ラオコーン
名声と様式

[著者]サルヴァトーレ・セッティス
[訳者]芳賀京子日向太郎

発見から500年、この著名な古代彫刻をめぐり続けられてきた論争が、ここに決着する
「1506年の発見以来、死に瀕する人の苦痛をみごとに表現した古代の激情〈パトス〉の定型として熱烈な学問的な関心を集めてきた、ヴァチカンの有名な大理石彫刻《ラオコーン》。これに言及した唯一の古代文献、大プリニウス『博物誌』の記述との齟齬から、この彫刻をプリニウスの記述する彫刻とは別ものとする見解や、彫刻に特異な政治的なメッセージの衣を纏わせて、ロマンやスリルを好む読者の感興ばかりをそそる、今はやりの解釈などが出されてきた。
  著者セッティスは通念や恣意的解釈に真っ向から挑む。『博物誌』の記述に彼が加えた目から鱗の落ちる思いのする新解釈。『博物誌』の記す彫刻の作者たち―三人のロドス人彫刻家―の活動時期を碑文資料に基づく係累学的研究から絞込み、さらに様式的な検討を加えてこの彫刻をオリジナルと断言し、最終的に制作年代(紀元前40-20年頃)を割り出す手際のなんとあざやかなこと! この稀にみる好著は、比類なき知性の持ち主による積年の研究成果として、読者の知性を大いに満足させることであろう。」
――小佐野重利(東京大学美術史学教授)

[書評]
《読売新聞》「読書委員が選ぶ2006年ベスト3」、選者:青柳正規

定価=本体 5,000円+税
2006年8月25日/A5判上製/388頁+カラー口絵16頁/ISBN978-4-88303-155-9


イメージを拡大

【目次】

まえがき XV

ラオコーン―名声と様式  芳賀京子/訳 1

第I章 ラオコーンの変容 3
第II章 ブロンズ製のラオコーン 18
第III章 そのほかのラオコーン 31
第IV章 係累学的研究 41
第V章 プリニウス『博物誌』第三六巻―大理石の称賛 55
第VI章 大理石製のラオコーン 66
第VII章 主題と図式 85
資料 112

[補論]
一五〇〇年代の文献におけるラオコーンの反響  ソーニャ・マッフェーイ  日向太郎/訳 125

はじめに 127
第I章 神話と像 129
第II章 発見に関する文書と書簡 139
第III章 詩―ローマとその他 155
第IV章 ガイド・描写・論文 181
第V章 別のラオコーン像? 237
第VI章 一五〇〇年代の複製 245

ラオコーンの修復  ルドヴィーコ・レバウド  芳賀京子/訳 267


HOME