女教皇ヨハンナ

伝説の伝記〈バイオグラフィー〉

[著者]マックス・ケルナークラウス・ヘルバース
[訳者]藤崎衛エリック・シッケタンツ

女性であることを偽って即位し出産した女教皇がいた――。
伝説の女教皇ヨハンナの鮮烈な生涯は、時代に応じて大きく異なる意味を託され、中世から現代まで語り継がれてきた。フィクションを現実の一部として扱う現代歴史学の手法を用いて「女教皇伝説」をひもとく。日本語版附録として「女教皇伝説・史料編」(藤崎衛+森本光訳)を収録。

[書評・紹介]
《図書新聞》2016年1月23日号、評者:山辺規子氏
『西洋史学』263号、2017年、評者:印出忠夫氏

定価=本体 3,000円+税
2015年9月8日A5判上製/カラー口絵8頁+232頁/ISBN978-4-88303-388-1


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[目次]

序言 本書のねらい  7

第一章 実在の人物か? 虚構の人物か? ――実話から驚異譚へ  11
  小説と映画の中の女教皇  12
  歴史学によるとらえ方  16
  異なる解釈  18
  イグナーツ・フォン・デリンガーと女教皇ヨハンナ伝説  20
  性別判定の伝説  29

第二章 女教皇は実在できたか ――歴史的舞台としての九世紀  37
  不安定な時代のローマ ― 女教皇の前提条件  38
  『教皇の書』の伝来 ― 教皇たちの伝記  48
  写本の分析 ― 女教皇が実在した証拠か  50
  アナスタシウス・ビブリオテカリウスとローマの知識人サークル ― 女教皇の仲間たち?  55
  女教皇はレオ四世直後に在位したのか ― 時代的位置づけをめぐる問い  61
  女教皇の名前、出自、修学  63
  九世紀という時代 ― 女教皇が実在する余地はあったのか  69

第三章 女教皇伝説の成立 ――托鉢修道会の説教から中世後期における伝説の影響まで  71
  オパヴァのマルティヌスにおける女教皇  79
  オパヴァのマルティヌスにおける女教皇伝説の特徴  84
  オパヴァのマルティヌスと教皇の肉体的はかなさをめぐる思想  90
  最初の痕跡 ― 小括  97
  中世後期における女教皇伝説の影響  98

第四章 女教皇の新しい役割 ――十四・十五世紀の教会政治上の対立における歴史的・法学的主張  105
  ヨハンナはケレスティヌス五世のような天使教皇だったのか  105
  アヴィニョンの教皇たち ― 女教皇を利用した帝国批判と教会批判?  108
  ローマとアヴィニョンに並び立つ教皇 ― ヨハンナはシスマを解決できるのか?  112
  教会批判・教皇批判のための道具としての女教皇? ― ウィクリフとフス  118
  女教皇によるシスマの終焉? ― 教皇、枢機、そして普遍公会議  122
  武器としての、歴史的論拠としての女教皇  126
  女教皇ヨハンナと十五世紀ローマにおける人文主義  130
  悪魔に誘惑されたのか、それとも聖なる女預言者だったのか ― 語りと文学  134

第五章 道徳上の怪物か、あるいは歴史上の怪物か ――宗教改革期の宗派間論争から近代文学まで  139
  プロテスタントの歴史叙述における女教皇  142
  すべては単なる伝説なのか? ― カトリック護教論者による反応  151
  宗派的利害関心 ― 暫定的結論  156
  プロテスタント・カトリック間の論争  157
  近現代文学における女教皇  159

第六章 あとがきにかえて ――われわれに女教皇は必要か?  167

  訳者あとがき  177

  索引  1
  人名索引  1
  地名・事項索引  5
  注  8
  参考文献  19
  女教皇に言及した史料一覧(一四八〇年頃まで)  30
  附録 女教皇伝説・史料編  33
  図版出典  48


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