[目次]
序章 「クレオール化」した漢文への想像と境界 11
一、台湾における日本植民地統治の特異性 11
二、「同文」の磁場の中の異民族支配 13
三、漢文の「クレオール現象」 18
四、台湾人の精神、文化史を再現する文体 23
五、分析概念としての「漢文」の限界 25
六、漢文の混成現象の歴史的位置付け 28
七、本書の構成について 30
《注》 33
第一章 帝国漢文・『台湾教育会雑誌』・植民地漢文 37
一、はじめに 37
二、領台以前の日本の漢文脈?―?「帝国漢文」 38
1、翻訳装置としての漢文訓読体 38
2、領台前夜の「帝国漢文」の盛行 41
三、『台湾教育会雑誌』の発刊 45
1、日清戦争後のメディア用語として漢文の復活 45
2、『台湾教育会雑誌』とその漢文欄 49
四、『台湾教育会雑誌』が及ぼした影響 51
1、台湾における近代的漢文欄の先駆 51
2、近代啓蒙雑誌に登場する台湾人 56
五、植民地漢文の誕生とその意義 61
1、混合的、仲介的な新メディア用語 61
2、台湾に生まれた植民地漢文 67
六、結論 71
注 72
第二章 明治期の明治体から大正期の「中国白話文」へ 79
一、はじめに 79
二、クレオール語と異なる植民地漢文の仕組み 80
1、和製漢語による近代的な語群の構築 80
2、共有された文体理解の基盤 82
3、対訳によって認知された植民地漢文 86
三、殊道同歸?―?道は異なっても、行き着く所は同じ 91
1、伝統漢文から「明治体」へ 91
2、同源関係を持つ「新民体」と植民地漢文 94
3、梁啓超が台湾に与えた影響 96
四、「中国白話文」から出発した台湾近代文学 100
1、植民地漢文から「中国白話文」へ 100
2、誰も精確に書けなかった「中国白話文」 102
五、想像上の文体と現実の社会のギャップ 112
1、文体の刷り込み現象 112
2、リアリズム文学と相克する文体 118
六、結論 122
注 124
第三章 「歌を聴いて字を識る」郷土文学/台湾話文運動――識字・創作・読書・階層との葛藤 131
一、はじめに 131
二、開けられた文体問題のパンドラの箱 132
1、台湾社会に適合する文体の要求 132
2、郷土文学から台湾話文への傾斜 136
3、「文盲」救済を出発点とした論戦 138
三、プロレタリア階級教化の主導権の争奪戦 142
1、台湾全島を覆い尽くす国語「同化」教育 142
2、庶民教化の道具として利用された「歌仔冊」 145
四、「歌を聴いて字を識る」言語運動 152
1、(文学を)読むことを識字の手段とする 152
2、「民間文学」を識字手段とした伝統 156
3、運動実践の基盤としての「過去」と「純粋」 159
五、浮上した階級、雑駁、近代化の問題 165
1、「文盲」と識字者の間の利益衝突 165
2、台湾話文に対峙する台湾社会の近代化 168
六、結論 173
注 175
第四章 「中国白話文」と台湾話文の境界――近代翻訳の埒外にあった台湾話文 183
一、はじめに 183
二、「一篇多語」の分業方式文体の成果 184
1、郷土/話文運動の挫折 184
2、郷土文学における叙事と会話の分裂現象 188
3、「中国語は典雅で、台湾語は低俗である」という烙印 192
三、翻訳から見た台湾話文の問題 197
1、近代文学の母体として未熟だった台湾話文 197
2、翻訳を通して進化した日本の文体 200
四、近代翻訳の過程の埒外にあった台湾話文 203
1、「ヨーロッパを牛、日本を農夫」とする中国の翻訳事情 203
2、「同文」によって失われた翻訳への熱意 206
3、翻訳が生んだ台湾話文と「中国白話文」の境界 211
五、近代翻訳の選択がもたらした言文一致問題 215
1、帝国漢文の色を濃く帯びる台湾話文 215
2、「殊途同歸」か「殊途殊歸」か 218
3、植民地漢文をめぐる言文一致の論争 223
六、結論 228
注 230
第五章 国防、国体、国策に縛られた植民地漢文――文体解釈共同体の成熟と「同文同種」の破綻 235
一、はじめに 235
二、植民地漢文解釈共同体の成熟化 236
1、論争を通した文体の常態化、固定化 236
2、多様性、雑駁性を認め合う解釈共同体 240
3、台湾に照準を合わせた解釈戦略 242
三、台湾人のみの文体の誕生 246
1、漢文全盛期から漢文欄の「廃止」へ 246
2、「同文」から「異文」へ 252
3、文体の変容による検閲上の困難 257
四、漢文と日本語の境界の移動 263
1、国体・異民族・漢字漢文 263
2、禁止されたのは台湾語の漢文 267
3、国体イデオロギーから国策へ 271
五、国策の担い手としての純正なる中国白話文 275
1、植民地版『キング』としての『風月報』 275
2、郷土の台湾から帝国の大東亜へ 280
3、解釈共同体の拡大と植民地漢文の退潮 285
4、成熟した日本語の勝利 291
六、結論 297
注 299
第六章 結論 309
一、漢文の再編と近代日本 309
二、植民地漢文から見た台湾、日本、東アジア 312
三、台湾における漢文への想像と境界 315
四、漢文に呪縛された台湾人の自助再生の道 319
五、漢字文化で対等の日本と台湾 322
六、植民地漢文の戦後 326
注 331
あとがき 332 |