[目次]
序論 13
文化遺産という思想 13
(@)文化財保護の始まり 14 (A)中世芸術の再評価 16
問題提起 19
先行研究 22
(@)文化遺産研究 22 (A)美術制度研究 27 (B)中世復興とゴシック復興研究 29
本書の構成 32
第T部 国民芸術の創出 ――美術館と美術史言説 35
はじめに ――フランス記念物美物館の誕生 36
革命期に設立された美術館 36
アレクサンドル・ルノワールの仕事 37
中世のスペクタクル 40
フランス版ウエストミンスターを求めて 45
閉館後の影響力 49
クリュニー美術館 52 第 1 章 比較彫刻美術館 ――ヴィオレ=ル=デュック 56
複製彫刻美術館 56
T.比較彫刻美術館の設立まで 58
1.一九世紀における複製彫刻 58
2.トロカデロ宮の複製彫刻美術館 60
U.戦略的な芸術理論 65
1.美術館の構想 66
2.発展の法則 68
(@)芸術と文明 68 (A)古代ギリシアの発展モデル 73
3.比較の分析 75
(@)比較という分析方法 75 (A)古代ギリシアと中世フランス 77
V.美術館の展示 79
1.展示の方法 79
2.三つの展示プログラム 81
3.展示内容 88
W.国民芸術をめぐる論争 94
中世の復興から復権へ 97
第 2 章 ルーヴル美術館とルーヴル美術学校 ――ルイ・クラジョ 101
ルーヴル美術館のコレクションと教育 101
T.ルーヴル美術館中世彫刻コレクションの成立 103
1.アレクサンドル・ルノワールの再評価 103
2.旧フランス記念物美術館コレクションの継承 108
3.一九世紀末におけるルイ・クラジョの蒐集活動 115
4.一八八〇年代の中世・ルネサンス彫刻展示室の改革 123
U.“フランス”芸術の起源を求めて ――ルーヴル美術学校講義録 126
1.ルーヴル美術学校の創設 127
2.美術史のなかの中世 130
(@)フランス・ルネサンス論 ――ルネサンスから中世へ 131
(A)フランス≠フ源泉 ――中世から古代へ 135
3.国民芸術の新たな像 139
(@)反アカデミー/反ローマ 140 (A)もうひとつの源泉 142
(B)クラジョ言説への批判とその影響 143
中世芸術の大衆化 147
第U部 一九世紀の美術行政 ――美術史学と文化財保護の制度化 149
はじめに ――遺産の教育 150
第 3 章 美術史学の成立と教育改革 154
古典の古代、国民的な中世 154
T.中世考古学の誕生 ――一九世紀前半 155
1.記念物への歴史的・芸術的関心 155
(@)オバン=ルイ・ミラン 155 (A)セルー・ダジャンクール 156
(B)王政復古期の著作 158
2.考古学の発展――地方からパリへ 159
(@)ノルマンディーの動き 159
(A)一八三〇年代のギゾーの政策から一八四〇年の専門誌の創刊へ 160
(B)古文書学校 162
U.美術教育の改革 ――一八六三年の勅令 163
1.改革を求める声 163
2.中世擁護派 vs 美術アカデミー 164
V.中世芸術の制度化へ ――一九世紀末 167
1.中世の講義をめぐる建築家の意見 ――ガルニエとボド 167
2.美術学校における「中世・ルネサンスのフランス建築史」講義の開設 169
第 4 章 文化財保護制度 172
歴史的記念物行政の誕生 172
T.一八三〇〜一八八七年 ――実験と模索の期間 174
1.ユゴーが訴える法の必要性 174
2.一九世紀の文化財保護制度 ――歴史的記念物行政の成立 176
(@)歴史的記念物視察官 178 (A)歴史的記念物委員会 179
(B)歴史的記念物行政の中央集権化 ――パリと地方の対立 181
(C)二つの建築行政――市民建造物行政、司教区建築物行政 182
(D)歴史的記念物の指定リスト 187 (E)歴史的記念物の予算配分 191
U.一八八七年法の制定 ――初めての保護法 193
1.歴史的記念物委員会の拡大 193
2.一八八七年法制定までの長い過程 195
3.一八八七年法の背景 197
4.一八八七年法の内容 201
(@)歴史的記念物の定義 201 (A)国の権限と所有権 201
(B)指定の手続きと効力 203 (C)国の補助金 204
(D)「国益」が示す保護の範囲 205
5.一八八七年法から政教分離法へ ――建築行政の再編 206
第 5 章 ソルボンヌ大学の中世美術史学 ――エミール・マール 209
美術史学の制度化 209
T.中世美術史学の成立とその背景 211
1.高等師範学校の歴史家たち 213
2.研究対象としての中世の発見 215
U.中世美術史学の方法論と学問的視座 218
1.一九世紀中世考古学における歴史の欠如 218
2.一九世紀ゴシック観における世俗主義の偏重 220
3.図像学という研究方法の確立 223
(@)一九世紀の図像学 224 (A)図像学の近代化 226
V.国民芸術としての中世 230
1.一九〇六年ソルボンヌ大学の「中世キリスト教美術史」講義 230
2.中世フランス芸術の栄光 232
3.美術史家のナショナリズム 235
(@)ドイツのゴシック起源説 235 (A)フランスのゴシック起源説 236
(B)普仏戦争後の学者の意識 237
歴史から記憶へ 239
第V部 文化遺産の生とは何か ――世紀転換期における作家たちの保存論 243
はじめに ――一九世紀初頭の美術館批判 244
文化財とコンテクスト 244
教会堂か美術館か 245
カトルメール・ド・カンシーの問題提起 248
第 6 章 宗教的コンテクストの再発見 253
一九世紀末の非宗教化政策から政教分離法へ 253
T.中世芸術の保護論者ユイスマンス 256
1.文化遺産の歴史における文学作品 257
2.ユイスマンスの大聖堂の表象 ――信仰が生み出す芸術 261
(@)歴史小説と近代小説における大聖堂 262 (A)カトリック精髄の芸術 265
(B)生き続ける魂 267 (C)信仰を導く芸術の力 271
3.中世美術研究者としてのユイスマンス ――物質批判から魂の探究へ 273
(@)一九世紀中世研究批判 274 (A)物質主義から精神主義へ 277
(B)魂の探究者 279 (C)一八九八年の象徴学と図像学――ユイスマンスとマール 282
U.政教分離法案とプルーストの「大聖堂の死」 287
1.大聖堂の死≠ェ意味するもの 289
2.大聖堂の生≠フ解読 291
3.政教分離後のカトリックの遺産 294
使用価値の存続 297
第 7 章 保存の美学 299
芸術愛好家の保存論 299
T.時の経過 ――反修復論 300
1.一九世紀末のヴィオレ=ル=デュック批判 302
2.ヴィオレ=ル=デュックの修復理論 306
3.一九世紀の反修復論 308
(@)一九世紀前半の修復慎重論 308 (A)ジョン・ラスキンの理論 310
4.古い石をめぐる考察 313
(@)バレスの反修復論 ――旅行者 vs アテネの考古学者 313
(A)プルーストの修復をめぐる考察 ――印象主義の眼差し vs 考古学の眼差し 316
(B)プルーストの古い石の美 320
古さの価値 324
U.土地の絆 ――美術館再考 326
1.プルーストのアミアン大聖堂《黄金の聖母》 328
(@)土地固有の美 328 (A)大聖堂と美術館 330
2.バレスのルネ王博物館コレクション 333
(@)パリの美術館と地方美術館 333 (A)根を下ろす<Rレクション 336
(B)「大地と死者」の思想へ 340
文化財とその環境 342
第 8 章 記憶の場としての教会堂 345
二〇世紀初頭のヴァンダリスム 345
T.政教分離後の文化財保護 348
1.一九〇五年法と礼拝用建造物 348
2.歴史的記念物行政の拡大 350
(@)建築行政の改編 350 (A)指定の数と財源 351 (B)市町村の管理 352
U.バレスの“村の教会堂”保護運動 ――国会演説と嘆願書の署名運動 355
1.政教分離法による教会堂の危機 356
2.首相ブリアンとの対話、そして政府の見解 358
3.バレスの国会演説 360
4.近代人の精神生活の場所 365
5.嘆願書の署名運動――世論の形成に向けて 367
V.文化遺産の感情形成 370
1.村の教会堂のイメージ 371
2.村の教会堂と風景 ――「フランスの大地の身体的形象」 373
3.村の教会堂の世俗的役割 ――「フランスの大地の精神的形象」 376
4.二〇世紀初頭のナショナリズムの高揚 380
(@)小さな祖国≠フ発見 380 (A)審美家ではなくナショナリストとして 382
5.保護キャンペーンの反響 387
W.文化財保護行政の新たな展開 391
1.バレスによる国会での提言 391
2.歴史的記念物基金の設立 392
3.一九一三年一二月三一日の歴史的記念物法 394
(@)指定の拡大 ――「国益」から「公益」へ 395 (A)国の権限の強化 397
記憶の価値 398
結論 401
世紀転換期における文化遺産 401
文化遺産のための闘争史 403
文化遺産の感情 406
第三共和政、統合の時代 407
新たなヴァンダリスムの到来 410
あとがき 413
人名索引 1
注 7
文献リスト 86
一次資料(辞典・事典、美術館/展覧会、美術史/美術理論、文化財保護/美術行政、文学、歴史、
旅行カイド) 86
二次資料(辞典・事典、美術館、美術史/美術史家/美術理論/中世・ゴシック再評価、文化財保護、
美術行政、文学、歴史/社会) 97
データベース 109
図版リスト 110
巻末資料 114
1.第三共和政における美術省(一八七一〜一九一四年) 114
2.歴史的および芸術的価値を有する記念物と美術品の保護に関する一八八七年三月三〇日の法律
(『官報』一八八七年三月三一日掲載) 115
3.一八八七年三月三〇日の法律の施行規則に関する政令(『官報』一八八九年三月八日掲載) 117
4.歴史的記念物委員会の組織と委員の任命方式を定めた政令(『官報』一八八九年一月八日掲載) 119 |