[目次]
まえがき 砂野幸稔 1
1 言語問題への視座――「多言語主義」の功罪
2 アフリカ地域研究と言語問題
3 現場からの視点
4 「部族」などの用語、および固有名詞について
5 本書の構成
注 7
【総論】
第1章 アフリカにおける言語と社会 梶茂樹 9
1 はじめに――世界の言語のなかのアフリカ諸語 9
2 部族語の世界 11
3 系統分類 13
4 多言語使用――部族語、地域共通語、公用語 18
5 アフリカ的部族共生の原理 22
6 おわりに 27
注/参考文献 28
第2章 アフリカの言語問題――植民地支配からひきついだもの 砂野幸稔 31
1 はじめに 31
2 支配言語成立の歴史――植民地政策と言語 36
[2・1]フランス領植民地の場合
[2・2]ポルトガル領植民地の場合
[2・3]イギリス領植民地の場合
[2・4]旧ベルギー領の場合
3 独立後の言語政策 45
[3・1]単一のアフリカ語
[3・2]主要なアフリカ語とヨーロッパ語の二言語体制
[3・3]旧植民地宗主国言語の実質的な単一言語支配
[3・4]解放運動亡命指導部の言語
[3・5]アフリカ諸言語振興の動き――南アフリカの例
4 結びにかえて――アフリカと「多言語主義」 55
注/参考文献 59
【西アフリカ―旧イギリス領】
第3章 言語の命を支える民族のアイデンティティ――言語大国・ナイジェリアのケース 塩田勝彦 65
1 はじめに 65
2 ナイジェリアの言語状況 66
[2・1]北部ナイジェリアの言語事情
[2・2]西部ナイジェリアの言語事情
[2・3]東部ナイジェリアの言語事情
3 ナイジェリア・ピジン 75
4 多言語社会の実情?―?ボルノ州の言語状況 78
[4・1]カヌリ語
[4・2]ブラ語
[4・3]「通じない」というストラテジー
5 ナイジェリアにおける多言語社会のゆくえ 89
注/参考文献 91
第4章 英語主義か多言語主義か――ガーナの言語問題 古閑恭子 97
1 はじめに 97
2 ガーナで使用される言語 98
3 憲法、出版における現地語の扱いの変化 100
4 ラジオ放送における現地語使用 103
5 教授言語をめぐる問題 105
[5・1]方針の変遷
[5・2]現地語による教育の失敗の背景
6 実生活における言語使用の動態 110
[6・1]言語使用の重層構造
[6・2]個人の言語使用
7 おわりに 115
注/参考文献 117
【西アフリカ―旧フランス領】
第5章 拡大するウォロフ語と重層的多言語状況の海に浮かぶフランス語――セネガル 砂野幸稔 127
1 唯一の公用語フランス語 127
2 セネガルの言語状況の見取り図 130
3 セネガル都市部における言語使用の実態 132
[3・1]ウォロフ語の拡大
[3・2]多言語使用という選択 ―― ウォロフ化への抵抗
[3・3]フランス語の位置
4 「国語振興」という陥穽 147
[4・1]言語ナショナリズムの系譜
[4・2]セネガル政府の「国語」振興策
[4・3]成人識字キャンペーンと曖昧な多言語主義
5 結びに代えて 154
注/参考文献 156
第6章 ストリートで生成するスラング ―― コート・ジボワール、アビジャンの都市言語 鈴木裕之 161
1 はじめに 161
2 多言語国家コート・ジボワール、多言語社会アビジャン 162
[2・1]アビジャンの民族模様
[2・2]アビジャンの言語使用状況
3 ストリート・ボーイの生まれる社会的背景 167
[3・1]学校を追いだされて
[3・2]さまざまな経済活動
4 ストリート文化の生成 170
5 スラング・ヌゥシ 171
[5・1]ヌゥシの文法
[5・2]語彙の生成 ―― ジュラ語の場合
[5・3]生活環境を映しだす語彙
6 ヌゥシの社会的意味 181
[6・1]ことば共同体
[6・2]アイデンティティ表明のメディアとして
注/参考文献 184
【西アフリカ―旧ポルトガル領】
第7章 アフリカ諸語の有無が生む差異――カボ・ベルデとギニア・ビサウの場合 市之瀬敦 189
1 はじめに 189
2 カボ・ベルデ 191
[2・1]無人島から独立国家まで
[2・2]統治すれども君臨せず ―― ポルトガル語
[2・3]国民の言葉 ―― クレオール語
3 ギニア・ビサウ共和国 205
[3・1]「黒いバベル」
[3・2]進まない普及 ―― ポルトガル語
[3・3]「バベル」の国の橋渡し言語=クレオール語
[3・4]見えない土台 ―― 民族諸語
4 結論 218
注/参考文献 220
【中部アフリカ―旧ベルギー領】
第8章 多言語使用と教育用言語を巡って――コンゴ民主共和国の言語問題 梶茂樹 225
1 はじめに ―― 国名 225
2 言語状況 227
[2・1]部族語
[2・2]共通語
[2・3]公用語
3 フラマン民族主義と植民地の言語問題 234
4 植民地化とキリスト教会、そして教育用の言語 236
5 言語統一化の問題 238
6 コンゴの言語の周辺化 239
7 おわりに ―― 自己矛盾は解消されるか 243
注/参考文献 244
【東アフリカ―エチオピア】
第9章 文字は誰のものか――エチオピアにおける諸言語の文字化をめぐって 柘植洋一 249
1 エチオピアの言語状況 249
[1・1]はじめに
[1・2]エチオピアの諸言語
[1・3]話者人口
[1・4]イタリア語との関わり
2 エチオピアにおける文字使用の歴史 255
[2・1]最古の記録
[2・2]エチオピア文字とゲエズ語
[2・3]ソロモン王朝の復活 ―― ゲエズ語とアムハラ語
[2・4]アムハラ語の登場
3 アムハラ語中心主義 ―― 公用語としてのアムハラ語とそのほかの言語 259
[3・1]アムハラ語の公用語化
[3・2]アムハラ語以外の言語の文字化
[3・3]ティグリニア語の場合
[3・4]オロモ語の場合
4 社会主義の時代 ―― 諸言語の平等と「作業語」としてのアムハラ語 266
[4・1]作業語としてのアムハラ語
[4・2]識字キャンペーン
5 社会主義体制の崩壊から連邦制国家へ ―― 諸民族語のより広範な使用へ 269
[5・1]新たな憲法での規定
[5・2]作業語の選択
6 アリ語の文字化をめぐって 271
[6・1]アリ人とアムハラ語
[6・2]文字化の道程
[6・3]誰のための、何のための文字化か
注/参考文献 276
第10章 数百万人の「マイノリティ」――ウォライタ(エチオピア)の場合 若狭基道 281
1 ウォライタの背景 281
2 日常生活でのウォライタ語 282
3 学校でのウォライタ語 286
4 周辺言語とウォライタ語 290
5 アムハラ語とウォライタ語 293
6 英語とウォライタ語 298
7 その他の言語とウォライタ語 299
8 結び 300
注/参考文献 302
【東アフリカ―旧イギリス領】
第11章 言語的多様性とアイデンティティ、エスニシティ、そしてナショナリティ ―― ケニアの言語動態
品川大輔 309
1 導入 ケニア ―― アフリカ三語族の合流する地 309
2 多様な民族語 312
[2・1]アフロ・アジア語族 クシ系
[2・2]ナイル・サハラ語族 ナイロート系
[2・3]ニジェール・コンゴ語族 バンツー系
[2・4]言語類型論的概観
[2・5]手話
3 言語政策 323
[3・1]国語および公用語
[3・2]「スワヒリ語」
[3・3]教育媒介言語
[3・4]「母語」教育
4 言語使用の動態 330
[4・1]少数言語の衰退
[4・2]非都市部における言語使用
[4・3]都市部における言語使用
5 展望 340
注/参考文献 342
第12章 多民族・多言語社会の諸相 ―― ウガンダにおける言語政策と言語使用の実態 宮ア久美子 349
1 はじめに 349
2 ウガンダの言語 350
3 ウガンダの言語政策 354
[3・1]一九世紀から植民地期
[3・2]独立後の言語政策
[3・3]現在の言語政策
4 ウガンダにおける言語使用 365
[4・1]都市部の言語使用 ―― 首都カンパラの事例
[4・2]使用言語数
[4・3]領域別にみる言語使用
[4・4]ガンダ語、英語、スワヒリ語の使用状況
[4・5]農村部における言語使用 ―― 東部トロロ県ブタレジャの事例
[4・6]使用言語数
[4・7]領域別にみる言語使用
[4・8]「大きい」言語と「小さい」言語
5 おわりに 380
注/参考文献 381 第13章 スワヒリ語の発展と民族語・英語との相克 ―― タンザニアの言語政策と言語状況
竹村景子・小森淳子 385
1 はじめに 385
2 スワヒリ語発展の歴史的経緯と言語政策 387
[2・1]内陸部へのスワヒリ語の浸透 ―― 植民地以前からの交易と宣教師の活動
[2・2]植民地時代のスワヒリ語 ―― 植民地政府の政策と「一つのスワヒリ語」への過程
[2・3]独立後の言語政策 ―― 「国民統合」のためのスワヒリ語
[2・4]スワヒリ語の重層性と複合性 ―― 「標準語」と「地域方言」の関係をめぐって
3 スワヒリ語と民族語・英語の相克 400
[3・1]民族語の現状
[3・2]スワヒリ語と英語の相克
4 おわりに 409
注/参考文献 411
【マダガスカル】
第14章 未完の「国語」 ―― マダガスカル語とフランス語の相克 深澤秀夫 419
1 未完の「国語」 ―― 「国民言語」と「国家言語」との間隙 419
2 地域間共通言語としてのマダガスカル語の成立 422
3 「国語」としてのマダガスカル語の成立 ―― イメリナ王国とマダガスカル語の書記化 427
4 フランス市民としてのフランス語とフランス臣民としてのマダガスカル語 434
5 「国語」回復の困難 ―― 言語政策の過剰と不在 439
注/参考文献 448
【南部アフリカ】
第15章 動き続けるアフリカ諸語 ―― ナミビアの言語事情 米田信子 455
1 ナミビアの言語状況 455
[1・1]ナミビアの言語とその分類
[1・2]公用語選択の背景
[1・3]言語政策 ―― 英語の普及促進と母語教育の奨励
[1・4]アフリカ諸語を取り巻く実情
2 何が問題だったのか? 464
[2・1]望まれないアフリカ諸語教育
[2・2]アパルトヘイトか?「現在」か?
3 ナミビアにおける言語権 467
4 アフリカ諸語振興の動き 469
[4・1]教育言語政策の改定案
[4・2]アップグレーディング・アフリカン・ランゲージ・プロジェクト
[4・3]メディアにおける変化
5 おわりに 474
注/参考文献 475
第16章 11公用語政策の理想と現実 ―― アパルトヘイト後の南アフリカ共和国言語事情 神谷俊郎 481
1 はじめに 481
2 言語状況の概要 484
3 各言語のプロファイル 488
[3・1]ングニ語群
[3・2]ソト語群
[3・3]ツォンガ語
[3・4]ヴェンダ語
[3・5]アフリカーンス語
[3・6]その他の言語
4 南アフリカの多言語事情素描 496
[4・1]アフリカ諸語間のヒエラルキー
[4・2]言語政策の「ねじれた」歴史
[4・3]英語中心社会
[4・4]黒人諸語に可能性はあるか
5 おわりに 511
注/参考文献 513
【手話言語】
第17章 アメリカ手話とフランス語の接触が生んだ手話言語 ―― フランス語圏西・中部アフリカ
亀井伸孝 519
1 はじめに ―― アメリカ人、ブルンジで驚く 519
2 アメリカ手話の伝播と変容 520
[2・1]アフリカのフランス語圏諸国
[2・2]西・中部アフリカの手話に関する断片的記述
[2・3]ろう者牧師フォスターとキリスト教ミッション
[2・4]手話で行われていた教員研修
[2・5]ろう者たちによる言語計画
[2・6]通常起こりえない言語接触
3 接触手話言語の特徴 527
[3・1]アメリカ手話に加わったフランス語の特徴
[3・2]英語の口型がフランス語の口型に
[3・3]英語の頭文字がフランス語の頭文字に
[3・4]英語の語順がフランス語の語順に
[3・5]「本家」アメリカでの違和感
[3・6]話者たちの言語意識
4 近年の変化 ―― フランス手話の台頭と共存 534
[4・1]フランス手話の登場
[4・2]フランス手話の導入の概要と背景
[4・3]カメルーンでの経緯
[4・4]フランス手話の導入現場で何が起こっているか
[4・5]人為的につくられた差異をめぐって
[4・6]フランス手話の強さ、LSAFの弱さ
5 おわりに ―― 接触手話言語の未来 546
注/参考文献 548
あとがき 梶茂樹 552
執筆者紹介 557 |