帝国日本の朝鮮映画

植民地メランコリアと協力

[著者]李英載

植民地映画はいかにして「国家」を発見したか。
1930年代末から1945年にかけ植民地朝鮮で製作された劇映画『志願兵』『半島の春』『家なき天使』、そして戦後の名作『嫁入りの日』などの表象分析をとおして、帝国日本と植民地エリートのあいだで密かにおこなわれた「国家」と「協力」をめぐる交渉と競合、そしてポスト植民地国家への連続性の位相を明らかにする。

[書評]
《図書新聞》2014年2月8日号、評者:小野沢稔彦氏
『映画芸術』446号(2013年冬号)、評者: 韓東賢氏

定価=本体 2,800円+税
2013年10月25日A5判並製/296頁/ISBN978-4-88303-347-8


イメージを拡大

 

[目次]


まえがき 009

プロローグ
     一九四一年の京城、ある日記、ある映画 017
     天気、晴れ 017
     映画、機械人間の内面あるいは外面 020

第1章 帝国日本の朝鮮映画、韓国映画史の苦境 029
  1 韓国映画史は(不)可能か 030
  2 協力とは何か 041

第2章 協力の心情――〈志願兵〉前夜、あるいはメランコリーの日々 049
  1 志願兵、国語、義務教育、そして公民権――兵站基地化と内地延長の「理想」 050
  2 鬱病と植民地――鬱と去勢不安、『志願兵』前夜の顔 058
  3 不可能な恋愛――憂鬱の政治的根拠 069
  4 志願兵に起て 100

第3章 協力の制度――『半島の春』とトーキー時代の朝鮮映画 103
  1 「朝鮮」映画と朝鮮「映画」――固有なモダニズムと移植文化論 104
  2 映画、テクノロジー、システム、そして国家――トーキー時代の映画作り 113
  3 システムとしての国家――『半島の春』あるいは「二重言語映画」の問題 123
  4 ローカリティー、消えるべき記号 132
  5 「朝鮮映画株式会社」――半島映画のカタストローフ 144

第4章 帝国と朝鮮、啓蒙主体をめぐる競合――『家なき天使』を中心に 147
  1 総督と文部大臣、検閲の二つの体系――一九四一年、統合期の朝鮮映画 148
  2 『家なき天使』検閲事件の影響――動揺する朝鮮映画の新体制 151
  3 本当に朝鮮語が問題視されていたのか――分割のメカニズム 159
  4 統合の理想と分離の物語――外部なき被植民地主体の可能性と不穏性 170
  5 「新しい父親」探しの極点、父を自任する植民地の主体 177
  6 韓国映画史の文法、リアリズム論という方法、あるいは価値 183
  7 二つの国家、一つの主体 188

第5章 帝国とローカル、変転する物語――『孟進士宅の慶事』をめぐる民族表象 193
  1 誤認としての伝統――帝国のローカルから民族の再現へ 194
  2 誤認と同意――替え玉の反乱、公共圏を横断する記号 201
  3 プリミティヴへの情熱――自己民族誌と植民地の男性性構築 207
  4 再教育の時間――民族、避難地からの発見 223
  5 朝鮮ブーム、韓流の断崖 229

エピローグ 映画、国家、そしてトランスナショナルな旅 231

原註 xi
参考文献 v
索引 i


HOME