ギュスターヴ・クールベと女性表象

どう描くか、なぜ描くか

[著者]天王寺谷千裕

本書はクールベがその芸術的・政治的信条を際立たせるサロンにおいて、如何に女性表象を扱ったか、画家がどのような役割をそれらに託したのか、という点を時系列に沿った個別の作品研究により解明する。
十九世紀フランス社会において非常に脆弱な立場にありながら、同時に社会の状態を映す指標でもあった女性という存在を的確に捉え、これを描き出すことでクールベは彼が生きた時代そのものをカンヴァスに写し取ることに成功した。 同時代性をして普遍的な人間性を語るクールベ芸術の神髄を表現するうえで、女性表象は特に有効に作用し、彼のレアリスムを達成するための重要な手段となったのだ。

定価=本体 4,091円+税
2025年2月25日A5判上製/298頁/ISBN978-4-88303-604-2


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[目次]

   口絵
   はじめに  1

第一章 一八四〇年代―探究の土壌としての女性表象  11
   第一節 《ハンモック(夢)》にみるレアリスムの萌芽  18
      ユゴー「水浴びするサラ」との比較  18
      独自性の探求  21
      夢想する現代女性としてのサラ  24
   第二節 同時代芸術に対する眼差しとその吸収  29
      古典的な眠る女性像との差異  29
      シャセリオーとの親近性  32
      ゴーティエへのアプローチ  36
   第三節 フーリエ主義への共鳴と反駁  39
      ラヴェルダンによる美術批評の検討  39
      フーリエ主義の「夢」  43
      芸術理念確立へ向けて  47

第二章 一八五〇年代―女性表象を用いたレアリスムの実践  51
   第一節 《眠る糸紡ぎ女》から考察する一八五三年のサロン  56
      共和政から帝政へ  56
      隠されたエロティシズム  58
      農婦とブルジョワの狭間で  62
      都市と農村の対立意識  65
      社会をあらわす三幅対として  68
      女性表象を用いる意義  72
   第二節 《セーヌ河畔のお嬢さんたち(夏)》における二重のレアリスム  76
      誰も描かなかった女性像  76
      クールベとヨルダーンス  80
      《浴女たち》と《法話からの帰り道》にみる古画学習  83
      十七世紀フランドル派の位相  86
      ファッションから読み解く娼婦の肖像  89
      ロレットとは誰か  93

第三章 一八六〇年代―学識ある画家への挑戦と裸婦像  99
   第一節 「プシュケの物語」の発展とその含意  105
      《アモルとプシュケ》のアカデミスム批判  105
      予期せぬ落選  110
   第二節 《ウェヌスとプシュケ》の寓意画的読解  114
      ヴァリエーションの問題  114
      女神か娼婦か  117
      クールベの新たな試み  120
      寓意画制作への意欲  124
      奇妙な人物置換の真意  128
      フランス芸術界の旗手として  132
   第三節 新たな裸婦像としての《女とオウム》  136
      批判から称賛へ  136
      《ウェヌスとプシュケ》との差異  140
      クールベのレアリスム  146
      おわりに  151

図版一覧  160
あとがき  223

註  i
【資料 1 】  xxiv
【資料 2 】  xxviii
【資料 3 】  xxix
【参考文献一覧】  xxx
【図版出典一覧】  xlii
Gustave Courbet: Representing Women li