身体教育の知識社会学

現代日本における体育・食育・性教育・救急法等をめぐる学習権を中心に

[著者]ましこ・ひでのり

競技スポーツ等の身体運動は「健全なる精神」の育苗装置。知育・徳育の基盤こそ体育。――これら、うたがわれることのない図式こそ、知性の欠落にもとづく思考停止、無責任な楽観主義の産物というべきだろう。自明視されてきた「身体教育」の本質を再検証し、栄養学・性教育・救急法などをふくめた保健体育・家庭科ほか「広義の体育」が本来はらむ可能性を提起する。

定価=本体 2,800円+税
2019年8月10日/A5判並製/240頁/ISBN978-4-88303-491-8


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[目次]

はじめに
第1章  「身体教育」 の本質と 「身体教育」 論再考

第2章  「身体教育」の略称としての 「体育」 は、なぜ競技スポーツの劣化コピーとなったか?

第3章  「食育」運動の本質とゆくえ
   3.1. 日本社会の象徴とされる学校給食と食育
   3.2. 食育を主導する農水省ほか関係省庁のかかえる体質・政治性
   3.3. 食育の一環と自明視される学校給食をめぐるリスク
   3.4. 本来めざされるべきとかんがえられる食育周辺の実態
   3.5. 学校給食と食育にからまるパターナリズムとナショナリズム
   3.6. 食育周辺に動員される知の疑似科学性

第4章  「身体教育」 空間としての学校の本質再考
   4.1. ネットで炎上したテレビCMが露呈させた学校空間の本質
   4.2. モラルハラスメント空間としての学校に対する教育社会学的解析
   4.3. 学校的ハラスメント空間としての企業社会
   4.4. 収容所的規律を実践する学校空間

第5章  性教育ほか、リスク対策教育の実態
   5.1. 公教育での性教育と政治的介入
   5.2. リスク対策教育からみた性教育の機能不全
   5.3. リスク対策教育としての疫学的知見の欠落
   5.4. あるべき性教育の方向性

第6章 ヘルシズム/ヘルスプロモーションと、フードファディズム/オルトレキシア
優生思想とパターナリズムをベースとしたパノプティコン
   6.1. ヘルシズムを自明視するヘルスプロモーションにすける、パターナリズムの恣意性
   6.2. ヘルシズム・オルトレキシアとフードファディズムをこえて
   6.3. 当局の一貫性の欠落と、過敏 ― 感覚マヒという現実からの乖離

第7章  身体教育解析の射程
『体育で学校を変えたい』をヒントに
   7.1. 体育が自明視してきた身体能力概念の再検討:いわゆる「学力」との対照
   7.2. 現実としての競技スポーツ偏重主義であった体育の本質的欠落と非教育性
   7.3. 体育教育における「みるスポーツ」「ささえるスポーツ」概念の再検討
   7.4. 総合的な知としての身体教育としての「保健体育」が中核となる社会の到来

第8章  障害者の生活文化という死角からの身体教育の 再検討
身体教育の新領域 1
   8.1. 聴覚・触覚重視の視覚障害児童の学習過程と晴眼者の学習体験の再検討
   8.2. 身体運動を軸にした、ろう児童の学習過程と、聴者の学習体験
   8.3. 脳性マヒほか、身体障害がうきぼりにする「健常」性

第9章  地域の文化伝承と教科内の必修化:沖縄空手の伝播とグローバル化
身体教育の新領域 2

第10章  暴力性の規制としての身体運動再考

おわりに

参考文献
索引


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