[目次]
第1章 序論――反日、親日、あるいは哈日 001
第1節 哈日現象に関する先行研究の考察 002
台湾における先行研究 003
「哈日」=親日・日本大衆文化の導入=文化的植民支配か? 006
日本における「哈日」研究 010
「歴史性」を無視した研究の現状 010
第2節 問題提起:台湾における哈日現象の特殊性 012
東アジアにおける日本大衆文化の発展 012
日本大衆文化の海外進出についての解釈およびその限界 014
東アジアの反日教育およびそこに現れる台湾「哈日」現象の特殊性 016
本論における研究方向 020
第3節 章節の構成 021
各章の梗概 021
理論の枠組み 024
研究方法 026
第2章 台湾における日本大衆文化の発展史についての一考察 033
第1節 日本植民地時代 036
第2節 台湾における日本大衆文化のアンダーグラウンド時代 041
2-1.1945-1972 年 041
国民党政府による接収および台湾統制 041
言語統制政策 046
2-1-A 漫画 048
戦後における台湾漫画市場 049
「漫画審査制」の施行 051
2-1-B 流行歌 053
2-1-C 映画 055
戦後から日台断交までの日本映画上演への制限 055
台湾映画制作上における日本技術の導入 057
日本映画の全面上演禁止およびアメリカ映画の優越性 058
2-1-D まとめにかえて 060
2-2.1972 年から 1987 年の戒厳令解除まで 061
「郷土文学論戦」および「台湾」の顕在化 062
日台断交および日本文化禁止令の施行 066
台湾経済の発展および大衆消費社会への進展 069
2-2-A 漫画とアニメ 069
2-2-A-1 漫画 069
漫画審査制の施行および日本漫画の優位化 069
アンダーグラウンド時代における日本漫画の販売ルート 072
「漫画清潔運動」 073
2-2-A-2 アニメ 075
「日本の手掛かり」の抹消 076
日本アニメ放送における第 2 次輸入制限 078
2-2-B ビデオ、「第四台」、日本の番組と日本ドラマ 079
2-2-B-1 ビデオ 079
日本番組のビデオ市場の勃興 080
日本番組のビデオレンタル状況 081
2-2-B-2CATV (「第四台」) 083
CATV 市場の出現および国民党による取り締まり 083
CATV とレンタル業との関係 086
2-2-C 流行歌曲とアイドル 089
学園民謡の出現と流行歌市場の商業化 090
アンダーグラウンド時代における日本(アイドル)音楽の発展状況 091
2-2-D キャラターグッズとファッション誌 094
キャラクターグッズの流行化 094 /日本ファッションの伝播 097
2-2-E まとめにかえて 097
第3節 日本文化の解禁と哈日ブーム 100
「台湾」と「日本」の顕在化 101
いわゆる「哈日」ブーム 104
「哈日/哈日族」の定義における曖昧性および論争 108
マスメディアにおける「哈日」の立場 111
「哈日」と台湾的アイデンティティ 113
海賊版問題の発生 118
3-1. 漫画とアニメ 123
日本漫画の再登場 123
日本漫画の版権化時代 126
漫画市場の不景気 131
漫画関連商品:@キャラクターグッズ 133
Aアニメ 134
Bゲーム 136
3-2. 日本ドラマ 137
CATV 放送システムの合法化および合併 137
放送権付日本ドラマの放送開始 139
日本文化禁止令の解除および日本ドラマブーム 141
日本専門チャンネルの設立 145
高額放送権料および日本ドラマの不景気化 146
韓国ドラマの導入および市場の占有:「韓流」 148
「台湾偶像劇」の出現 152
日本ドラマ放送の斜陽化 155
3-3. アイドル 157
日本音楽の台湾市場への正式進出 158
韓国アイドル歌手がもたらした第一次韓流 160
日本ジャニーズアイドルの台湾上陸ともたらしたブーム変化 161
アイドル/音楽部門における哈日族と哈韓族の比較 163
台湾アイドルの出現 165
第4節 結びに代えて 167
台湾における日本以外の外国文化 168
台湾における「大衆文化」の概念形成に及ぼした日本大衆文化の影響力 170
問題意識の再提起:日本大衆文化が長期にわたって台湾で発展しえた基礎とは? 174
第3章 「祖国」、中国化と「日本」イメージの変化 175
第1節 日本植民地時代における「日本」イメージと「祖国イメージ」の弁証 179
日本植民地時代における台湾人への統制 179
台湾人の日本に対するアンビバレンス 181
台湾と韓国における被植民の差異 183
日本植民地時代における「祖国」イメージおよびその形成 185
戦後初期における台湾の「祖国」イメージ 188
中国側の台湾に対する印象 189
本節のまとめ:台湾における「祖国」イメージと中国における「台湾」イメージの矛盾 192
第2節 終戦直後、「日本」イメージの再変化 194
「祖国」のイメージと実像との衝突 194
戦後国民党政府による接収後における台湾社会の状況 196
ブルデューとシュッツの理論による戦後の台湾と中国の融合失敗の理由を探求 198
戦後における「漢民族共同体」の崩壊および省籍対立の発生 204
「血縁民族」における虚構性 207
「日本」イメージの好転化 210
228 事件 211
「日本」を「内」・「外」集団区分の象徴的基準とみなす 214
本節のまとめ 218
第3節 二つの集合的記憶の闘争、および日本に関する記憶の変容 220
国民党による中国化政策 220
中国化政策の目的:「漢民族共同体」という集合的記憶の創造 224
中国本位である集合的記憶の中の「日本」イメージ 226
日本に対する記憶/経験の強制的忘却 229
台湾人における日本植民地時代経験の身体化および潜在化 231
国民党抑圧下において対抗的記憶を保存しえた原因 233
身体化記憶の再生産 236
戦後世代に内在する二種の集合的記憶 238
表面化する日本への記憶およびその変化 240
「台湾意識」のめばえおよびそれに包含された「日本」イメージ 243
外省人の「台湾意識」に対する反動 248
二つの集合的記憶の相互浸透 248
戦後世代における意識変化の可能性 252
戦後世代に内在する二つの集合的記憶の並存と闘争 255
歴史的連続性の断裂の発生と日本への好感 257
本節のまとめ:反日教育と身体化による日本に対する好感 260
第4節 結びに代えて 263
「祖国」イメージの幻滅と中国化政策の実施 263
日本への好感の身体化と再生産―哈日ブームの基礎 265
問題意識の再提起:日本大衆文化の哈日ブームにおける影響力とは? 266
第4章 消費と大衆文化によって構築された「日本」イメージ 269
第1節 日本文化禁止令の時代における日本大衆文化の発展 274
台湾大衆文化市場の需要および供給の欠乏 274
アンダーグラウンド時代における日本大衆文化の導入および普及:ファンの力 277
大衆文化の特質:
@消費者(ファン)のアイデンティティ 278
Aファンの結束力 281
B理性を失った金銭投入を促す 285
C情熱と「非日常性」:日常世界からの避難所 287
D「カーニバル的な性質」:情熱の誘発 290 /本節のまとめ 293
第2節 日本大衆文化が表現した日本イメージ 296
2-1. 日本漫画に表現された「日本」イメージ 299
日本漫画の分析例 300
日本漫画の特質:非日常性 309
日本漫画の「文法」:抽象性と記号的表現 310
日本漫画の「叙述体系」 314
日本漫画の叙述体系の持ち合わせる影響力 317
日本漫画による信頼性および消費力 319
まとめにかえて 321
2-2. 日本ドラマに表現された「日本」イメージ 323
日本ドラマの分析例 327
日本ドラマの吸引力 338
日本ドラマによる「広告」的「日本」イメージ 339
日本ドラマが促した消費行為 343
想像と実像とのギャップ 349
まとめにかえて 351
2-3. 日本漫画と日本ドラマが演じた「日本」イメージ―まとめ 353
第3節 「日本」が一種のブラントになる意義とその維持 359
日本商品における信頼度およびテイストの構築 361
回答者の「日本」商品への印象 363
「日本」というブランドの誕生 364
ブランドの作用:意味の分かち合い 365
「日本」というブランドの成立条件:豊かさと厚み 367
独立した記号となる「日本」ブランド 369
大衆文化における「擬中立性」 372
アイデンティティの対象および意義付与の源となる大衆文化の備え持つ力と限界 376
ブランドおよびブームの維持 378
@鮮度と意味付与における作用 379
A欲望を満たす可能性:「物」に対する憧れと所有欲の誘発 382
B一貫性の維持 387
C同時間性の重要性 388
D代替商品の存在 390
哈日ブームと韓流の比較:哈日ブームの特異性 392
本節のまとめ:ポスト哈日ブームにおける「日本」ブランドの地位 395
第4節 結びに代えて 397
台湾消費社会の形成 397
日本大衆文化の輸入と消費欲望の満足 398
「日本」ブランドの形成要素:「厚み」 400
「日本」ブランドの虚像性および哈日ブームの日常化 402
第5章 結論――虚像と実像の間 405
戦後台湾における「祖国」イメージと中国における「台湾」イメージの衝突 406
中国化政策と日本文化禁止令 408
反日教育下における日本への好感の四つの要因 409
日本大衆文化を中心とする哈日ブームの出現 413
「日本」を独立したブランドとして 415
哈日ブームの斜陽化 417
日本大衆文化の東アジアにおける発展の共通性および台湾における特異性 419
哈日現象の含む曖昧さの提示:異国イメージの研究における虚像と実像の区別の重要性 421
今後の課題 422
参考文献 425
1. 日本語文献 426
2. 中国語文献 432
3. 英語文献 436
あとがき 439 |