ポスト・スハルト期インドネシアの法と社会

裁くことと裁かないことの民族誌

[著]高野さやか

国家法と慣習法は、現在どのような関係にあるのか。北スマトラ州の多民族多文化都市メダンの地方裁判所からみた国家法(フクム)と慣習法(アダット)の動態を法人類学の視点から読み解く。

[書評・紹介]
『法社会学』第82号、2016年、評者:荒木亮氏
『文化人類学』81/4、2017年、評者:中空萌氏

[受賞]
日本法社会学会第17回学会奨励賞(著書部門)

定価=本体 4,000円+税
2015年2月28日
A5判上製/208頁/ISBN978-4-88303- 378-2


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[目次]

はしがき 10

第1章 序論――理論的背景と問題の所在 13
  1 法人類学の軌跡――慣習法研究から法多元主義へ 15
  2 法多元主義の功罪 19
  3 拡大する法的領域と人類学 21
  4 法人類学の再定義 24
  5 本書の構成 27

第2章 インドネシアにおける法 29
  1 多元的法体制の要素としてのアダット 31
  2 分けるアダット、まとめるアダット 35
     法学者によるアダットへの注目 36
     「まとめる」アダットの称揚と、「分ける」アダットの脱政治化 40
  3 フクムとインドネシア性、正当性 43
  4 ポスト・スハルト期のフクムとアダット――司法制度改革とアダット復興運動 47
  5 アダットの再評価とフクムの広がり 50

第3章 メダンの発展、アダット間の関係 53
  1 多民族都市、メダン 54
  2 東スマトラの港市国家と後背地 61
  3 タバコ・プランテーションの繁栄と衰退 63
  4 バタック 65
  5 メダンの発展 66

第4章 訴訟が行われる場所 69
  1 司法制度と統計資料からみる地方裁判所 71
  2 メダン地方裁判所の様子 74
  3 地方裁判所の業務とその特徴 81
     傍聴席の様子 83
     携帯電話の利用 85
  4 夫婦間の名誉毀損事件 86
     事件の概要 86
     法廷でのやりとり 88
  5 可視化されないアダットと、閉ざされた空間のない裁判所 92

第5章 ADR(裁判外紛争処理)の受容と地方裁判所での反応 97
  1 フクムとアダットの風景 100
     ある国際シンポジウム 100
    法学部大学院のリサーチ・コロキアム 102
  2 司法政策におけるADR――アダットという法的資源 106
     法整備支援によるADRの地理的拡大 108
     インドネシアにおける展開 111
  3 地方裁判所におけるADR――遠ざかるアダット 113
  4 当事者にとってのADR――「未済」という収束 119
     継続する交渉とADRの新鮮味のなさ 119
     判決以外の形式による紛争の収束 121
     訴訟のマネジメント 123
  5 ここにはない、でもどこかにはあるアダット 126

第6章 スルタン租借地をめぐる訴訟群の成立――東スマトラの土地紛争にみる争点の移動 131
  1 ポスト・スハルト期の土地紛争とアダット復興 132
     土地紛争の概略 134
  2 東スマトラの土地紛争――「待つ民」の活動とそのロジック 136
     「待つ民」とは―タバコ・プランテーションと周辺住民 137
     アバ・ナウィが歩いた道 140
     「アダットの土地」の行き詰まり 143
  3 スルタン租借地の争点化 145
     スルタン租借地への注目 149
     事例(1)タマン・マリブ訴訟――スルタン租借地という問題系の成立 150
     事例(2)国軍の官舎訴訟――問われるアダット共同体 153
  4 「待つ民」とスルタンの接近 157
     事例(3)タンジュン・ムリア訴訟――「待つ民」への承認 157
     タンジュン・ムリア訴訟後の変化――協力関係の再構築 161
     「待つ民」とスルタンの協力関係を支えるロジック 166
  5 「アダットの土地」から「スルタン租借地」へ 171

第7章 結論――不断に引きなおされる境界線 177
  1 インドネシアにおける国家法と慣習法 178
  2 新たな法人類学に向けて 183
  3 「法の創造」の人類学 186

参照文献 191
あとがき 200
索引 202


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