[目次]
はじめに 7
監督企画意図 9 /『崖の上のポニョ』あらすじ 10
地獄篇 ─出発点─
1 鞆の浦から考える 14
「老い」というテーマにどう向き合うのか? 14 /鞆の浦への社員旅行 15 /宮崎監督は何故崖の上の一軒家での滞在にこだわったのか? 16 /赤い三角屋根を持つリサと宗介の家 18 /漱石の小説における崖のメタファー 18 /父と母が生まれる前の人間の本性へ 20 /『崖の下の宗介』から『崖の上のポニョ』へ 23
2 イメージボードから考える 26
無意識から生まれてくるもの 26 /赤毛のポニョ 31 /『ファインディング・ニモ』の影響 32 /宮崎監督とラセター監督の出会いとしての『 NEMO /ニモ』 33 /潜水艦ノーチラス号に乗船していた唯一のアジア人 35 /映画『ピノキオ』に登場する金魚のクレオ 37 /海底のピノキオに見られる手塚 → キューブリック → スピルバーグ → 宮崎のリレー 38 /フジモトにちらつく手塚治虫の影 42 /『海底三万マイル』を作った奥山玲子と東映動画の生き残り 45 /ポニョを閉じ込める「永遠に引き裂かれた存在」としてのフジモト 46 /死んだ母との再会としての『銀河鉄道の夜』 51 /妹トシの死から生まれた『永訣の朝』と『銀河鉄道の夜』 58 /宮沢賢治の作品に現れる暗号的要素 64 /トキとは何者か? 67 /『ひまわりの家の輪舞曲』に込められた「おむかえ」と輪廻転生 70 /西の魔女から東の魔女へ 74
3 海から陸を考える 77
精子としてのポニョ 77 /わたしが魚だった頃の記憶 79 /生命の水の貯蔵庫に書かれた「 PANGEA 1907 」 80 /女性原理としての海と男性原理としての陸 83 /日本列島の最古層としての母なる海洋文明 87 /北欧神話の死神ブリュンヒルデとしてのポニョ 89 /インド版ワルキューレとしてのアプサラス 90 /オノマトペとしてのポニョ 91 /観音さまとしてのグランマンマーレ 92 /グランマンマーレの名前が意味するもの 95 /『草枕』に登場するオフィーリア 97 /カンドンブレに登場する海の女神イエマンジャ 100 /ライフラインとしての給水塔 101 /Y字アンテナの持つ意味 104 /何故、東と西が入れ替わるのか? 106 /映画『E.T.』に応答するリサと宗介の『アダムの創造』 107 /ダンテ『神曲』からの影響 110 /レオナルド・ダ・ヴィンチの『岩窟の聖母』 111 /ブリュンヒルデとポニョとしての『バベルの塔』 114 /中国の洪水伝説に登場する「魚婦」 115 /死して蘇る中国の洪水神 117 /ポニョは何故ハムが好きなのか? 117
4 ワーグナーの『ワルキューレ』から考える 121
『ニーベルングの指環』第二部『ワルキューレ』が与えた影響 121 /生と死の重なり合い 125 /多細胞生物から誕生した性と死の概念 128 /第三部『ジークフリート』と第四部『神々の黄昏』 130 /『平家物語』からの影響 132 /きのこ雲型の珊瑚塔と『トトロ』のドンドコ踊り 134 /堀田善衛からの影響:鴨長明と藤原定家 135
煉獄篇 ─折り返し点─
5 日本美術史から考える 140
伊藤若冲の『動植綵絵』 140 /最後の狩野派絵師、狩野芳崖の『悲母観音』 142 /フェノロサと岡倉天心 143 /『悲母観音』のモデルとしての九鬼波津子 145 /『モナ・リザ』としての『悲母観音』 146 /仏教の三十三観音をキリスト教の三位一体と融合する 150 /熊谷守一の「赤い輪郭線」 150 /海の魚類と陸の人類を繋げた赤瀬川原平の『模型千円札』 153 /津波のように押し寄せたアメリカ文化 155 /パール・バックの小説『つなみ』における門、そして生と死 156 /道元が考える生死と崖について 159 /脳みそに釣り糸を垂らす 161
6 漱石の暗号から考える 162
夏目漱石『夢十夜』から考える「宗介」という名前のアナグラム 162 /カタストロフと愛としての一八〇八年・一九〇八年・二〇〇八年 168 /百年と千年の暗号:『千と千尋の神隠し』 170 /夏目漱石と『トリストラム・シャンディ』からの影響 171
7 ベルイマン監督の映画『仮面/ペルソナ』から考える 174
イングマール・ベルイマン監督の映画『仮面/ペルソナ』からの影響 174 /宮崎監督とベルイマン監督 174 /宮崎監督とベルイマン監督を繋ぐゴットランド島 176 /『仮面/ペルソナ』要約 180 /『ペルソナ』の換骨奪胎としての『崖の上のポニョ』 186 /『人魚姫』の再解釈としての『ペルソナ』と『崖の上のポニョ』 188 /本来の自分の内面とは異なる外面 190 /「生まれないでくれ」から「生まれてきてよかった」へ 191 /『崖の上のポニョ』に見え隠れする近親相姦モチーフ 195 /母殺しとしてのエレクトラ・コンプレックス 196 /失われた母子関係の代用品 198 /陰陽魚としてのポニョ 200 /ユングが西洋に紹介した『太乙金華宗旨』 201 /反転する「ひまわりの家」と「ひまわり保育園」 204 /アンドレイ・タルコフスキー監督の映画『サクリファイス』からの影響 205 /「ひとり」としての父と子と、「ひとり」としての四人のマリア 209 /応答し合うタルコフスキー監督と黒澤明監督から、宮崎監督へ 212 /五行思想から読み解く、宮崎監督が「火」ではなく「水」を用いる理由 215 /火と水に見られるモーツァルト『魔笛』からの影響 217 /カメラ・オブスクラとしての身体 221 /人を愛することの難しさ:ナルキッソスとエコーとしての宗介とポニョ 223
8 司馬遼太郎の『坂の上の雲』から考える 226
『坂の上の雲』へのオマージュとしての『崖の上のポニョ』 226 /「本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」 227 /正岡子規の親友としての秋山真之と夏目漱石 229 /正岡子規の影響下にある野球選手の「耕一」 235 /一万年の農耕文明としての耕一 238
天国篇 ─終着点─
9 三島由紀夫『豊饒の海』から考える 242
『豊饒の海』第一巻『春の雪』 242 /『豊饒の海』第二巻『奔馬』 244 /『豊饒の海』第三巻『暁の寺』(二部構成) 246 /『豊饒の海』第四巻『天人五衰』 249 /『ニーベルングの指環』の換骨奪胎としての『豊饒の海』 250 /グラジオラスから連想される「エメラルドの指輪」としての「緑色のバケツ」 253 /『天人五衰』主人公の透としての宗介:無意識と意識、共時性の観点から 256 /唯識仏教が考えた私たちの意識と無意識 259 /「暴流」の如き輪廻転生としての「ポニョ来る」 261 /同時に成立する過去・現在・未来 263 /フジモトが張っていた蟹避けの結界と「人生の正午」の過ごし方 264 /三島由紀夫を「一生のライバル」と呼んだ手塚治虫の反応 269 /宮崎駿と三島由紀夫の類似性 271 /江戸川乱歩をリレーする三島由紀夫と宮崎駿 273 /乙事主のモデルとしての三島由紀夫 275 /戦後日本を生きる人間にとって「美」とは何か? 278 /三島由紀夫と宮崎監督に共通する音楽の使い方 280 /三島の『奔馬』と宮崎の『千と千尋』を繋げる三輪山と大神神社 283 /神道の一霊四魂説:幸魂・奇魂とは何か? 284 /『千と千尋』ハクのモデルとなったニギハヤヒの謎 288 /三輪山の蛇信仰から読み解く、ハクの名前ニギハヤミコハクヌシの暗号 293 /和魂から考えるハクの「おにぎり」に込められた暗号 296 /三島の「握り飯」に返答する宮崎監督の「おにぎり」 298 /山の上ホテルが意味するもの 301 /国を救うことのできなかった二人のサバイバーズ・ギルドと救世主コンプレックス 302 /三層の垂直構造から成るユーラシアのアーキタイプ 306 /資本主義崩壊の象徴としての崖 311 /椿實『人魚紀聞』からの影響 315 /『人魚紀聞』と『崖の上のポニョ』の共通点 318 /三島由紀夫と椿實 320
10 小川未明と寺山修司から考える 323
ポニョが大きくした蝋燭とは? 323 /小川未明の『赤い蝋燭と人魚』 324 /寺山修司の『人魚姫』 326 /『マルドロールの歌』に登場する人魚と、マン・レイとキキ 329 /オートマティズムと無意識 331 /日本の海の深さとしての東京タワーの「333」 331 /『私は真悟』からの影響としての333 333 /寺山修司による『人魚姫』と『ニーベルングの指環』の出会い 335 /コミュニケーションの手段を失った人がどう愛を表現するのか 337 /寺山修司の『便所のマリア』における赤い蝋燭 338 /蝋燭と船が意味するもの 340 /リサの出す蜂蜜茶とは? 342 /オデュッセウスの冥界下りとしての宗介の船出 343 /自己が他者を見た時に生まれるイメージの重なり合いによる敵対概念の解体 348 /ハム入りラーメンを食べる宗介とポニョ 351 /『人魚』と『ワルキューレ』の絵画 356
11 エドガー・アラン・ポーから考える 359
英語版タイトル“ by the Sea” に込められた暗号 359 /時を超えた向こう側の世界へ:萩尾望都『ポーの一族』からの影響 365 /夏目漱石と司馬遼太郎の英語的解釈としてのエドガー・アラン・ポー 367 /宮崎監督とポーに共通するシンクロニシティ 368
12 「生まれてきてよかった」から考える 372
食べ物を分けてあげるポニョ 372 /ピノコの「アッチョンブリケ」をしてあげるポニョ 380 /空っぽのリサカーが意味するもの 383 /トンネルに象徴される誕生と死 385 /「ポニョには膜が見える」 387 /金魚丸としての空海 388 /宗介の死と再生としての泰州くん誘拐殺人事件 392 /母と「甘え」を巡るリサとグランマンマーレの会話 394 /グランマンマーレによる「スフィンクスの問い」 397 /宗介を抱きしめて、フジモトの子を宿すトキ 398 /ペアの潜在性としての赤と青 400 /『白蛇伝』からの影響 402 /「泡」から生まれた私たち 404 /ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』からの影響 406 /始まりと終わりが繋がる円環構造 408
あとがき 413
主要参考資料一覧 421
図版出典一覧 428
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