「よきサマリア人」の譬え
図像解釈からみるイエスの言葉

[著者]細田あや子

荒井献氏(新約聖書学者)推薦────
“「神の言葉」の受容について多層的に論じた画期的な大著。 ”

イエスが隣人愛について語ったこの物語は、キリスト教成立期以来、さまざまな場面に描かれ、時代を経てその描写は変容してゆく。これは、キリスト者がいかに聖書を解釈したのかという信仰の表象でもある。本書は、それらの描写をうながした教父や神学者たちによる聖書釈義の伝統を踏まえ、図像プログラム全体のコンテクスト、および、儀礼・典礼など宗教的実践との密接な結びつきにも留意しながら、ヨーロッパ中世とビザンツにおけるテクストと図像との交錯した関連を考察する。

[受賞]
2010年度新潟大学人文科学奨励賞 阿部賞

[書評]
『文藝春秋』「BOOK倶楽部」、2010年7月号、評者: 苅部直氏
宗教情報センターHP「書評レビュー」、2010年7月25日、評者: 藤山みどり氏
『福音と世界』「書評」、2010年10月号(新教出版社)、評者:廣石望氏
『宗教研究』No.370(2011年12月、日本宗教学会)、評者:土井健司氏
『日本の神学』51号(2012年9月、日本基督教学会)、評者:山田順氏

定価=本体 6,400円+税
2010年3月31日/
A5判上製/552ページ+口絵4ページ/ISBN978-4-88303-263-1


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[目次]
 地図 8

「よきサマリア人」の譬え 図像解釈からみるイエスの言葉
 凡例 12
 はじめに 13
 第1章 福音書における譬えの位置と図像化された譬え 19
     1.1 福音書におけるイエスの譬えの位置  20
     1.2 キリスト教美術におけるイエスの譬え図像の位置  24
          1.2.1 象徴、寓意的・形象的表現と譬え図像 24
          1.2.2 言語テクストと画像イメージとの相互関連 34
     1.3 イエスの譬え図像概観  40
          1.3.1 カタコンベや石棺の譬え図像 40
          1.3.2 聖堂内の譬え図像 43
          1.3.3 写本芸術の譬え図像 47
     1.4 小括  57
 第2章 「よきサマリア人」の譬えとその釈義テクスト 61
     2.1 「よきサマリア人」の譬えのテクスト 61
          2.1.1 譬えのコンテクスト 61
          2.1.2 譬えの内容(ルカ福音書10,25-37) 62
          2.1.3 「よき」サマリア人 67
     2.2 「よきサマリア人」の譬えの釈義テクスト  69
          2.2.1 東方(ギリシア語・シリア語系)の伝統 70
          2.2.2 西方(ラテン語系)の伝統 84
     2.3 小括 93
 第3章 西ヨーロッパおよびビザンティンにおける「よきサマリア人」の譬えの図像化 95
     3.1 視覚化されたモティーフ 97
     3.2 表現方法 103
     3.3 物語構造と表現形態 107
     3.4 図像学的伝承と編集 111
     3.5 補論 ビザンティン問題 119
          「葡萄園の労働者たち」(マタイ20,1-16) 121
          「悪しき農夫たち」(マタイ21,33-44; マルコ12,1-11; ルカ20,9-18) 125
 第4章 「よきサマリア人」の譬え図像の意味と解釈 135
     4.1 寓意的および予型論的図像化 137
          4.1.1 『ロッサーノ福音書』 139
          4.1.2 『ハインリヒ獅子公の福音書』 143
          4.1.3 『ビーブル・モラリゼ』 150
          4.1.4 シャルトル、ブールジュ、サンスのステンドグラス 156
     4.2 終末論的コンテクストにおける譬え図像  167
          4.2.1 ブルクフェルデンとサンタンジェロ・イン・フォルミスの聖堂壁画 169
          4.2.2 「最後の審判」図と組み合わされた譬え図像 176
     4.3 救済史的観点に基づいて描かれたビザンティン美術の譬え図像  182
          4.3.1 後期ビザンティンおよびポスト・ビザンティン美術における寓意的要素 182
               『セルビア詩編』、『トミッチ詩編』 183
               アギオス・ニコラオス・トン・フィランスロピノン修道院壁画 186
               寓意的な図像化 189
          4.3.2 四旬節の典礼と関連する譬え 194
               「トリオディオン」 194
               詩編写本と譬え図像 199
          4.3.3 「天上の典礼」図と組み合わされた譬え図像 202
               ビザンティンの聖堂壁画装飾 202
               聖体礼儀 203
               「使徒たちの聖体拝領」と「典礼を執り行う司祭たち」の図像 205
               「天上の典礼」の図像化 208
               聖体礼儀の意味 211
               「天上の典礼」図と「よきサマリア人」の図像のコンテクスト 213
          4.3.4 「証しの幕屋」図と組み合わされた譬え図像 218
               クルテア・デ・アルジェシュ修道院 218
          4.3.5 『絵画指南書』の記述 223
          4.3.6 補論 ビザンティン美術における典礼化 225
 第5章 「よきサマリア人」の譬え図像における送り手と受け手の呼応作用 229
     5.1 譬え図像の多義的構造 230
     5.2 譬え図像が同時代の受け手に及ぼす作用 240
  第6章 譬えの語りおよび譬えの図像によるコミュニケーション 247
     6.1 イエスの譬えと譬え論  248
          6.1.1 イエスの譬えと神の国の奥義 248
               マルコ福音書の記述 248
               マタイ福音書の記述 252
          6.1.2 中世における譬え論 255
               隠された意味・多層的な解釈 255
               霊的教えのための譬え 256
               隠喩と奥義 258
               謎と謎論 261
     6.2 譬え図像の特質 264
     6.3 中世の情報スタイルとキリスト教美術 270
 結び 277

「よきサマリア人」の譬え 作品例カタログ
 凡例 286
 掲載作品一覧 287
    写本挿絵(cat. 1〜cat. 26) 293
    壁画(cat. 27〜cat. 52) 371
    ステンドグラス(cat. 53〜cat. 58) 419
    浮彫り彫刻(cat. 59) 433
    典礼用工芸品(cat. 60〜cat. 62) 437
    その他(cat. 63) 447

 あとがき 449
 イエスの譬え図像一覧 (巻末)
 6〜12世紀の写本挿絵におけるイエスの譬え図像一覧 (巻末)
 索引(事項/人名/作品) 001
 参考文献 017
 注 053
 掲載図版出典一覧 091


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