オルレアン公詩歌帖の世界
シャルル・ドルレアンとヴィヨン

[著者]田桐正彦

清新な詩で今日も愛される、フランス 15 世紀の代表的叙情詩人、シャルル・ドルレアン。百年戦争の最中、若くしてアザンクールの戦いに敗れ、二五年の歳月を捕囚として過ごす。帰国後、相続権を有するミラノ侵攻を試みるが果たせず、長女マリー誕生を機に、再度の侵攻を計画するが断念する。ジャンヌ・ダルクと共に戦いながら、その後「反逆罪」に問われた義理の息子アランソン公ジャンを救うための「大弁論」など、中世末期ヨーロッパを生きた政治家・領主オルレアン公としての姿に光をあて、ヴィヨンも加わった「歌合」を中心に、詩歌帖のテクストの水面下にひそむ「言説の多重構造」を精緻に読み解き、従来の詩人像を描き替えていく。

[書評]
『ふらんす』第88巻第11号(2013年11月、白水社)、評者:宮下志朗氏

定価=本体 8,500円+税
2013年5月31日A5判上製/774頁+カラー口絵4頁/ISBN978-4-88303-338-6


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[目次]

はじめに  7

第T部 詩歌帖詩歌選注解
   第 1 章 恋の処方箋 『処方箋のロンデル』連作注解  17
      一 処方箋のロンデル連作  18
      二 「処方」のロンデル注解  26
   第 2 章 羊皮紙のリボン 『証文のバラード』連作注解  42
      一 証文のバラード連作  42
      二 「証文」連作注解  49
   第 3 章 眼の中の墨絵 ジャン・カイヨー『引用をまじえるロンデル』ほか注解  65
      一 神になりかわる詩  66
      二 異性になりかわる詩  75
      三 特定の個人になりかわる詩  88
   第 4 章 金貨の値打ち シャルル・ドルレアン『文法用語をまじえるロンデル』注解  108
      一 文法用語をまじえるロンデル  108
      二 参考作 指輪に彫られた詩  119
      三 「姦通」の主題  122
      四 オルレアン公の意図  134
   第 5 章 茴香と胡桃 「茴香」連作注解 その一  139
      一 シャルルと宮廷人の詩  139
      二 『イタリア語をまじえるロンデル』読解  155
      三 政治的暗号詩の先例  166
      四 作品の真の成立時期とオルレアン公の意図  175
   第 6 章 サヴォワの雪 「茴香」連作注解 そのニ  182
      一 外交官の作  182
      二 シャルルの返事  190
      三 結末  200
   第 7 章 葡萄畑で捕まって ジャン・ダランソン『ノンセンスな詩句をまじえるロンデル』ほか注解  219
      一 「恋離れ」の主題  220
      二 「競技場」のロンデル  228
      三 謎の応答歌  232
      四 ジャンの裁判  244
   第 8 章 放浪詩人の挨拶 ヴィヨン『マリー・ドルレアン姫讃歌』ほか注解  255
      一 『マリー・ドルレアン姫讃歌』決定稿  256
      二 『讃歌』決定稿成立までの道すじ―二重バラード献呈から決定稿清書まで  265
      三 『マリー・ドルレアン姫讃歌』のマリア信仰  278
      四 『聖母に祈るためのバラード』  290

第U部 ブロワ歌合評釈  299
   第 1 章 ヴィヨンとブロワ歌合  301
      一 『ラテン語をまじえるバラード』の問題  302
      二 「矛盾」の凡庸さと軽さ  314
      三 競作詩群  320
   第 2 章 返礼と期待 本歌・第一番 注釈  331
      一 歌合の本歌―「運」の問題  331
      二 「運」に対するシャルルの思想の変化  345
      三 歌合第一番―遊戯  356
   第 3 章 宮廷の事件 第二番・別作・番外作一番 注釈  373
      一 歌合第二番―過誤  374
      二 「ブロワ歌合詩群」再考  388
      三 シャルルの別作―課題  395
      四 番外作一番―苦吟  403
   第 4 章 ヴィーナスの盾 シャルルとヴィヨン『ラテン語をまじえるバラード』注釈  414
      一 本歌―戯作バラードの応酬  414
      二 『変身物語』と「フィロメナ」の謎  418
      三 ヴィヨン読解  431
   第 5 章 笑いつつ涙にくれて 第三番・第四番・第五番 注釈  446
      一 歌合第三番―境遇  446
      二 歌合第四番―捌き手の影  458
      三 歌合第五番―借用  466
   第 6 章 知識と見識 第六番・第七番・第八番 注釈  490
      一 歌合第六番―敵意  490
      二 歌合第七番―批判  500
      三 歌合第八番―応答  511
   第 7 章 憧憬と自立 第九番・第十番 注釈  532
      一 歌合第九番―憧憬  532
      二 歌合第十番―自立  547
   第 8 章 歌合をふりかえる シャルルとヴィヨン  563
      一 宴としての意味と第三番までの経緯  563
      二 第四番以降の展開  572
      三 歌合の根本動機  580
      四 矛盾という主題とヴィヨンの真の啓示  587

むすび  594

第V部 補遺  601
   補遺 1  年譜  603
   補遺 2  詩歌帖(写本 ms. BN fr. 25458 )の構成と成立年代  607
   補遺 3  貴婦人とリス 指輪刻印『文法用語をまじえる六行詩』及び図像注解  613
      一 指輪の植物群  614
      二 表象の二重構造  619
      三 指輪の帰属する世界  632
      四 指輪の文字列―テクストの二重構造  649

注  663
あとがき  715
原文 ブロワ歌合関連詩群原文  001
図版一覧  009
書誌  012
索引  035


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