静物画のスペクタクル

オランダ美術にみる鑑賞者・物質性・脱領域

[著者]尾崎彰宏

心をざわめかす静物画の世界
大国支配からの独立、イコノクラスム、グローバリズムにより生じた他者との出会い。そんな激しい変化の渦中にあった16・17世紀のオランダ社会が求めたのは、物語や教訓ではなく、「感性」にうったえかける静物画だった。現実を超える精緻な描写、ふとした日常を切り取った典拠なき場面、和紙に刷ることで生まれる奥深い黒。見るものの心をざわめかす静物画は新しい認識の扉を開く回路となった。

定価=本体 4,000円+税
2021年3月31日/A5判上製/356頁/ 978-4-88303-528-1


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[目次]

プロローグ ――日常性のパラドックス  9
   1  「絵画の誕生」と「静物画」  9
   2  モノの描写がジャンルを横断  13

第一章 些細なものに神を感じる ――「静物画」の誕生  23
   1  「静物画」とは何か  23
   2  《ヤドカリと魔女の習作》  29
   3  「ヴァニタス(人生のむなしさ)」に見る寓意と描写  37
   4  逆説の絵画  ―― 感性と観念、些細なものと重大なものの転倒  49

第二章 オランダ美術の土着性 ――ボッスの「笑い」と美術市場  60
   1  ボッスの想像力  60
   2  新たなボッス解釈へ向けて  63
   3  ボッス作品のコピーの氾濫  74

第三章 アレゴリーからファッションへ ――アルチンボルド《ウェルトゥムヌス》再考  88
   1  肖像画と静物画のはざま  88
   2  『イル・フィジーノ』  ―― 《ウェルトゥムヌス》に見る「視覚」の論理  93
   3  プロテウス的な変容  ―― イメージの可動性  101
   4  イメージのハイブリッド化  111
   5  ジャンルを逸脱する「境界侵犯」  122

第四章 まるで生きているようだ ――ホルツィウス《ファルネーゼのヘラクレス》  124
   1  絵画の起源とオランダの素描  124
   2  ホルツィウスの《ファルネーゼのヘラクレス》  133

第五章 美的テクノロジー ――「画家・版画家」レンブラントの芸術的な挑戦  152
   1  静物として機能するイメージ  152
   2  芸術と商品のはざま  160
   3  《モデルを描く画家》  ―― 完成あるいは未完成  165
   4  レンブラントの戦略  ―― 版画と絵画の融合  173

第六章 「黒」の美学 ――レンブラントと〈アジア〉  179
   1  東方へのまなざし  179
   2  オスマン帝国とオランダ  182
   3  ムガル朝のミニアチュール研究  189
   4  レンブラントと和紙  196
   5  「黒」の美学  206

第七章 この先へ進め(プルス・ウルトラ) ――静物画家アルベルト・エックハウトの「ユートピア」  210
   1  「静物画」としてのエックハウトの素描  210
   2  時代の風を読む  ―― エックハウトの歩み  220
   3  「地上の楽園」を求めて  223
   4  カニバリズムと野蛮  ―― ヨーロッパの対極にあるもの  231
   5  オランダ領ブラジルの植民地総督ヨーハン・マウリッツ  235
   6  独立国オランダの矜恃  ―― マウリッツの「ユートピア」  239

第八章 「オランダ」の表象としての静物画 ――カルフと中国磁器  243
   1  いびつな鏡としての東洋  243
   2  東洋の徴  246
   3  カルフのなかの東洋  251

第九章 陶磁器の白い輝き ――フェルメールからモンドリアンへ  263
   1  オランダとアジアの出会い  ―― 海洋国家としてのイメージ戦略  263
   2  白い輝き  ―― 新しい美意識の誕生  266
   3  フェルメールと中国磁器  ―― アジアを表象する白い輝き  274
   4  ヴィレム・カルフと中国磁器  ―― 白い輝きの射程  285

第一〇章 「静物画」の自意識 ――終わりの始まり  287
   1  モノへのこだわり  287
   2  ピーテル・クラースゾーンの静物画  289
   3  ホルツィウスの手  295
   4  サミュエル・ファン・ホーホストラーテンの《手紙差し》  300

エピローグ  308
   1  新しい感性の誕生と静物画  308
   2  自律する静物画への道  309

あとがき  313

註  1
人名索引  28
引用図版出典一覧  32


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