民衆画と詞書

[編著]原聖

人々の心をとらえた「絵」と「ことば」
娯楽や信仰の対象として人々に親しまれた「民衆画」。そこには、しばしば「ことば」が添えられ、絵を説明し、ときに絵と共鳴し合うことで、その趣意を民衆の心に、より深く刻んだ。――『源氏物語』起筆の地とされる石山寺の土産の刷り物、中国の親孝行を説く書籍や年画に描かれた「二十四孝図」、近代欧州に広がっていた「呼び売り」の風習など、時代や場所を超えて、その奥深さを紹介する。

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定価=本体 4,400円+税
2025年3月31日A5判並製/276頁/ISBN978-4-88303-609-7


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[目次]

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まえがき/原聖 7

第1章 石山寺「源氏の間」の紫式部霊宝図と詞書の表象
――「紫式部影」と「紫式部所持源氏物語書写硯」/久野俊彦 14
はじめに 14
1 『石山寺源氏闔式部影讃』 16
2 『源氏物語』の石山寺起筆伝説 20
3 「源氏の間」と「源氏供養」 24
4 「源氏の間」の霊宝展観 26
5 詞書に見る「源氏の間」の霊宝の表象 34
おわりに 39

第2章 初山団扇絵を描いた日本画家 唄野蛾生
――群馬県館林市富士原町の富士嶽神社における初山参りを中心に/鈴木英恵 42
はじめに 42
1 群馬県地域における富士山信仰 43
2 群馬県館林地域における初山参りと初山団扇の民俗 51
3 初山団扇絵を描いた画家との出会い 61
4 日本画家 唄野蛾生について 65
おわりに 74

第3章 民衆絵巻の図像・詞書・画中詞と絵解き
――「矢田地蔵縁起絵」「矢田地蔵毎月日記絵」を中心に/渡浩一 80
はじめに 80
1 矢田地蔵と矢田地蔵縁起説話 81
2 矢田地蔵縁起絵とその周辺 84
3 矢田地蔵縁起絵の詞書と図像・画中詞 90
4 矢田寺縁起における満米上人巡獄譚と武者所康成蘇生譚の変容・長大化 97
5 矢田地蔵毎月日記絵の絵解き唱導 101
6 異本矢田地蔵縁起と満米・篁造像伝承 105
おわりに 106

第4章 年画「二十四孝図」の詞書の源を考える/三山陵 114
はじめに 114
1 「二十四孝」について 115
2 元代の「二十四孝」 124
3 明代の「二十四孝」 134
4 清代の年画「二十四孝図」 137
おわりに 152

第5章 ベトナム(越南)中部南端―チャムの厄除け降霊儀礼の舞台幕「パニン布絵」について/新江利彦 158
はじめに 158
1 先行研究:パニンの構図 160
2 追儺儀礼との関係 169
3 六丁六甲神将 176
4 王権との関係 181
5 アラブ・イスラーム天文学から見た四神将の星々 187
おわりに 196

第6章 ド・ロ版画におけるキリシタン用語/郭南燕 214
はじめに 214
1 ド・ロ版画の詞書 218
2 ド・ロ版画の図解した教理 224
3 イエス・キリストの言葉の登場 228
4 ド・ロ版画とキリシタンの祈り 230
おわりに 234

第7章 西欧諸国における民衆画と語り、唄/原聖 240
はじめに 240
1 西欧における唄の伝統と民衆版画 242
2 民衆画と詞書、唄―西欧の個別事例 250
おわりに 261

あとがき/原聖 269