洗うピラト〉の図像プログラム 369
 第1節 バスカペーの指示による礼拝堂 369
     1 一六一七年のサクロ・モンテ 369
     2 バスカペーによる図像案 373
 第2節 〈手を洗うピラト〉礼拝堂 387
     1 内部場面の制作の経緯 387
     2 「手を洗うピラト」の図像伝統と第三四礼拝堂の場面構成 389
 第3節 〈手を洗うピラト〉礼拝堂の図像プログラム 401
     1 副次的モチーフの同定 401
     2 全体構想における〈手を洗うピラト〉礼拝堂 416

     注 425
     あとがき 509
     表および資料 72
     図版リスト 55
     文献リスト 33
     関連年表 27
     礼拝堂説明 14
     人名索引 9
     [付録]一五一四年の案内書「これなるはヴァラッレの山の上なる信仰の神秘である」 1


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