ゴジラ論ノート

怪獣論の知識社会学

[著者]ましこ・ひでのり

戦後日本列島に「襲来」するゴジラをめぐる知識社会学――
誕生から 60 余年をへて戦後日本サブカルチャー史に確固たる位置を占める「ゴジラ」シリーズはじめ特撮怪獣映画・テレビドラマ。これらの作品群のかかえる寓意や政治性 - 思想性をめぐりさまざまな言説がくりひろげられてきた。制作陣・観衆が共有した戦争体験・戦争観や「南方幻想」など地政学感覚や、歴史意識を整理しながら、軍事大国化への夢想やオリエンタリズムなど、批評家たちの無自覚な自己投影をえぐりだす。

定価=本体 1,700円+税
2015年5月20日四六判並製/232頁/ISBN978-4-88303-381-2


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[目次]

凡例≒構成と注意 7

はじめに 9

1章 「戦後」のおわりと“Kaiju”のグローバル化 13
  1-1 Wikipediaがうつしだす“Kaiju”のグローバル化と、その思想史的意義 14
  1-2 「モンスター」概念の検討 23

2章 「怪獣の襲来」というモチーフの背景:被害者意識と加害者意識への言及の政治性 27
  2-1 “Kaiju”の「基本」 28
  2-2 破壊される都市の寓意と評論の政治性 33
     【コラム2-1:初代ゴジラの「進路」】 54
     【コラム2-2:核兵器時代初期の楽観主義ノート】 58
     【コラム2-3:アメリカ国民の被害妄想】 59
     【コラム2-4:ゴジラ解釈の迷走】 60

3章 アメリカ人のゴジラ受容 63
  3-1 アメリカの大衆の知性 64
  3-2 親日派アメリカ人に代表されるゴジラ受容 72
  3-3 アメリカ人の「恐竜」幻想と怪獣 76

4章 B級SF映画を素材とした右派たちの恣意的解釈(戦争/軍備)と、大学人の懸念 81
  4-1 右派層による、大衆文化への粘着と攻撃の背景としての恣意的解釈 82
  4-2 ゴジラ作品が自明視する国軍 93
  4-3 右派層による、ゆがんだ「戦争責任」論 98
  4-4 大学人が危惧するゴジラ作品の変容 105
  4-5 ゴジラ作品の軍事力讃美と右派の自慰的言動 109
     【コラム4-1:とわれないヒロヒトの戦後の言動】 111
     【コラム4-2:佐藤健志の「ウルトラ」シリーズへの粘着ぶりとナショナリズム】 113
     【コラム4-3:佐藤健志ら右派による、マッドサイエンティストの正当化】 114

5章 ゴジラ/モスラに、かげさす安保体制 117
  5-1 「ゴジラ」シリーズで、ひたかくしにされる在日米軍 118
  5-2 モスラに、かげさす安保体制 120
  5-3 徹底的にふせられる安保体制のかげ 124
     【コラム5-1:えがかれた/えがかれなかった自衛軍や米軍の政治的含意】 128
     【コラム5-2:こどもむけB級作品の含意】 130
     【コラム5-3:核イメージの風化問題】 132

6章 「南方」幻想/南島イデオロギーとそのかたられかた 135
  6-1 「南方から襲来する怪獣」という定番イメージの知的水脈 136
  6-2 「南洋」からはずされる「琉球列島」 139
  6-3 被差別者を母体とした特撮怪獣作品の重層的政治性 142
  6-4 オリエンタリスティックな「スパイス」としての恣意的援用 148
     【コラム6-1:ゴジラ映画から排除された大陸の政治的含意】 169
     【コラム6-2:オリエンタリズムとしての金城哲夫論】 171

7章 特撮怪獣作品などの宿命と、その虚構ゆえの可能性 175
  7-1 虚構のリアリズムと政治性 176
  7-2 虚構と歴史意識のポリティクス 180
  7-3 時空上の「対岸の火事」(ひとごと意識) 183
  7-4 虚構=自由ゆえの取捨選択のポリティクス 186
     【コラム7-1:『キングコング対ゴジラ』がてらしだす無自覚なレイシズムの伝染】 193
     【コラム7-2:ゴジラ映画史にとって有害無益な本質主義】 194

みじかい終章 怪獣作品の寓意と怪獣論の政治性をとう意味 197

     あとがき 207
     参考文献 211
     索引 218


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