トゥルン・ウント・タクシス その郵便と企業の歴史

[著]ヴォルフガング・ベーリンガー
[訳]木葉子

1490年、中欧に最初の国際郵便路線が創設される。このコミュニケーション革命により、「郵便制度の創始者」フランツ・フォン・タクシスは、「アメリカ発見者」コロンブスと並ぶ者とされた。マクシミリアン1世を始めとする歴代の神聖ローマ皇帝たち、そしてゲーテやシラーの書信を輸送したタクシス郵便とはいかなるものだったのか。377年にわたるその郵便史、さらに今日まで500年を超えるトゥルン・ウント・タクシス企業史および家族史を、厖大な文献と史料を駆使して、その全貌を明らかにする。

[書評]
《図書新聞》2014年10月11日、評者:菊池良生氏
『郵便史研究』第38号(2014年9月)、郵便史研究会、評者:星名定雄氏
『社会経済史学』81-4、社会経済史学会、2016年2月、評者:河野淳氏

定価=本体 6,200円+税
2014年4月10日A5判上製/608頁/ISBN978-4-88303-356-0


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[目次]

日本語版への序  i

序文 001

第1章 ヨーロッパにおける郵便制度の最初の世紀 007
   郵便制度の「発明」  008
   「Post」という語は何を意味するのか  009
   中世の旅行者と情報の往来  010
   郵便によるスピードの増加  011
   組織上の革新としての宿駅  013
   郵便制度発生のための諸条件  015
   一四九〇年、ハプスブルク家の政治はなぜ郵便制度を必要としたのか  016
   政治構造と情報伝達制度  019
   必要な専門知識を持っていたイタリア出身のタクシス家  021
   タクシス家が王マクシミリアンに雇われる  022
   『メミンゲン年代記』に記載された一四九〇年の郵便  025
   財務本庁の出納簿におけるマクシミリアンの郵便  026
   期限に遅れがちな支払者マクシミリアン  030
   タクシスと南ドイツの金融業界の大物たち  031
   一五〇一年以降のタクシス郵便の中心地ブリュッセル  033
   タクシス郵便の国法上の地位  035
   タクシス郵便の最重要路線  036
   一五〇五年以降のタクシス郵便の業績  039
   一五一六年の契約による郵便事業の拡大  040
   企業組織としての「会社」  042
   オランダ、スペイン、イタリアの会社のメンバーたち  045
   オーストリアとドイツの会社のメンバーたち  048
   ドイツの郵便路線で特別な地位にあったアウクスブルク  051
   帝国郵便と帝国都市―問題を孕んだ関係  053
   カール五世の世界帝国における郵便の最初の盛期  054
   レオンハルト・フォン・タクシス(在職=一五四三年―一六一二年)の時代の「郵便料金」と「送り主負担料金」  057
   ハプスブルク帝国の分割による郵便危機  060
   ネーデルラントの反乱とスペインの国家破産  061
   「郵便改革」の開始  066
   帝国郵便大権の問題  068
   ドイツの宿駅長たちのストライキ  071
   ヘノート、そして郵便が自力で資金調達する計画  074
   一五八五年のイタリアの郵便小包  076
   帝国郵便とタクシス家の保護者皇帝ルドルフ二世  078
   タクシス郵便の一世紀とその結果  084

第2章 帝国郵便と郵便総裁職 一五九七年から一八〇六年のトゥルン・ウント・タクシス 087
   郵便の普及と帝国郵便路線の分岐  088
   郵便網拡充の諸問題  090
   ブリュッセル―ヴェネチア国際路線の郵便  092
   帝国郵便総裁職の世襲制―「タクシス郵便」  096
   帝国郵便の経営者ヨハン・フォン・デン・ビルグデン  099
   一六二〇年代における帝国郵便初期の絶頂期  101
   三十年戦争時の郵便の女性リーダー、アレクサンドリーネ・フォン・タクシス  105
   ウェストファリア和平会議での郵便  109
   新郵便局はどのように経営されたのか  110
   領邦郵便の競合  114
   帝国国法学における皇帝の郵便大権の問題  119
   国際的な郵便契約  128
   十七世紀における書信輸送の安全性  130
   収益を上げる企業としての郵便  134
   啓蒙主義時代の「書簡文化」  138
   一七四二年の皇帝選挙の危機  143
   トゥルン・ウント・タクシスと秘密裏に行われた信書の監視  145
   帝国郵便の改善努力  147
   郵便馬車の発展  151
   毎日の郵便  153
   十八世紀末の道路状況の改善  155
   トゥルン・ウント・タクシスの収入源としての帝国郵便  157
   タクシスの直属統括郵便局と上級郵便局  160
   郵便利益の地域別および構造的分布  163
   雇用者としての帝国郵便  166
   民営企業としてのトゥルン・ウント・タクシス侯への批判  169
   フランス革命時における帝国郵便の遅咲きの盛期  175
   リュネヴィル講和条約と帝国代表者会議主要決議  176
   皇帝の退位と帝国郵便レーエンの消滅  180

第3章 トゥルン・ウント・タクシス郵便 一八〇六年―一八六七年 183
   帝国郵便は帝国の崩壊を生き延びる  184
   ナポレオン時代の郵便制度の分裂  185
   ライン連邦のトゥルン・ウント・タクシス「連邦郵便」計画  188
   ウィーン会議での郵便問題  191
   トゥルン・ウント・タクシス郵便の領域  196
   ドイツにおけるトゥルン・ウント・タクシス郵便の地位  200
   ドイツ連邦のトゥルン・ウント・タクシス「連邦郵便」計画  203
   トゥルン・ウント・タクシス郵便への一八四八年革命の影響  207
   トゥルン・ウント・タクシス郵便の収益性  210
   トゥルン・ウント・タクシス郵便の従業員たち  213
   トゥルン・ウント・タクシスとドイツ郵便連合  217
   技術革命―郵便馬車から鉄道へ  222
   一八四八年革命後のトゥルン・ウント・タクシスの政策  225
   一八六〇年代初期のトゥルン・ウント・タクシス郵便  227
   トゥルン・ウント・タクシス郵便の終焉  227
   トゥルン・ウント・タクシス郵便への追悼の辞  233

第4章 トゥルン・ウント・タクシス家の社会的上昇 企業史と家族史 237
   十五世紀のスタート  238
   イタリアの出自とタッシ家の国際性  242
   タクシス家の移住  246
   十六世紀初頭の貴族化  249
   十六世紀におけるタクシス家の社会的環境  252
   十七世紀初頭の帝国男爵身分と伯身分  253
   「トゥルン・ウント・タクシス」という名称の皇帝認可  255
   バロック時代の経営者  259
   帝国諸侯身分への昇格  262
   一七〇二年― 四八年 トゥルン・ウント・タクシス侯家の居住地フランクフルト  263
   最初の皇帝特別主席代理職(一七四二年― 四五年)と帝国郵便の親授レーエンへの昇格  265
   フランクフルトからレーゲンスブルクへの移住  267
   帝国議会での常任皇帝特別主席代理職(一七四八年―一八〇六年)  269
   帝国諸侯部会での議席問題  270
   十八世紀後半における体面維持の課題  272
   トゥルン・ウント・タクシス侯の廷臣団  278
   一八〇〇年頃の損失の多い十年間  279
   国家独立の喪失  281
   (トゥルン・ウント・)タクシス家の婚姻  284
   一八〇六年後の法的地位  287
   十九世紀における社会的地位  290
   十九世紀の宮廷社会におけるトゥルン・ウント・タクシス  293
   二十世紀におけるトゥルン・ウント・タクシス  299
   トゥルン・ウント・タクシス家の上昇―まとめ  301

第5章 領邦君主と土地所有者としてのトゥルン・ウント・タクシス 305
   「領邦なき侯」  306
   十六世紀と十七世紀における土地所有  307
   シュヴァーベンにおける領邦建設の開始  309
   一七八五年のフリードべルク・シェール伯領の購入  311
   一七八六年のトゥルン・ウント・タクシスの領邦君主任命  314
   小領邦の政府建設  315
   理性の小国―「トゥルン・ウント・タクシス帝国領邦」の立法  317
   一八〇三年の世俗化後のシュヴァーベンにおける領邦獲得  323
   政府から直領地行政へ  326
   バイエルンにおける新たな大土地所有者―一八〇八年の郵便国営化の結果  328
   もうひとつの補償―プロイセンのクロトシン侯領  331
   補償金の投資―ボヘミアの土地購入  332
   ネーデルラントの所有地売却  335
   土地購入決定のための基準  336
   クロアチアにおける大規模な所有地取得  338
   「不動産保有量変動会計報告」  340
   一八〇六年―一九一六年の所有地収入  343
   大土地所有者としてのトゥルン・ウント・タクシス  347
   二十世紀初頭の農業  351
   営林  353
   第一次世界大戦後の東部における接収  356
   二十世紀におけるドイツの私有大所有地  359
   一九四五年以後の西方志向―海外の土地取得  360
   森林所有と環境保護  362
   今日の農業と不動産  363
   郵便から土地所有へ  364

第6章 企業全体の歴史 367
   トゥルン・ウント・タクシス―ひとつの企業?  368
   企業の成長問題と構造改革  369
   十八世紀における企業経営  373
   一八〇〇年以前における郵便経営者のその他の事業  376
   一七九三年までの総会計課と資本の蓄積  379
   一七九四年―一八二九年における財務管理の危機の時代  384
   新しい経営法―「直属事務所」の創設  387
   一八二八年の企業・人事組織  390
   一八二九年以降の「整理された会計」  395
   「現金現在高決算」(一八二九年―七一年)  397
   的確な投資の開始  399
   郵便補償と土地負担償却による資本の発生  401
   トゥルン・ウント・タクシスの大ドイツ主義政策  404
   一八五〇年― 七〇年の「有価証券管理部」による投資  406
   製糖工場主としての土地領主  408
   鉄道建設へ続けられた出資  410
   「ピルゼン鉱山監督局」(マティルデン鉱山)  413
   一八七一年―一九一四年の整理された資本管理  415
   私有財産宣伝活動家としてのグルーベン男爵  419
   トゥルン・ウント・タクシス企業の「復古主義」  421
   一九一八年以後の地方化  424
   ドイツ連邦共和国における再興  426
   企業部門 営林と木材業  428
   企業部門 不動産と農業  429
   企業部門 金融サービスと資本ポートフォリオ  431
   「侯の」ビール―「トゥルン・ウント・タクシス侯ビール醸造会社」  432
   企業部門 製造下請け業  433
   トゥルン・ウント・タクシス企業の今日の経営  435
   郵便企業から資産管理へ  437

結語 439

訳者あとがき 453
   原注 68
   参考文献 40
   原典史料 36
   略語 34
   事項索引 31
   人名・地名索引 1


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