戦争の記憶 記憶の戦争
韓国人のベトナム戦争

[著者]金賢娥(キム・ヒョナ)
[訳者]安田敏朗

朴正熙独裁政権のもと、韓国は1960年代半ばベトナム戦争に参戦する。韓国側の被害者だけでも死亡5千人、負傷1万人、枯葉剤後遺症被害者2万人以上を生む一方で、ベトナム特需による経済発展をもたらしもした戦争――それは記憶の風化とともに現代の韓国社会では、徹底して忘れられた戦争でもあった。そして1999年になりようやく、韓国軍による民間人虐殺という衝撃的な事実が明らかになる。
本書は、ベトナム現地調査から始め、真実を記憶することをとおして、真の和解をもとめる韓国の市民団体の足跡をたどったものである。

[書評]
《読売新聞》書評欄、2009年12月20日
《読売新聞》「今年の3冊」、2009年12月27日
《週刊読書人》「今週の書評」、2010年2月26日号
《西日本新聞》書評欄、2010年4月18日
『現代韓国朝鮮研究』10号(2010年11月)、現代韓国朝鮮学会

定価=本体 2,700円+税
2009年11月30日/四六判/376ページ+カラー口絵2ページ/ISBN978-4-88303-255-6
 


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[目次]
 だれと手をつなぐのか 日本語版によせて 11
 序文 記憶の真実を探して 15
 推薦の辞 ベトナム戦争を超え「近代」へ  キム・ナミル(金南日) 19
 はじめに 31

 1章 想像の領土 ベトナム 33
     絶望への予感 34
     「ナワウリ」設立 37
     ピースボート 41
     異常な空気 42
     ベトナムへ 44
     ベトナム戦争 45
     韓国軍のベトナム戦争参戦 51

 2章 もうひとつの記 55
     ルオン・ティ・フォイ  56
     もちろん憎いさ  64
     暗闇でこそ光は輝く  69
     タン・ティ・カー、貧しき妹よ  76
 3章 前線のない戦争、反共主義、イメージの恐怖 87
     疑心と恐怖  87
     ベトコンはおらず  90
     龍眼作戦  94
     前線のない戦争、内面化された反共イデオロギー  99
 4章 戦争の記憶、記憶の戦争 105
     韓国軍ベトナム戦争参戦の背景  108
     共謀者あるいは傍観者――韓国メディア・知識人の反応  111
 5章 パズルあわせ 117
     ベトナム人の証言 118
     『派越韓国軍戦史』のフォンニー村の記録 120
     参戦軍人の証言するフォンニー村 121
     米軍報告書のフォンニー村 122
     事件の結果 134
 6章 新しい出会い 137
     慰霊碑 137
     合同慰霊祭 149
     過去に蓋をし未来を見よう。ではどうやって蓋をするのか 154
     戦争の目的と解釈 164
     新しい機運 166
 7章 生き残った者の悲しみ 169
     音の村、アンカイン 169
     流配地の時間 182
     炎の詩人 イニ 194
     生き残った者の悲しみ 201
 8章 参戦軍人、混沌と絶望 217
     お父さんの勲章 217
     息子とのベトナム調査 228
     チャビンドンへの道 236
     戦争の悲しみ 249
     ミライ 252
     私たちはいまもみな生きていると 272
 9章 和解への遠い道のり 275
     傷跡に語らせよ 275
     ハミ村の話 282
     ベトナムの友になること――「ナワウリ」のベトナムとの出会い方 292
 10章 抵抗と再解釈 299
     文化、権力が内在するイデオロギー 299
     日常の暴力 302
     拒否できない国家の命令 303
     抵抗し再解釈すること 305
 11章 結び 307

 手紙 「心」という字 そして友情についての話  ヴァン・レー 312
 かれらの傷に語らせよ  ハン・ホング(韓洪九) 320
 註 325
 解説 パク・ナムギュ(朴南圭) 365
 訳者あとがき 370


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