植民地朝鮮と宗教
帝国史・国家神道・固有信仰

[編著者]磯前順一尹海東

天皇制国家のもと、植民地と宗主国を往還する宗教諸政策。西洋的な宗教概念が日本経由で移入され、人々の日常生活が分節化されていく。キリスト教と仏教、国家神道とシャーマニズム。ポストコロニアル研究を東アジアの近代経験から捉え直した、日韓の研究者による共同研究の成果。

[書評・紹介]
『寺門興隆』2013年3月号
《週刊読書人》2013年4月12日号、評者:洪宗郁氏
《図書新聞》2013年4月27日、評者:三原芳秋氏

定価=本体 3,800円+税
2013年1月20日
A5判上製/370頁/ISBN978-4-88303-329-4


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[目次]

 序論 「帝国史」として「宗教」を論ずる 磯前 順一+「 貴得
  1 トランスナショナル・ヒストリーとしての帝国史
  2 帝国史としての宗教論
  3 本書の構成
     註

第一部 宗教概念と帝国史
 一九一〇年前後における「宗教」概念の行方 帝国史の観点から 金 泰勲
  1 「日本帝国=日本」「帝国日本」「帝国史的観点」について
  2 宗教概念の帝国史的展開
  3 植民地当局の宗教政策と宗教的領域の再編成
     3・1 「宗教の宣布に関する規則」の適用範囲
     3・2 神道と神社の概念
     3・3 朝鮮における宗教的領域の再編成
  4 「帝国宗教」という概念―結びにかえて
     註

 日本帝国時代における宗教概念の編成――宗教概念の制度化と内面化 張 錫萬(訳・「 貴得)
  1 「東」の意味変化
  2 宗教の誕生―一つの例
  3 日本帝国統治期における宗教概念(T)――一九一九年三・一運動以前まで
     3・1 仏教と儒教の統制、「寺刹令」と「経学院規程」
     3・2 キリスト教の統制、「私立学校規則」
     3・3 公認宗教の政策――一九一五年の「布教規則」
     3・4 類似宗教の統制――「保安法」と「集会取締ニ関スル件」
  4 日本帝国統治期の宗教概念(U)――一九一九年三・一独立運動以降
  5 結論
     注

第二部 日常生活における宗教布教
 一九一〇年代、崔重珍の自由教会とその周辺――「蓄妾」と「祭祀」問題をめぐって 「 貴得
  はじめに
  1 崔重珍の生涯
  2 崔重珍と自由教会
  3 蓄妾の問題
  4 祭祀の問題
  おわりに
     注

 植民地朝鮮における日本仏教の社会事業――「植民地公共性」を手がかりとして 諸 点淑
  1 はじめに
  2 向上会館の設立背景
  3 向上会館の事業概要――「産業部」を中心に
  4 向上会館における朝鮮人生徒の動向――「産業部」朝鮮人生徒の同盟事件を中心に
  5 結びにかえて――日本仏教と「植民地公共性」
     注

第三部 国家神道と類似宗教論
 宗教概念と国家神道論――〈帝国=植民地〉を射程に入れて 桂島 宣弘
  1 村上国家神道論の継承のために
  2 抑圧・統制の機制としての国家神道
  3 植民地朝鮮における「類似宗教」概念
  4 「類似宗教」普天教
  5 結びにかえて――国家神道論と〈帝国=植民地〉
     注

 朝鮮総督府の神社政策と「類似宗教」――国家神道の論理を中心に 青野 正明
  1 はじめに
  2 朝鮮神宮創建における国家神道の論理――「天照大神」と「明治天皇」の合祀
     2・1 朝鮮神宮の祭神
     2・2 朝鮮神宮の特異性
     2・3 京城神社での「国魂神」奉斎
  3 心田開発運動における国家神道の論理――「天照大神」と「国魂大神」の合祀
     3・1 心田開発運動の二重性
     3・2 「敬神崇祖」の二重性と国家神道の論理
  4 崔南善と神社政策との関係―「固有信仰」復活の主張
     4・1 心田開発運動の開始と崔南善の講演(一九三五年一月)
     4・2 「固有信仰」が調査対象に(一九三五年〜一九三七年)
     4・3 崔南善による「固有信仰」復興の主張(一九三五年)
  5 国家神道における排除の論理――「類似宗教」概念の推移
     5・1 心田開発運動と「類似宗教」弾圧
     5・2 結社としての取締り
     5・3 「類似宗教」概念と用語
     5・4 「類似宗教」概念の推移
  6 おわりに
     注

第四部 国家神道と固有宗教論
 植民地朝鮮における宗教概念をめぐる言説編成――国家神道と固有信仰のあいだ 磯前 順一
  1 宗教概念の移植状況
  2 帝国イデオロギーとしての国家神道論
  3 宗教民族学、そして「近代の超克」論の登場
  4 帝国の終焉
     注

 「方法」としての崔南善――普遍性を定礎する植民地 沈 煕燦
  1 「方法」の意図
     1・1 帝国と植民地の非対称性、そして崔南善
     1・2 「神道」への異なる問い
  2 「時間上の光復」と「壇君」
     2・1 「宇宙の大生命」
     2・2 「不咸文化論」
  3 「出来事」としての「壇君」
  4 「被植民者」が切り直したトランプ
     注

第五部 朝鮮民俗学と固有信仰
 日本人の「朝鮮民俗学」と植民主義――民間信仰論を中心として 南 根祐(訳・沈 煕燦)
  1 巫俗伝統論の政治性
  2 今村鞆の「処女航海」
  3 村山智順の「官房民俗学」と植民主義
  4 秋葉隆の巫俗伝統論と植民主義
  5 『朝鮮民俗誌』の比較民俗論
     注

 日本帝国時代における巫俗言説の形成と近代的再現 金 成禮(訳・金 泰勲)
  1 はじめに――「巫俗」は韓国固有の宗教なのか
  2 巫俗の民族宗教論――「神教」言説と檀君民族主義
  3 巫俗文化論――汎アジア東洋文化圏と同化主義
  4 巫俗の「土俗」文化論と植民主義の『朝鮮巫俗論』
     4・1 孫晉泰の土俗文化論
     4・2 秋葉の植民主義朝鮮巫俗論
  5 帝国主義秩序と巫俗言説の競合――植民的言説の両義性
  6 おわりに――巫俗行為者の不穏な主体性
     注

 終章 「植民地近代」と宗教――宗教概念と公共性 尹 海東(訳・沈 煕燦)
  1 「宗教」概念の受容と政教分離
  2 類似宗教と世俗宗教(=市民宗教)
  3 宗教と民衆、そして日常
     注

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