ポスト印象派とユートピア

[編者]永井隆則

ポスト印象派の巨匠たちは、なぜ独自の表現を追求したのか? 彼らが共有した「ユートピア芸術論」という新たな視点からその深層に迫る。印象派を経験しつつも、近代化社会の矛盾に批判的な眼差しを向け、理想郷を夢見た画家たちの創造的思考を紐解き、美術史におけるその位置付けを再定義する。

【電子書籍版もあります】

定価=本体 6,800円+税
2025年7月31日/A5判上製/468頁/ISBN978-4-88303-616-5


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[目次]

序論
ユートピア芸術論の可能性 11
永井 隆則

第T部 ポスト印象派以前のユートピア

古代末期のユーラシア美術におけるユートピア――天国、地獄、そしてもう一つの世界 37
ヤシュ・エルスナー 加藤 磨珠枝 訳

十七世紀イタリアにおける「地上の楽園」の表象 60
倉持 充希

十八世紀フランス絵画におけるユートピア――理想の現実化としての庭園 86
吉田 朋子

変容する記憶と別様の世界――《スキュタイ人のもとに追放されたオウィディウス》から考えるドラクロワのユートピア 111
西嶋 亜美

第U部 ポスト印象派のユートピア

1 記憶と郷愁 140
「ユートピア」か「ユークロニア」か? 南洋のポール・ゴーギャン 141
ダリオ・ガンボーニ 藤原 貞朗 訳

セザンヌの郷愁――ユートピア、記憶、幻想 160
ニナ・マリア・アタナソグルー・カルマイヤー 永井隆則 訳

ポール・ゴーギャンとブルターニュ――南洋にもたらされた雪景色の追憶 181
小泉 順也

2 アナーキズム 202
ファン・ゴッホのパリンプセスト・ユートピア――日本、南仏、アナーキズム 203
圀府寺 司

カミーユ・ピサロにおけるユートピア思想と絵画制作 231
深尾 茅奈美

ポール・シニャック――《調和の時代》におけるアナーキズムのユートピア 256
マリナ・フェレッティ 深尾 茅奈美 訳

3 自律性と現象学 274
ユートピスト、セザンヌ 275
永井 隆則

ユートピア/セザンヌ 304
ドニ・クターニュ 工藤 弘二 訳

キュビスムにおける「現象学的ユートピア」と劇場空間 329
松井 裕美

4 エコー、デザイン、装飾、ジェンダー 354
エコーとしてのユートピア、デザインされたユートピア――ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの牧歌的なイメージ 355
エメ・ブラウン・プライス 蔦谷 典子 訳

ユートピアと「女性の芸術」――マリー・ローランサンを中心に 376
天野 知香

マティス作品に向けられたユートピア的まなざし――マシュー・ステュアート・プリチャードの思索 408
レミ・ラブリュス 小寺 里枝 訳

あとがき 431

人名索引 1
Summaries 11
ユートピア文献表 27