母権論 
序論・リュキア・クレタ

[著者]J・J・バッハオーフェン
[訳者]佐藤信行+佐々木充+三浦淳桑原聡

西本書はさまざまな二項対立――母と父、大地と天空、闇と光、死と生、ネイチャーとカルチャー――を含みながらも、それを超越した人間存在の原初である〈母なる〉世界を情熱的に描き出す。

定価=本体 3,107円+税
1992年7月10日/四六判並製/288頁/ISBN978-4-88303-009-5

 

[目次
凡例

序論:
母権という概念/母権研究における神話の重要性/女性支配を支える思考法/母権研究に要求される思考能力/ 女性支配と物質的自然主義/文化の発展段階から見た母権――ヘテリズムとデメーテル主義/ディオニュソスの意義/アマゾンの意義/母権から父権への進展/歴史の発展とコスモスとの対応/ローマの国家理念と父権/本論の記述法

リュキア:
リュキアの母権性に関するヘロドトス他の証言/対アマゾン戦争の英雄、母権性の創始者ベレロポン/ベレロポン神話の核心としての死の思想/木の葉の比喩。リュキア母権性の基礎としての物質的自然主義/リュキア母権制の属する宗教段階とその特徴/女に対するベレポロンの立場。デメーテル原理と母権制/完全に自然主義的で自由な性関係と母権制の対立/リュキアの原理に対立する女の共有、乱交に関する歴史的証言/女性支配の成立、人類発展史に占めるその位置/自然主義的な性関係の母権制から父権性に至る中間段階/大地と太陽に対する月の位置に見られる月と母権制の並行関係/女性支配と月崇拝、父権性と太陽原理/女性支配と民族の誉れ高い戦闘精神、秩序、正義愛。女性支配の行き過ぎとしてのアマゾン/リュキア人の弔いの儀式と母権制の根本思想 

クレタ:
「父国」にかわる「愛する母国」の呼称/万民兄弟の考えとローマのparisidium(親族殺し)概念/町リュウクトスの系図に見られる母系の優位/母系に基づく血族関係のさたび若干の例。とくに女性支配の制度における姉妹の意義。エンギュイオンのmeteres(母たち)/ディオドロス(四・八〇)の説く国家繁栄におよぼす女性支配の影響。デメーテルとイアシオス。女の不死性と母権制/神話における物質的女性的な自然原理の優位と男性原理の従属/クレタのゼウスと母レア/大地と月に見立てられた自然の母たち。母たちの優勢と女性支配。和平と盟約の女王アリアドネ/月の原理から太陽原理への進歩/母権制の父権性への段階的屈服/クレタの宗教における父性への三つの段階――ポセイドン―大地、月、太陽/クレタとアッティカとテーセウス

訳者解説
  1 バッハオーフェンの生涯
  2 バッハオーフェンのおよばした影響
  3 バッハオーフェン思想の形成
  4 バッハオーフェンの思想と基本概念
底本と参考文献

引用著述家・著作名一覧
アルファベット索引  


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