危機言語へのまなざし

中国における言語多様性と言語政策

[編者]石剛

多民族・多言語多文字社会である中国における「調和的言語生活の構築」とは、何を意味しているのか。言語政策の現代的展開を追いつつ、その実施過程に現れた諸問題と「言語意識」の危機的状況を明らかにするとともに、圧倒的力を持つ「普通話」(=国語)のもとでの危機に瀕した(方言を含めた)少数言語の現状と、その位置づけを展望する。

定価=本体 3,000円+税
2016年9月5日
A5判並製/204頁/ISBN978-4-88303- 409-3


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[目次]

まえがき 今、なぜ危機言語か/石剛  1

言語意識と現代中国と/石剛  5
   1. はじめに  5
   2. 「語言生活派」というブランド  6
   3. 社会言語学研究の今日的状況  8
   4. 言語政策発想の転換  12
   5. 言語政策の実行過程に見る諸関係  14
   6. 言語政策と言語意識  16
   7. おわりに  18

危機言語の認定と保護/黄行  21
   1. 国家言語と民族言語  21
      1.1. 言語同一性と同一言語の認知  21
      1.2. 国家言語  23
      1.3. 民族言語  25
      1.4. 国家言語と民族言語への帰属認識  31
   2. 危機言語の基準  32
      2.1. 危機言語  32
      2.2. 言語の認定基準  34
      2.3. 中国の言語グループと民族グループ  38
      2.4. 危機言語の認定と保護  42
   3. 少数民族言語使用状況調査  47
      3.1. 少数民族言語文字調査状況  47
      3.2. 少数民族言語文字政策  57
      3.3. 中国少数民族言語の使用発展状況  63
      3.4. 少数民族言語文字使用状況調査の理念  66

中国における言語の多様性と言語政策/周慶生  73
   1. はじめに−中国における言語政策の「主体性」と「多様性」  73
   2. 「主体多様」言語政策とその受容  76
      2.1. 建国時期の言語政策  76
      2.2. 文化大革命時期における言語政策  83
   3. 改革開放下の言語政策  87
      3.1. 普通話の等級標準化  88
      3.2. 少数民族言語文字の規範化  89
   4. 国家通用言語文字法の公布とその実施  92
      4.1. 『言語法』の主な原則  93
      4.2. 『言語法』の実施  94
   5. 現代中国の言語政策とその実施  95
      5.1. 方言使用の実態  96
      5.2. 少数民族言語使用と二言語教育  97
   おわりに  100

言語の危機と言語の権利―付録:中国危機言語データベース基準(案)/範俊軍  107
   少数民族の言語危機と言語人権についてに  107
      1. 危機言語の歴史趨勢と現実的緊迫性  107
      2. 危機言語と言語生態学の視角  109
      3. 危機言語の保護の人権視角  111
   付録:中国危機言語データベース・デジタル基準(案)  118
      1. 中国危機言語データベース・デジタル基準説明  118
      2. 中国危機言語データベース・デジタル基準  121

潮州語、温州語、そして播州語―その現状と言語多様性のゆくえ/寺尾智史  153
   1.45 年前の、そして 45 年後の『タイからの手紙』―バンコクから  153
   2. 温州語のネットワーク―世界に散らばる商用リンガ・インテルナ  157
   3.90 年後の『方言矯正方案』―華僑/華人を受け入れた側の言語再考  167

新疆ウイグル自治区における漢語教育と検定試験― HSK 、 MHK の比較分析から見た政策変容/王瓊  173
   はじめに  173
   1.HSK 体系について  174
      1.1.HSK の定義  174
      1.2.HSK の構造  176
      1.3.HSK による「民漢兼通」の新基準  179
   2.MHK 体系について  180
      2.1.MHK の定義と内容  181
      2.2.MHK の構造  183
      2.3. 構造からみた MHK の動向―「民漢兼通」の最終的な意味  186
      2.4.MHK による新たな「民漢兼通」基準の設定  187
   おわりに  189

あとがき 言語意識の危機/石剛  193


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