在と不在のパラドックス

日欧の現代演劇論

[著者]平田栄一朗

逡巡する胆力を鍛える、観劇という遊戯的経験のダイナミズム――。
演劇理論におけるプレゼンス論とアブセンス論を踏まえながら、観客が舞台作品を見る際に衝動や葛藤に駆られる内的で動的なプロセスの多様性を、上演分析によってあざやかに解き明かす。

[書評・紹介]
《週間読書人》「2016年上半期の収穫から」2016年7月22日、選者:長野順子氏
《週間読書人》2016年8月5日、評者:高橋宏幸氏
《図書新聞》2016年9月3日、評者:寺尾格氏

定価=本体 3,000円+税
2016年5月10日
四六判並製/398頁/ISBN978-4-88303-406-2


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[目次]

  序章 在と不在の複眼的演劇論 ――本書の目指すところ  9

理論編
   第一章 プレゼンス ――アブセンス論争  25
      一 演劇学・美学の代表的なプレゼンス論  25
      二 プレゼンス批判とアブセンス論  44
      三 在と不在の二重性  57
   第二章 理論的前提とモデルケース  64
      一 モデルケース ――ク・ナウカの『王女メデイア』  64
      二 逡巡のダイナミズム  77
      三 観客の本質的な矛盾  85
      四 自己省察とダイナミズム  90
      五 逸脱・過剰の演出効果  92

プレゼンス編
   第三章 出現の不確実 ――ストアハウスカンパニーの舞台作品を例に  101
      はじめに ――プレゼンス編に際して  101
      一 フィジカル・シアターの過剰と不在  103
      二 プレゼンスの不確実性  108
      三  出現の悲劇性  120
      四 「不穏」な「宙吊り」状態  131
      五 プレゼンス論とアブセンス論の新たな側面  135
   第四章 過剰と鬱 ――フランク・カストルフ演出『終着駅アメリカ』におけるパラドキシカルな生き延び策  139
      はじめに  139
      一  過剰な表現と鬱  140
      二 不在の自己破壊的エネルギー  145
      三 サバイバルのパラドキシカルな二重性  156
      四 主体における過剰と不在  162
      五 観客のパラドックス  167
   第五章 死者と生者の哀悼劇 
   ――ニードカンパニーの『ディア・ハウス』における自己分裂の演技と観客の想像力  177
      はじめに  177
      一 自己呈示のプレゼンテーションと不在  179
      二 自己分裂と不確実性  184
      三 不確実な死者像  196
      四 死者と生者の共同体  208

アブセンス編
   第六章 身体の救出可能性と挫折のあいだ ――ローラン・シェトゥアーヌ振付の踊らない身体  217
      はじめに ――アブセンス編に際して  217
      一 脱身体への抵抗  218
      二 観客の活発な知覚  224
      三 部分と全体  233
      四 自己呈示 (Sich-zeigen) と身体像のあいだ  238
   第七章 ネガティブな「ある」と「ない」のはざま ――クリストフ・マルターラー演劇の持続性と歴史的時間  249
      はじめに ――「不在」と「遅滞」の演劇  249
      一 プレゼンスとアブセンスの強い否定性  252
      二 観客の共犯者性  265
      三 歴史的変遷におけるプレゼンスとアブセンス  271
   第八章 「不在の像」との「つきあいかた」 ――マレビトの会のカタストロフィー演劇  287
      はじめに  287
      一 カタストロフィーの不在  288
      二 「不在の像」=不可視の像  295
      三 孤立者の「パッション」  305
      四 カタストロフィーをめぐる(不)可能性  312
   終章 受動の活動 ――「ある」と「ない」をめぐる観客の可能性  321
      一 「ある」と「ない」の両義性  321
      二 揺らぎのダイナミズム  323
      三 受動ゆえの力  332
      四 異他の経験  342

           注  347
           文献一覧  378
           初出一覧  392
           あとがき  393


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