聖性の転位
一九世紀フランスに於ける宗教画の変貌

[著者]喜多崎親

大革命後のカトリック復興期、画家達は過去様式を意図的に利用することで聖なるものの表象を模索していた。だが考古学や民族誌によってもたらされた古代やオリエントの新しいイメージは、次第にそれらを変質させ、ジャーナリズムに代表される受容者は、そこに新たな意味を読み取っていく。聖性の表象という目的ゆえに、他のジャンルにはない独自の様相を示す19世紀フランスの宗教画から、近代美術への新たな視界を切り開く。

[書評]
《図書新聞》2011年4月30日号、評者:小倉孝誠氏

定価=本体 4,300円+税
2011年2月15日/A5判上製/412頁/ISBN978-4-88303-289-1


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[目次]

序論 7

第1章 パリに顕れるビザンティン
サン=ヴァンサン=ド=ポール聖堂に見る様式選択とヒエラティック・モード 21
  T 問題提起 22
  U 壁画プログラムの変更 28
  V 多彩色建築とモザイク 40
  W 建築家と画家の共同制作 49
  X ビザンティンという評価 56

第2章 オリエント化されるキリスト教世界
テオドール・シャセリオーのサン=ロック聖堂洗礼盤礼拝堂壁画に見る性差と人種 65
  T 問題提起 66
  U 壁画のプログラム 69
  V 聖フィリポの図像とハーレム 73
  W 聖ザビエルの図像とインド 89
  X 差別的言説の誘発 100

第3章 聖性と写実
レオン・ボナの《キリスト》に見る身体と階級 109
  T 問題提起 110
  U サロン評に於ける階級的身体観 113
  V 受容の背景 126
  W ユイスマンスのグリューネヴァルト評 136

第4章 幻視としてのイコン
ギュスターヴ・モローの《出現》に見る聖と俗 149
  T 問題提起 150
  U 制作過程とサロメ図像 157
  V イメージ・ソースと効果 173
  W 幻視の図像 189
  X 枠外への作用 202

第5章 モザイクとしての様式
モーリス・ドニの《カトリックの神秘》に見る点描とヒエラティック・モード 213
  T 問題提起 214
  U クロワゾニスムと点描 219
  V 平面的賦彩とヒエラティック・モード 227
  W 点描とモザイク 231
  X モザイクの復興 238
  Y ヒエラティック・モードとしてのモザイク 246

補論 明治期「理想画」のモード選択
黒田清輝《智、感、情》の周囲 253
  T 聖性と油彩 254
  U 黒田清輝とヒエラティック・モード 262
  V 黒田と壁画の理念 277
  W 黒田後の理想画 284

結論 309

あとがき 319

註 1
参考文献一覧 44
図版のクレジット及び出典 72
索引 77


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