[目次]
はしがき 10
第1章 序論――理論的背景と問題の所在 13
1 法人類学の軌跡――慣習法研究から法多元主義へ 15
2 法多元主義の功罪 19
3 拡大する法的領域と人類学 21
4 法人類学の再定義 24
5 本書の構成 27
第2章 インドネシアにおける法 29
1 多元的法体制の要素としてのアダット 31
2 分けるアダット、まとめるアダット 35
法学者によるアダットへの注目 36
「まとめる」アダットの称揚と、「分ける」アダットの脱政治化 40
3 フクムとインドネシア性、正当性 43
4 ポスト・スハルト期のフクムとアダット――司法制度改革とアダット復興運動 47
5 アダットの再評価とフクムの広がり 50
第3章 メダンの発展、アダット間の関係 53
1 多民族都市、メダン 54
2 東スマトラの港市国家と後背地 61
3 タバコ・プランテーションの繁栄と衰退 63
4 バタック 65
5 メダンの発展 66
第4章 訴訟が行われる場所 69
1 司法制度と統計資料からみる地方裁判所 71
2 メダン地方裁判所の様子 74
3 地方裁判所の業務とその特徴 81
傍聴席の様子 83
携帯電話の利用 85
4 夫婦間の名誉毀損事件 86
事件の概要 86
法廷でのやりとり 88
5 可視化されないアダットと、閉ざされた空間のない裁判所 92
第5章 ADR(裁判外紛争処理)の受容と地方裁判所での反応 97
1 フクムとアダットの風景 100
ある国際シンポジウム 100
法学部大学院のリサーチ・コロキアム 102
2 司法政策におけるADR――アダットという法的資源 106
法整備支援によるADRの地理的拡大 108
インドネシアにおける展開 111
3 地方裁判所におけるADR――遠ざかるアダット 113
4 当事者にとってのADR――「未済」という収束 119
継続する交渉とADRの新鮮味のなさ 119
判決以外の形式による紛争の収束 121
訴訟のマネジメント 123
5 ここにはない、でもどこかにはあるアダット 126
第6章 スルタン租借地をめぐる訴訟群の成立――東スマトラの土地紛争にみる争点の移動 131
1 ポスト・スハルト期の土地紛争とアダット復興 132
土地紛争の概略 134
2 東スマトラの土地紛争――「待つ民」の活動とそのロジック 136
「待つ民」とは―タバコ・プランテーションと周辺住民 137
アバ・ナウィが歩いた道 140
「アダットの土地」の行き詰まり 143
3 スルタン租借地の争点化 145
スルタン租借地への注目 149
事例(1)タマン・マリブ訴訟――スルタン租借地という問題系の成立 150
事例(2)国軍の官舎訴訟――問われるアダット共同体 153
4 「待つ民」とスルタンの接近 157
事例(3)タンジュン・ムリア訴訟――「待つ民」への承認 157
タンジュン・ムリア訴訟後の変化――協力関係の再構築 161
「待つ民」とスルタンの協力関係を支えるロジック 166
5 「アダットの土地」から「スルタン租借地」へ 171
第7章 結論――不断に引きなおされる境界線 177
1 インドネシアにおける国家法と慣習法 178
2 新たな法人類学に向けて 183
3 「法の創造」の人類学 186
参照文献 191
あとがき 200
索引 202 |