[目次]
謝辞 III
凡例 IV
図表・写真一覧 XIII
序論 音楽と社会をめぐって
(1).問題の所在:“音楽すること”の人類学的研究に向けて 1
(1)-1.はじめに 1
(1)-2.人類学および隣接諸科学における音楽研究の意義と課題 6
(1)-3.音楽学的アプローチから人類学的アプローチヘ 10
(1)-4.音楽と社会をめぐる理論的実践の試み 18
(2).先行研究と全体構成:インド音楽の社会的世界をめぐって 25
(2)-1.南アジアにおける人類学研究の潮流と本論文の位置づけ 26
(2)-2.音楽分類の制度的再帰性とナショナリズム 31
(2)-3.インド音楽のジャンルと研究対象 39
(2)-4.ガラーナーの先行研究と課題 43
(2)-5.調査資料と全体構成 46
第T部 ガラーナーとは何か
第1章 ガラーナーの定義と適用範囲
1-1.ガラーナーの物語から 53
1-2.ガラーナーの定義:音楽スタイルと家族の威信 58
1-3.ガラーナーの成立要件:日本の家元制度との比較 62
1-4.ガラーナーの適用範囲:分析的視点と認識的視点 65
第2章 音楽財産をめぐる社会関係――系譜、婚姻、師弟関係
2-1.何が秘されたのか:音楽的実践知の秘匿と独占化 73
2-2.誰に、どのくらい伝えられたか:親族のカテゴリーと弟子のカテゴリー 80
2-3.社会関係からみたガラーナーの3つの次元:系譜、婚姻、師弟関係 83
2-4.ハーンダーンおよびビラーダリーとしてのガラーナー:出自と婚姻関係 87
2-5.グル・シシャ・パランパラーとしてのガラーナー:入門儀礼と師弟関係 90
2-6.どのように伝えられ、いかに学習されたか:模倣から即興へ 95
2-7.ガラーナーの外縁とその拡大:養子、パトロン、芸妓 99
第3章 ガラーナーによって“われわれ”を語ること
3-1.音楽家の二つの言説:「ハーンダーン」と「バージ」 107
3-2.ガラーナー名をめぐる言説:その由来と意味 110
3-3.北インドにおける音楽家の位置づけ:音楽ジャンルとカースト 114
3-4.ガラーナーの“名乗り”と“名付け” 118
第4章 ガラーナーの社会史@ ムガル帝国前期――中央宮廷における音楽的権威の形成
4-1.デリー諸王朝期におけるガラーナーの4つの起源(社会音楽的カテゴリー) 124
4-2.ムガル帝国前期における楽師カテゴリーの編成:中央宮廷への楽師の集中と安定 128
4-3.音楽的権威セーニヤーの誕生とその系譜 136
4-4.ヒンドゥー教とイスラームの音楽観と楽師の改宗(なぜムスリムがヒンドゥー神讃歌を歌うのか) 141
第5章 ガラーナーの社会史A ムガル帝国後期――地方宮廷への楽師の分散と定着
5-1.ムガル帝国後期における宮廷楽師の動向:地方宮廷への分散とガラーナー形成 148
5-2.地域における寺院音楽と宮廷音楽の動向:ラージャスターンを中心として 152
5-2-1.ヒンドゥー寺院とその音楽への影響 153
5-2-2.地方宮廷の動向(1):ジャイプルにおけるガラーナーの成立過程 155
5-2-3.地方宮廷の動向(2):ジョードプルにおける女性楽師の系譜 159
5-3.楽師カテゴリーの再検討:カラーワント、カッワール、ダーディーとは何か? 164
第6章 ガラーナーの社会史B 英領インド帝国期――芸能カーストの“結晶化”と“ナウチ関連問題”
6-1.ムガル帝国から英領インド帝国へ 172
6-2.英領インド帝国期の国勢調査における音楽関係者の「カースト」とミーラースィー 173
6-3.“ナウチ関連問題”と売春幇助者としてのミーラースィー 183
6-4.「カースト」から“ガラーナー”へ 192
第U部 近代におけるインド音楽の社会空間
第7章 インド音楽とガラーナーの近代化――植民地近代における古典音楽の再構築
7-1.S.M.タゴールの革新:植民地下における音楽のオリエンタリズムとナショナリズム 199
7-2.バートカンデーの功罪:インド音楽の理論化と歴史の再構築に向けて 205
7-2-1.音楽的英知を求める旅路とその帰結 206
7-2-2.ガラーナーの音楽財産の顕在化と共有化に向けて 208
7-2-3.「ヒンドゥー音楽」とヒンドゥスターニー音楽 213
7-2-4.ヒンドゥーの理論とムスリムの実践の狭間で 217
7-3.パルスカルの実践:信仰と師弟関係に基づく音楽の実践 221
7-4.音楽の近代化に抗するものとしてのガラーナー 225
第8章 音楽家の生活基盤の変化と適応戦略――新しいパトロンとしてのマスメディア
8-1.音楽産業とラジオ放送の出現とその展開 232
8-1-1.レコード産業の発展 233
8-1-2.映画産業の興隆 236
8-1-3.ラジオ放送の開始 237
8-2.全インド・ラジオ放送(AIR)における改革とその反響 239
8-3.“新しいパトロン”としてのAIRのインパクトと音楽家の適応戦略 244
8-3-1. 音楽家の生活世界へのインパクト 244
8-3-2.音楽伝統や慣習に与えたインパクト 251
8-3-3.音楽家の社会的地位やイメージに与えたインパクト 252
8-4.音楽放送と音楽産業がガラーナーに与えたインパクト 254
第9章 インド音楽とガラーナーの近代化の帰結――音楽家の社会空間と日常的実践、その定量的・定性的把握
9-1.テキストとしての『インド音楽家名鑑』とその分析 258
9-2.『名鑑』の集計結果とその検討 260
9-2-1.音楽家の宗教・性別・世代分布 260
9-2-2.音楽家の分野別の宗教・性別分布 260
9-2-3.音楽家の職業分布・学位・音楽活動および宗教との関係 264
9-2-4.音楽家の専門分野の分布 265
9-2-5.専門分野別のガラーナーの所属 267
9-2-6.師弟関係と宗教、その相関と変化 269
9-3.定量分析からの考察:近代における音楽環境とガラーナーの社会関係の変化 272
9-4.定性調査からの考察:音楽環境の変化に対する音楽家の認識と適応戦略 277
第V部 サロードのガラーナーをめぐって
第10章 サローディヤーの歴史と伝承――系譜関係としてのガラーナー
10-1.サロードおよびサローディヤーとは何か? 290
10-2.サロードにおける「4つのガラーナー」の現況 296
10-3.アフガニスタンから北インドへ:パターン・サローディヤーの来歴 300
10-4.シャージャハーンプル・ガラーナーの系譜と伝承 306
10-4-1.シンザイー派の人々 307
10-4-2.ジャラールナガル派の人々 312
10-4-3.パール派とビジリープラ派の人々 314
10-5.ラクナウ・ガラーナーの系譜と伝承 315
10-5-1.バグラーシ派の人々 318
10-5-2.ドールプル派の人々 325
10-6.グワーリヤル・ガラーナーの系譜と伝承 326
10-7.マイハル・ガラーナーの系譜と伝承 327
10-8.歴史に埋もれたガラーナー 330
10-9.サローディからサローディヤーヘ 332
第11章 婚姻関係と師弟関係の相関とその変化――婚姻連帯としてのガラーナー
11-1.音楽財産の移動と婚姻関係 335
11-2.シャージャハーンプル・ガラーナー内の婚姻関係と師弟関係 339
11-3.ラクナウ・ガラーナー内の婚姻関係と師弟関係 342
11-4.異なるガラーナー間の婚姻関係と師弟関係 347
11-5.新たな婚姻連帯がもたらす演奏技法と音楽の変化 351
11-6.「形成期後期」から「ポスト形成期」にかけての社会環境と伝承形態の変化 354
第12章 実践共同体における学習とアイデンティティ――師弟関係としてのガラーナー
12-1.音楽的実践知の詳述困難性 359
12-2.音楽的実践知の身体化と音楽スタイルの再生産 362
12-3.音楽的実践知の学習プロセス:いつ、誰から、どのように学んだか 367
12-4.実践共同体の再生産と変容をめぐって 371
12-5.師弟関係の連鎖における歴史性とアイデンティティ化のプロセス 374
12-6.学習者の動機と後継者の問題 380
第13章 アイデンティティとポリティクス――イデオロギーとしてのガラーナー
13-1.出自とガラーナーの言説をめぐって 385
13-2.バンガシュとドームの間:社会的カテゴリーと社会関係 392
13-3.スティグマとアイデンティティ・ポリティクス 399
13-4.再帰的世界において“音楽すること” 402
第14章 新しい“ガラーナー”の可能性と――音楽伝統における創造性
14-1.親族ネットワークの変化と 伝統的ガラーナーの衰退 407
14-2.非世襲音楽家による、新しい“ガラーナー”の興隆 410
14-3.新しい“ガラーナー”と再帰的で美的なアイデンティティ 416
14-4.伝統的スタイルと個人の創造性 422
14-5.ガラーナーを超えて:音楽伝統と創造性の狭間で 427
結論 近代インドにおいて“音楽すること”
1)歴史の中のガラーナー:マクロ・レベルにおける音楽と社会の再生産 434
2)共同体としてのガラーナー:メゾ・レベルでの社会関係と学習過程 438
3)アイデンティティ化の源泉としてのガラーナー:ミクロ・レベルでの実践と再帰性 442
4)結語にかえて:再帰的世界における音楽の創造性 448
巻末資料A:ラーガ音楽の楽曲構造と演奏形式 453
巻末資料B:フォーマル・インタビューの概要 470
巻末資料C:ヒンドゥスターニー音楽のガラーナー形成史 475
主要用語集 477
参照文献 481
あとがき 510
主要人名索引 515 |