[著者]チェーザレ・ブランディ
[監訳者]小佐野重利
[訳者]池上英洋+大竹秀実
修復の倫理哲学
修復家とは、「臨床医のように目はしが利き 外科医のように慎重で腕のたつ」(C.ブランディ)者である。
ブランディにとって、より本来的な意味での修復の目的は作品を原初の様相に戻すことではなく、原初の様相のうちで残っているものやそれが時の経過する中で蒙った変更に最大限の読み取りやすさと享受しやすさを取り戻させることであるから、[……]修復家は、職人でも芸術家でもなく常に歴史分野の専門の助けを仰ぎ指導を受けながら、このように複雑な職務をもっとも適切な形で完遂できるように「手わざの知恵」をそなえた教養ある「技術者」でなくてはならない[……]。 (G.バジーレ、序文より)
本書は修復の科学技術や技法を説くものではない。芸術作品や文化財の保存・修復が実行される以前、あらかじめ省察を必要とする理念を問題とする。
わが国でも高松塚古墳、キトラ古墳の保護・継承をめぐり議論が高まる中、参照すべき必携の書である。
[書評]
《朝日新聞》書評欄、2005年8月21日→記事を読む
《毎日新聞》書評欄、2005年9月12日、評者:富山太佳夫氏
《読売新聞》書評欄、2005年10月23日、評者:三浦篤氏
『美術の窓』2005年10月号(生活の友社)
定価=本体 3,000円+税
2005年6月30日/A5判並製/288頁/ISBN978-4-88303-159-7 |